2012 Fiscal Year Research-status Report
ピロール・イミダゾールポリアミドを用いた前立腺癌関連融合遺伝子発現抑制の検討
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24791675
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
大日方 大亮 日本大学, 医学部, 助教 (20624886)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 遺伝子 / 癌 / 発現制御 / 前立腺癌 |
Research Abstract |
研究発表の項に示すように、平成24年度はARによって引き起こされるTMPRSS2およびERGのイントロン内の切断部位に結合するピロール・イミダゾールポリアミドを設計した。 標的配列特異的プローブを用いた、ゲルシフトアッセイを行い、設計したピロール・イミダゾールポリアミドがDNA配列特異的結合能を有している事を確認した。アンドロゲン刺激下でのみ融合遺伝子を発現する前立腺癌細胞株LNCaPを用い、アンドロゲン刺激下でピロール・イミダゾールポリアミドを加えて検討を行った。コントロールとして同配列に結合しないピロール・イミダゾールポリアミドを用いた。融合遺伝子の発現をRT-qPCRで、ERGの発現をRT-qPCRおよび、ウエスタンブロットで評価した。ピロール・イミダゾールポリアミドは蒸留水に溶解されており、LNCaPへの投与は設定した濃度になるよう、細胞の培養液に直接添加することにより行った。 その結果、デヒドロテストステロンを用いたアンドロゲン刺激でコントロール群では融合遺伝子およびERGの有意な発現増加が認められたが、設計したピロール・イミダゾールポリアミド処理群では有意にその発現が抑制されていた。融合遺伝子の生成頻度を細胞レベルで検討したところ、アンドロゲン刺激にて染色体手座陽性細胞数が増加を認めたが、設計したピロール・イミダゾールポリアミド処理群でコントロールと比べ有意に染色体転座が抑制されていた。細胞増殖能、および遊走能への影響をMTS assay、Cell migration assayにて検討したところ、設計したピロール・イミダゾールポリアミド処理群においては増殖能と遊走能がコントロール群に比べ、有意に抑制されていた。以上より今回設計したPIポリアミドは、前立腺がん細胞に有意な効果が期待できるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではETS familyと融合する遺伝子を特異的に抑制する薬剤を開発することを目的とし、染色体切断を抑制するPIポリアミドを設計し、同遺伝子の発現が抑制されることを目標としていた。 これに対し、平成24年度はTMPRSS2およびERGのイントロン領域が共通の配列で切断されることに着目し、共通配列に結合するピロール・イミダゾールポリアミドを設計した。いくつかの構造式が候補として挙げられたが、そのうちの一つを用いて結合能の解析を行った。その結果、融合遺伝子およびその標的遺伝子であるERGの発現をRNAおよびタンパクレベルで有意に抑制し、さらに前立腺癌細胞の増殖および遊走能を抑制させていることを見出した。上記in vitroの検討で有意な結果が出たことより、次年度は創薬に向けて、ヌードマウスを用いたin vivoの解析に進む事ができる。また、さらに上記成果を応用し、次年度は別の融合遺伝子を形成するアンドロゲン応答遺伝子の発現抑制させるピロール・イミダゾールポリアミドを開発し、検討を予定していることから、平成24年度の研究成果は順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究成果を発展させ、開発したピロール・イミダゾールポリアミドの前立腺癌創薬への応用を考慮し、今後の研究の推進方策として、ヌードマウスを用いたin vivoにおける細胞増殖能の検討を行う。LNCaP細胞をヌードマウスに接種し、一定サイズまで腫瘍が増大した後、ピロール・イミダゾールポリアミドを投与し、腫瘍サイズの変化を検討する。コントロールとしては研究実績の概要に挙げた、今回ターゲットとしている配列に結合しないピロール・イミダゾールポリアミドを用いる。実臨床を考慮し、腫瘍に直接接種では無く、将来の化学療法を想定して、経静脈的に投与を行う予定である。週1回投与で、4週間経過後腫瘍を摘出し、タンパク質を抽出。コントロール群とのERG発現の差を検討する。 さらに、別の前立腺癌特異的融合遺伝子を形成するアンドロゲン応答遺伝子に着目し、同遺伝子の転写開始点上流に存在するアンドロゲン応答遺伝子結合領域内に存在する転写調節因子結合配列を標的とした特異的PIポリアミドを設計し、エンハンサーとしての機能を抑制することにより、その発現を抑制させ、前立腺がん細胞に与える影響を検討する。アンドロゲン応答性に与える影響はルシフェラーゼアッセイを用いて行うことを予定し、その他、細胞の機能解析は平成24年度と同様に、遊走能、増殖能解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
融合遺伝子発現抑制させるPIポリアミドをLNCaPを接種したヌードマウスに経静脈的に投与させることにより、腫瘍形態の変化を解析する。次に、別の融合遺伝子を形成するアンドロゲン応答遺伝子を抑制するポリアミドを設計、生成し、LNCaPの同遺伝子におけるアンドロゲン応答性および、増殖能、遊走能へ与える影響を検討する。上記実行を遂行するための消耗品や、ヌードマウス購入費として主に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] Pyrrole-Imidazole (PI) polyamide targeting of TMPRSS2-ERG gene fusion effects prostate cancer cell migration and progression.
Author(s)
Obinata D, Fujiwara K, Ito A, Murata Y, Takayama K, Urano T, Murata T, Fujimura T, Fukuda N, Soma M, Inoue S, Takahashi S.
Organizer
15th International congress on Hormonal Steroids and Hormones & Cancer.
Place of Presentation
金沢
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