2012 Fiscal Year Research-status Report
分子レベルでの癒着胎盤の病態解明と新規バイオマーカー診断法の開発
Project/Area Number |
24791699
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
炭竃 誠二 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (50378121)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 癒着胎盤 |
Research Abstract |
24年度は癒着胎盤絨毛のDNAマイクロアレイから絨毛浸潤に関与する遺伝子群をスクリーニングし,発現解析を行った.まず癒着胎盤症例における癒着部絨毛と非癒着部絨毛よりtotal RNAを抽出しcDNAにおいてマイクロアレイを行ったところ全54357遺伝子中3倍以上の発現亢進がみられた遺伝子は104あった。この中からgene ontologyにて浸潤に関与する遺伝子を以下のごとく抽出した: ADAM8;4.83倍、カテプシンL;3.73倍、カテプシンS;3.46倍、MMP19;3.41倍、ADAM28;3.1倍。同一症例を含む癒着胎盤3症例より抽出したtotal RNAよりrealtime RT-PCRを行ったところ、いずれの遺伝子においても癒着部絨毛においては2.4ー3.1倍の発現亢進を確認した。次に癒着胎盤12症例の病理組織にて免疫染色を行った。ADAM8、ADAM28においては絨毛で染色されることが確認されたが癒着部と非癒着部での差に乏しく、またMMP19では絨毛において染色されなかった。カテプシンL、カテプシンSはvilliとEVTが染色され,villi、EVT共に非癒着部に比べ癒着部で濃く染色された.本年はカテプシンLに関して詳細な検討を行うこととした。免疫染色における染色強度をスコアリングしたところEVTにおいて有意差(P=0.01)が得られた。In vitroとしてHTR-8細胞・BeWo細胞・JEG3細胞・Jar細胞においてウエスタンブロットにてカテプシンLの発現を確認。HTR-8細胞にsiRNAを導入しカテプシン発現を抑制しようと試みたが期待どおりsiRNAが導入できなかった。ELISAにより妊婦血清レベルを測定したところ、正常妊娠、前置胎盤(非癒着症例)に比較し癒着胎盤症例では血清レベルの上昇を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度はマイクロアレイより抽出した発現亢進遺伝子ADAM8、カテプシンL、カテプシンS、MMP19、ADAM28から、免疫染色にて候補遺伝子を絞り込みカテプシンLにfocusし研究を行うことができた。臨床検体を使用したrealtime RT-PCR、免疫染色によるスコアリングでは同一症例の内部コントロールを使用して非癒着部絨毛に比較して癒着部絨毛でカテプシンLの発現が亢進していることを示した。また妊婦血清を用いたELIZA法にて、非癒着前置胎盤患者に比較して癒着胎盤患者の血清ではカテプシンLレベルが有意に高値であることを示した。当初の計画では細胞株を用いて発現亢進遺伝子の機能解析を行う予定としており、 HTR-8細胞においてWestern blotでのタンパクレベルでの発現の程度を確認後、カテプシンLのsiRNAを導入して発現抑制した状態で細胞増殖能の変化と浸潤能の変化を検討する予定であった。しかしsiRNA導入がうまくいかなかった。反面、妊婦血清でのカテプシンレベルの検討は、前置胎盤症例において癒着例と非癒着例を術前に診断するという血清マーカーとして有効性を示したものであり、当初の研究目的に沿った結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
絨毛浸潤に関するカテプシンLの分子生物学的機能を検討するためin vitroの検討は欠かせない。24年度のsiRNA導入はリポフェクトアミン法により行っていたがうまくいかなかったため、エレクトロポレーション法による導入を行う。これにより発現抑制させた細胞株(HTR-8を使用予定)にて①Realtime RT-PCR/Western blot:siRNA導入によるRNA/タンパク発現の変化をmock株と比較。②増殖能の検討:HTR-8/SVneo細胞・初期培養絨毛細胞を96穴プレートに培養、siRNA導入株とmock株について細胞増殖能の変化をMTS assayにて比較する。③遊走能/浸潤能の検討:Migration/Invasion chamberを用い、上層にsiRNA導入株とmock株をそれぞれ播種し、遊走能/浸潤能の変化につき検討する。siRNA導入株において遊走能/浸潤能が低下することが期待される。 妊婦血清中カテプシンL濃度に関して;24年度に行ったのは正常妊婦8例、前置非癒着胎盤7例、前置癒着胎盤12例であった。より診断精度を向上するため、正常妊娠例では妊娠初期・中期・後期それぞれで測定し週数によるカテプシンL濃度変化につき正常曲線を作成、前置非癒着・癒着胎盤症例においても症例追加する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
カテプシンLのsiRNA導入に関して:ベクター作成、抗カテプシンL抗体、MTS assay用試薬、Migration/Invasion chamberなどの購入と細胞培養液、ウシ血清、培養ディッシュの購入に使用する。 妊婦血清カテプシンL濃度測定に関して:ELIZAキット購入に使用予定。
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Research Products
(1 results)