2012 Fiscal Year Research-status Report
卵巣癌腹膜播種を制御する腹水中骨髄由来細胞の同定とその役割の検討
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24791702
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
磯部 晶 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60397619)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 卵巣癌腹膜播種 / 骨髄由来細胞 |
Research Abstract |
先行研究において、我々は卵巣癌患者の腹水中に含まれるCD11b陽性骨髄由来細胞がIL-6を分泌することにより、卵巣癌の浸潤、増殖を促進していることを証明した。本研究では主に①卵巣癌腹水中の多種類存在する骨髄由来細胞から腹膜播種を制御する細胞の同定、②①で同定した細胞が癌微小環境に果たす役割の解明、を目的としている。 まず、卵巣癌腹水中CD11b陽性細胞を分離したのち、マクロファージのマーカーとして知られるCD14でさらにPositive selectionを行い、卵巣癌細胞の浸潤能、増殖能に及ぼす影響を検討した。卵巣癌細胞との共培養では、CD11b陰性細胞に比してCD11陽性CD14陰性細胞は卵巣癌細胞の浸潤能を約2倍亢進、CD11b陽性CD14陽性細胞では約4倍亢進した。同様の共培養にて、増殖能はそれぞれ1.3倍と1.5倍、また、それぞれの細胞が分泌するIL-6は、それぞれ15倍、50倍と、CD11b陽性CD14陽性細胞で有意に亢進していた。CD11b陽性骨髄由来細胞の中でも、特にCD14陽性細胞が、卵巣癌細胞の進展を促進することが示唆された。また、先行研究において我々は、抗IL-6受容体抗体 (tocilizumab) がCD11b陽性細胞による卵巣癌浸潤能を約30%抑制することを示したが、今回の研究において、CD11b陽性CD14陽性による卵巣癌細胞の浸潤能亢進は、tocilizumabにより80%以上と劇的に抑制された。 フローサイトメーターを用いて解析を行うに、CD11b陽性CD14陽性細胞は、他のマクロファージのマーカーとして広く知られるCD68を高頻度に発現しており、逆にCD11b陽性CD14陰性細胞ではCD68の発現頻度が低かった。このことから、CD11b陽性骨髄由来細胞の中でも、特にマクロファージが卵巣癌の浸潤、増殖に深く関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前項に記した研究目的①②のうち、H24年度は、① (卵巣癌腹水中の多種類存在する骨髄由来細胞から腹膜播種を制御する細胞の同定) について骨髄由来細胞の詳細な解析を計画していた。現時点では、骨髄由来細胞のうちマクロファージに対する解析のみ行っているが、卵巣癌腹水中には、他にもMDSC (Myeloid Derived Suppressor cells) や TEM (TIE2 Expressing Monocyte) 、Neutrophil、NK細胞といったCD11b陽性骨髄由来細胞が存在することが報告されており、今後これら個々の細胞についての検討を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは前項で述べたとおり、卵巣癌腹水中の骨髄由来細胞について、マクロファージ以外の個々の細胞の解析を速やかに行う。CD11b陽性骨髄由来細胞をさらに他のマーカーを用いて分離、検討する手技自体は、前々項で記した一連のマクロファージに対する系で確立しており、同様の手技を用いて、マクロファージ以外の細胞に対する検討も比較的短期間で行える。 また、前々項に記した研究目的② (骨髄由来細胞が癌微小環境に果たす役割の解明) について、まずは、既に卵巣癌細胞に対する浸潤、増殖促進作用を確認しているCD11b陽性CD14陽性細胞 (マクロファージ) を優先的に用い、癌微小環境の構成細胞である血管内皮細胞や腹膜中皮細胞、線維芽細胞に対する影響を十分検討したうえで、他の細胞についても順次同様の検討を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
骨髄由来細胞の性質の解析に必要とするFACS機 ( 本学共同研に設置 ) の使用料、癌微小環境構成細胞の遺伝子変動の網羅的解析に必要とする cDNA マイクロアレイ ( 東レに委託予定 ) の費用、その他は薬品など消耗品の購入費用として使用する。
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Research Products
(2 results)