2012 Fiscal Year Research-status Report
ガレクチン制御性オートファジーを介した胎盤形成機構の解明
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24791726
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
有川 智博 金沢医科大学, 一般教育機構, 講師 (70452670)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ガレクチン / オートファジー / 免疫寛容 / 胎盤形態形成 |
Research Abstract |
胎盤は有袋哺乳動物の妊娠時に一過的に形成され、栄養供給やガス交換、免疫学的支援などを司る胚発生にとって重要な器官である。胎生動物では受精卵の子宮への着床後、絨毛外栄養膜細胞の母体側への浸潤が見られ、その後形成される胎盤は母子間血管形成等を介して上記のように胎児の発生に重要な役割を示す。最近の報告により、胎盤内の低酸素状態においても栄養膜細胞でのオートファジーが観察されること、さらにオートファジーはプロテアーゼ(MMPs)の発現を制御することが明らかとなったことから、胎盤栄養膜細胞の母体への浸潤過程で作用する可能性が示唆されている。 ガレクチンはベータガラクトシドを認識する動物レクチンであり、哺乳動物では15ほどのメンバーが知られている。Microarray法を用いて胎盤でのガレクチンファミリーの発現を解析した結果、腸管特異的に発現するとされていたGal-4が胎盤組織の栄養膜細胞でも発現することを世界に先駆けて明らかにし、ラット由来胎盤栄養膜幹細胞の分化過程において、Gal-4発現の低下やGal-9発現の上昇を確認した(Arikawa T et al.,Placenta,2012)。当分化条件は低栄養条件で誘導される系であることからオートファジーが関与している可能性が高く、実際に我々はin vivoにおいてオートファジーのマーカーであるLC3集積を確認し、かつ高分化型栄養膜細胞が多い脱落膜(Decidua)でのGal-9の共局在とGal-4発現の消失を確認した。 以上から、胎盤形成に重要とされるオートファジーと、ガレクチンの時空間的発現には興味深い相関がみられることから、本研究ではガレクチン、特に胎盤栄養膜細胞分化過程で発現変化が見られたGal-4及び-9に注目して「胎盤形成と免疫寛容への寄与とその機序解明」を目的として現在も検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低栄養・酸素ストレス、あるいはガレクチンにより誘導されるオートファジーシグナル伝達系を中心として、計画初年度は以下の3点を中心に研究をおこなった。 (1)ガレクチンのオートファジー誘導作用(in vitro培養系)。 (2)ガレクチン誘導性オートファジーの胎盤形成における役割解明(遺伝子強制発現系、遺伝子欠損実験:方法参照)。 (3)上記条件での免疫細胞の質的、量的変化。 初年度の成果として、Placenta誌に短報を報告(Arikawa T et al., 2012.)した。
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Strategy for Future Research Activity |
我々はこれまでに栄養膜細胞分化に伴うGal-4発現の低下、及びGal-9発現の上昇、さらにGal-9のオートファジー誘導能を明らかにした。胎盤形成期(栄養膜細胞分化時)におけるオートファジーもガレクチンの影響下で誘導され、かつ胎盤での母体-胎児間のガス・代謝物交換や免疫寛容機構に寄与する可能性が高いことから、2年目以降は胎盤形成機序と免疫寛容という興味深い2つの現象におけるガレクチンの役割を詳細に解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度では想定以上の成果を得ることができたため、予定よりも物品費、消耗品にかかる経費をおさえることができた。次年度に関しては繰り越した経費を予定していなかったin vivoでの実験(抗体の作製など)に充当することも可能となったため、当初の次年度予算と合わせ、計画的に使用する予定である。繰り越し金以外の予算については初年時と同様、解析を中心として主に消耗品に使用する。
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Research Products
(4 results)