2014 Fiscal Year Research-status Report
新奇Ca2+シグナル分子およびその作用機序の解明と不妊治療への展開
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24791731
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
原田 裕一郎 東京医科大学, 医学部, 助手 (80570168)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 受精 / 卵活性化 / Ca2+濃度上昇 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトを含む生命にとって、受精は個体発生の第一歩である。しかし、ほとんどの脊椎動物の卵は排卵時、減数分裂の途中(第二減数分裂中期)で停止している。卵は精子と接着・融合したのち卵内のCa2+濃度が上昇し、これが引き金となり卵は減数分裂を再開し第二極体を放出して減数分裂を完了する。これを卵活性化と言い、卵活性化には卵内Ca2+濃度の上昇が必要である。この卵活性化は卵と精子が接着・融合したのちに卵へと伝達されるシグナル(精子由来卵活性化因子;精子ファクター)によって引き起こされる。この精子ファクターとして、これまでにほ乳類ではPLCzが報告されており、両生類イモリにおいては私がクエン酸合成酵素が精子ファクターであることを報告している。 これまで、私はクエン酸合成酵素がマウス卵においても精子ファクターとして機能している可能性を示唆してきた。そこで、さらにマウスのクエン酸合成酵素について詳細に調べた結果、興味深いことにマウスにはこのクエン酸合成酵素と相同性の極めて高いタンパク質があることがデータベースより判明した。それはCitrate Synthase-Like(CSLike)と呼ばれるタンパク質である。そこで、実際にこのCSLikeがマウス成体に発現しているのかを解析した。その結果、逆転写PCRによりmRNAはマウス精巣においてのみ高い発現を示し、さらにCSLikeに対する抗体を作成し、CSLikeタンパク質での発現を確認したところ、これも精巣にのみ発現が見られた。またクエン酸合成酵素とCSLikeのアミノ酸配列の比較の結果では、その機能ドメインに配列の違いはほぼないことから、タンパク質としての機能にも差はないと考えられた。そこで、このCSLikeが精巣特異的であることからCSLikeノックアウトマウスを用いて卵活性化への影響の解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は交付申請書の計画は異なるが新たに新規のCa2+濃度上昇にかかわる因子(CSLike)を見出し、その解析を進めた。さらにそのCSLikeのノックアウトマウスの解析も始められていることからおおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続き、新たに見出したCSLikeについての解析をおこなう予定である。最初にCSLikeの受精への影響を調べるため、CSLikeノックアウトマウスの自然交配による産仔の有無及びその数の増減について観察する。さらに、CSLikeが受精時のCa2+濃度上昇への関与を検証するため、CSLikeノックアウトマウス精子の受精時の卵内でのCa2+濃度上昇を観察する。これらによってCSLikeの受精時Ca2+濃度上昇への必要性を検討する。
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Causes of Carryover |
前年度平成25年度からの試薬類の残りがある程度あり、かつ研修室としての消耗品の備蓄等も十分であったことから、私の研究に必要な器具試薬の購入が少なかったため、多少の研究費が残りました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験に必要なプラスチック製品(シャーレ、チューブ、チップなど)のほかに、Ca2+感受性蛍光色素、HRP標識抗体および蛍光色素標識抗体なのどの二次抗体、また組織などからのRNA抽出試薬、卵培養用培地の購入を予定している。また卵、精子採取用のマウスの購入を計画している。
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Research Products
(2 results)