2012 Fiscal Year Research-status Report
一般住民に対する大規模疫学調査による聴覚障害とその関連因子の検討
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24791737
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
佐々木 亮 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (20451479)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 聴力健診 / 一般住民 / 疫学調査 / 動脈硬化 / 加齢性難聴 |
Research Abstract |
平成18年度の予備研究において、多人数の一般住民に対する純音聴力検査を行い、加齢に伴い難聴が進行すること、さらにそれには男女差が見られ、また個人差が見られることを示した。この個人差に着目し難聴を進行させる誘因を検索した。 1、動脈硬化の指標の一つである脈波伝播速度(PWV)を測定し、周波数ごとに聴力閾値を、年齢、性別、BMI、飲酒や喫煙といったライフスタイルなどにより補正し多重比較を行った。その結果、男性、女性いずれにおいても聴力レベルとPWVの有意な相関が見られ、特に女性においてはその影響が強いことが示唆された。 2、糖尿病関連因子として血糖値およびHbA1c値を測定し、同様に聴力閾値を年齢等により補正し多重比較を行った。しかし男性、女性ともに聴力レベルとの有意な相関は認められなかった。 3、閉経後の女性に限定し骨密度と難聴との関連について検討を行った。骨密度として踵骨超音波測定法による音響的骨評価値(OSI)を用いて、周波数ごとに聴力閾値を、年齢、BMI等により補正し多重比較を行った。その結果骨密度の減少は聴力悪化の一要因となりうるものと考えられた。 4、難聴と認知機能低下との関連性について検討した。健診受診者に対し簡易認知機能検査(MMSE : Mini-Mental State Examination )を行い、2つの周波数(1kHz、8kHz)における聴力閾値を、年齢、教育年数等により補正し多重比較を行った。8kHzでは聴力閾値とMMSEとの関連性が認められなかったが、1kHzにおける聴力低下とMMSE低下の関連が認められ、難聴に伴う認知機能の低下が示唆された。 今後もデータも加え対象を増やし、特に騒音暴露の影響について検討を進めていく。研究開始から5年以上経過しており、同一対象者の経年変化の観察も可能であるので検討していく方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
毎年の健診に参加しデータの蓄積を行っており対象者は増えている。また、騒音暴露のデータも得られているので、それを加味した検討を再度行いたいと考えているが、現在データの整理中であり発表の形には至っていない。さらには英文発表の準備も行っており時間を要している状況である。次年度に学会発表と論文作成は行える予定ではある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き毎年の健診に参加しデータの蓄積を行う。 聴力へ影響を与える因子の検討項目として、糖尿病関連因子の再検討、脂質異常症関連因子、メタボリックシンドローム関連因子として体脂肪率、ウエスト周囲径などが挙げられる。これらと聴力との関連性を検討する。騒音暴露の項目が追加されたので、これを含めて動脈硬化関連因子等もまた検討してみる。 健診の際には同時に耳鳴や難聴に対する問診も行っており、うつ傾向などとの関連性も探っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・岩木健康増進プロジェクト健診において、聴力検査および聞き取り調査をするための人件費・交通費。 ・健診で得た検査データを整理、解析するための人件費。 ・解析のためのパソコンソフト購入。 ・研究成果発表の旅費。 ・英文校正のための謝金。
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