2012 Fiscal Year Research-status Report
新規パッチクランプ原子間力顕微鏡によるPrestin構造変化の分子メカニズム解明
Project/Area Number |
24791739
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
村越 道生 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (70570901)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | タンパク質 / 走査プローブ顕微鏡 / 生物・生体工学 / 外有毛細胞 / Prestin |
Research Abstract |
哺乳類の鋭敏な聴覚は,内耳に存在する感覚細胞である外有毛細胞(OHC)の伸縮運動に起因する.この運動能は,OHC細胞側壁の膜タンパク質“prestin(プレスチン)”の構造変化で実現されると予測されている.しかし膜タンパク質の立体構造とその構造変化を計測する方法は確立されておらず,そのためprestinの構造変化メカニズムは解明されていない.そこで本研究では,原子間力顕微鏡法を基盤とした,prestinの構造変化を直接計測できる新たな技術を確立し,分子レベルでその構造変化メカニズムを解明することを目的とする.本年度は,「Prestinの多量体構造の制御法」と「Prestinの変形状態の制御法」の確立に取り組んだ. 「Prestinの多量体構造の制御法」については,prestinを発現させた培養細胞(CHO細胞)からprestinを精製・抽出することには成功した.しかしながら,当該実験に当初計画よりも時間を要したために,多量体制御の実験が十分に行えなかった.この点は来年度速やかに実施する計画である. 「Prestinの変形状態の制御法」については,膜電位コントロールデバイスの開発を試み,さらに当該デバイスを用いてプレスチンを発現させた培養細胞の電気特性計測及び単離細胞膜表面の微細構造観察を試みた.その結果,開発した膜電位コントロールデバイス基盤の微小ポア(直径約2μm)上に,培養細胞をポジショニングすることに成功した.これにより,電気抵抗値が細胞ポジショニング前に比べて50倍程度増加する様子が観察でき,さらに細胞膜表面の詳細構造の可視化にも成功した. 今後,当該研究計画で開発したデバイス及び得られた知見を基に,人工脂質膜中に多量体構造の異なる精製プレスチンを再構成し,その電気特性の計測と変形挙動の可視化に取り組む計画である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は,「Prestinの多量体構造の制御法」と「Prestinの変形状態の制御法」の確立に取り組んだ. 「Prestinの多量体構造の制御法」については,prestinの抽出・精製と多量体構造制御を計画していた.Prestinの抽出・精製法の確立に当初計画よりも時間を要したため,多量体構造制御の実験は十分に行えなかった. 「Prestinの変形状態の制御法」については,統合計測・制御・解析システムの構築と膜電位制御デバイスの開発を計画していた.膜電位制御デバイスの開発に当初計画よりも時間を要したため,統合計測・制御・解析システムの構築には至らなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度計画で未達成の計画について速やかに取り組む.平成25年度計画については,実験系の完成を高めることで実験効率を上げ,期間を短縮して実施する計画である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に計画していたprestinの多量体制御に関する実験において,当初の予想とは異なる結果が得られたために追加実験が必要となり,計画目標の達成のために3,000千円の前倒し請求を行った.しかしながら,同実験に必要な統合計測・制御・解析システムの開発に計画よりも時間を要した結果,追加実験の実施に至らなかった.次年度使用額はこのために生じたものであり,次年度に当該実験を実施するのに必要な経費として,平成25年度請求額と合わせて使用する予定である.
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