2012 Fiscal Year Research-status Report
虚血に対する内側前庭神経核ニューロンの一過性過分極メカニズム
Project/Area Number |
24791744
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
紫野 正人 群馬大学, 医学部, 助教 (20550015)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 内側前庭神経核 / 虚血 / スライスパッチクランプ |
Research Abstract |
内側前庭神経核(Medial Vestibular Nucleus;MVN)ニューロンは5分間の無グルコース無酸素の一過性虚血を受けると、膜電位が過分極して自発発火を停止する。その後、生理的条件下に戻すと速やかに膜電位は再分極して自発発火を開始する。このメカニズムが内因性あるいは外因性によるものかを区別する目的で、一過性虚血時の内側前庭神経核ニューロンの自発性抑制性シナプス後電位(spontaneous Inhibitory PostSynaptic Current;sIPSC)を測定した。外因性要因であればsIPSCが増大することでMVNニューロンの膜電位が過分極するはずである。しかし実験では、虚血前のコントロール状態、虚血中、虚血後に明らかなsIPSCの増大変化を認めなかった。そこで次、内側前庭神経核ニューロンへの興奮性・抑制性入力を阻害剤で遮断した状態、すなわち外因性要因を一切排除した条件下で、MVNニューロンに一過性虚血負荷を与えたところ、膜電位の過分極とこれに引き続く自発発火停止が記録できた。このことは、虚血に対する膜電位変化は、外因的な要因でなく、ニューロン自体がもつ内因性の膜特性に起因することが明らかになった。 次の段階として、MVNニューロンの膜電位を過分極させつようなイオンコンダクダンスを検討した。無酸素無グルコース負荷によって生み出される細胞内環境はATPの枯渇である。またニューロンの膜電位を過分極さるイオンコンダクタンスとしては、Kイオンがまず考えられる。ATPとKイオンに関連するイオンチャネルとしてATP感受性Kイオンチャネルがある。そこで、このイオンチャネルの阻害剤存在下で、同様の虚血実験を施行したところ膜電位の過分極はみられなかった。このことは、虚血に対する膜電位変化はATP感受性Kイオンチャネルに起因する可能性が高いことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画では、内側前庭神経核ニューロンの虚血に対する反応(一過性過分極による自発発火の停止)が内因性変化あるいは外因性変化によるものかを同定することが最大の目的であった。今年度の実験で、内側前庭神経核ニューロンの虚血に対する反応はニューロン自身がもつ内因性膜特性の変化によるものであることが確認できた。 さらに、膜電位が過分極する原因となるイオンコンダクタンスがATP枯渇に附随して活性化されるATP感受性Kイオンチャネルである可能性が高いことが、阻害剤を用いた実験から示唆できた。 上記の実験結果は、平成24年度の研究実施計画通りであり、事前に想定していた通りの結果がえられたことから、本研究の進行具合・到達度としては、おおむね順調と思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
内側前庭神経核ニューロンは自発発火の様式に基づいて、Type AとType Bとに大別されており電気生理学的特徴(入出力特性、周波数特性など)に違いがある。両ニューロンともに、眼球運動における詳細な役割については、まだ議論の余地があるが、今後は内族前庭神経核ニューロンのサブタイプにより、一過性虚血に対する反応性に差異があるかを検討する計画である。 また、抑制性ニューロンが蛍光標識されるように遺伝子改変されたラットをもちいて、虚血実験を行う。内側前庭神経核は様々なニューロンが混在し、かつファイバーの走行も網目状であるため、通常のパッチクランプ実験では、記録前にそのニューロンが興奮性ニューロンか抑制性ニューロンかを判断することは不可能である。そこで前述の遺伝子改変動物を用いることで、抑制性の前庭神経核ニューロンに特化して、虚血に対する反応性を調査することが可能となる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費使用において生じた若干の未使用額は、年度内の使い切りをせず、平成25年度の研究費とあわせて使用することとした。 本年度は、動物、試薬、実験の消耗品などに研究費を使用する。 また、研究成果を学会発表するための出張費にも使用する予定である。
|