2013 Fiscal Year Research-status Report
虚血に対する内側前庭神経核ニューロンの一過性過分極メカニズム
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24791744
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
紫野 正人 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (20550015)
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Keywords | 内族前庭神経核 / 虚血耐性 / タイプAニューロン / タイプBニューロン / スライスパッチクランプ |
Research Abstract |
椎骨脳底動脈循環不全症は高齢者におけるメマイの原因としてしばしば遭遇する疾患であり、内側前庭神経核(Medial Vestibular Nucleus; MVN)を含む脳幹・小脳への一過性虚血に起因する可逆性の病態である。内側前庭神経核は前庭動眼反射・眼振解発の中心的な役割を果たす神経核である。VBIの病態解明のため、3週齡のWistar ratから脳幹スライス標本を作製し、Whole-cell patch-clamp法を用いてMVNニューロンに5分間虚血負荷を与えた時の膜特性の変化を観察したところ、多くのニューロンで内因性膜特性の変化により一過性過分極が生じて自発発火を停止し、生理的条件下に戻すことで自発発火を回復することがわかった。一方で過去の文献から、MVNは均一なポピュレーションではなく、数種類の異なるニューロンから構成されていることが分かっている。自発発火パターンの差異から①Type Aニューロン、②Type Bニューロンに大別されている。前者は前庭入力に対してTonicな発火応答を示す一方、後者は、Phasic-tonicな応答を呈し、機能的にも異なるとされている。本年度は、ニューロンのタイプにより虚血への電気生理学的な反応に差異があるかを、これまでと同様の電気生理学的手法で検討した。その結果、一部のニューロンでは虚血負荷を行っても自発発火を継続するニューロンも観察された。このような虚血抵抗性のニューロンはType Aニューロンの約3割で確認された。一方、Type Bでは約1割程度であった。このことから、眼球位置を維持するようなTonicな特性を持つType Aニューロンでは比較的虚血に耐性があり、一方、眼球運動初期に対応するPhasic-tonicな特性をもつType Bニューロンのほうが虚血に対して敏感に反応すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は内側前庭神経核ニューロンのneuronal typeに応じた虚血への反応性の差異を観察した。同じ神経核内のニューロンでも虚血への反応が異なることを電気生理学的に示すことができた。眼球運動への関与の違うニューロンが虚血に対して異なる反応を呈する可能性を提示するとことができた。このことは、平成25年度の研究・実験計画の根幹であり、研究は遅滞なく、おおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究でこれまでに観察できた現象がさらに多くのニューロンでも観察可能かを調べる。また、TypeA、TypeBニューロンにそれぞれ、セロトニン、メイロン、ATPなどの薬剤負荷をかけた時に、虚血耐性がどのように変化するかを調査する。さらに、抑制性ニューロンが蛍光標識されるように遺伝子改変されたラットを実験動物として用い、電気生理学的記録の前段階で抑制性ニューロン、興奮性ニューロンが同定された状態で虚血反応を記録することで、より眼球運動と虚血の詳細分析が可能となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬や実験動物、実験小物などの消耗品の消費が、本年度は安定した実験系のため使用が少なかった。このため、年度内に使用せず、次年度へ繰り越しとした。 実験動物、試薬、実験消耗品などに使用予定である。また、研究成果を発表するための学会参加費用や論文査読のための費用として使用する。
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