2012 Fiscal Year Research-status Report
好酸球性副鼻腔炎における局所IgE産生のメカニズムと病態生理への関与の解析
Project/Area Number |
24791747
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
馬場 信太郎 東京大学, 医学部附属病院, その他 (90553719)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
好酸球性副鼻腔炎は鼻茸の再発を高率に認める難治性の副鼻腔炎である。その病態生理は依然不明な点が多いが、局所におけるIgEの過剰産生が好酸球の遊走と活性化、およびこれによる粘膜傷害の惹起に関与することが近年示唆されている。本研究では、各炎症細胞の細胞動態の組織学的解析および組織中のサイトカインの発現解析を通じて好酸球性副鼻腔炎病変におけるIgE産生増加の分子メカニズムの解析、およびこれが好酸球性病変を悪化させる分子メカニズムについて検討を行った。 臨床像については男性の方が若年発症が多く、女性では喘息、好酸球性中耳炎合併例が多かった。組織中炎症細胞の分布は好酸球性副鼻腔炎群では非好酸球性群よりもポリープ中の好酸球数、IgE陽性細胞数、Fcεレセプター2陽性細胞数が有意に増多しており、好酸球性副鼻腔炎ポリープにおける好酸球数と血中総IgE値とは明らかな相関関係はなかったが、同好酸球数と組織中IgE陽性細胞数には明らかな正の相関関係があった。局所におけるIgE過剰産生が好酸球増多に関与している可能性を示唆していると思われる。IgEクラススイッチにかかわる因子について、IL-5、IL-13の定量PCRでは好酸球性副鼻腔炎群ポリープで他群に比べて優位に発現上昇、IL-4については各群で有意差を認めなかった。IL-4、13の共通のレセプターであるIL-4レセプターはmRNAレベルで好酸球性、非好酸球性群とも副鼻腔炎群でコントロールより優位に発現低下を認め、IL-13上昇によるダウンレギュレーションが示唆された(Mann-Whitney U test)。また、IgEクラススイッチの存在を直接証明できる因子であるεGLT、AIDではmRNA定量においてAIDについては各群で差は見られなかったが、εGLTについては好酸球性群で有意に発現増多を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
好酸球性副鼻腔炎の局所における細胞動態、サイトカイン動態を解析し上記の成果を得た。この研究結果をもとに国内学会に複数回発表を行い、2013年2月に行われた日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会においては好酸球セッションでシンポジストに選出された。また、英文論文2本作製し、現在登校中である。
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Strategy for Future Research Activity |
好酸球性副鼻腔炎症例ではポリープ中のIgE増多を認め、組織中のIgEは主にMast cellに分布しFcεR1を介して作用する可能性があると考えられた。 IgEの局所粘膜への供給路として1)IgEの血流もしくはリンパ流による供給 2)IgE産生細胞の鼻粘膜への動員と局所でのIgE産生 3)局所でのIgEクラススイッチと局所でのIgE産生があげられる2)。1)については我々のデータでは血中IgEとポリープ中IgE陽性細胞数には相関がなく、本疾患において主流ではないと考えられた。3)の局所でのクラススイッチについてはアレルギー性鼻炎、喘息では報告があり副鼻腔炎においてもポリープ局所でのクラススイッチの存在が証明されている。 今回我々のデータにおいても、好酸球性副鼻腔炎症例ではポリープ局所でのIgEクラススイッチの促進が示唆された。また、非好酸球性副鼻腔炎ではIgG mature transcriptsが有意に発現上昇しており、IgG増多が病態形成に関与していることが示唆された。 以上より好酸球性副鼻腔炎の病態形成にIgEが関わっている可能性が示唆された。 今後は増多したIgEのターゲットとなっているMast細胞の活性化様式、細胞動態を解析していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Mast細胞活性化を促進するサイトカインをELISA、PCRで測定。実験にかかる試薬の購入を予定している。 また、フローサイトメータによるMast細胞の分離を行い、細胞動態を直接解析する。。
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