2013 Fiscal Year Annual Research Report
匂い源の左右方向感知機能に関わる嗅皮質領域ならびに投射経路の解明
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24791753
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊田 周 東京大学, 保健・健康推進本部, 助教 (00555865)
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Keywords | 嗅覚 / 嗅上皮 / 前嗅核 |
Research Abstract |
1. 前嗅核吻外側領域細胞は、同側嗅上皮から興奮性入力を受け取り、対側嗅上皮からは抑制性入力を受け取る(最終年度成果)。嗅皮質細胞の左右嗅上皮刺激に対する応答特性を明らかにすることを目的に、同側(記録側)嗅上皮ならびに対側嗅上皮刺激に対する神経応答を嗅皮質細胞から記録した。その結果、同側嗅上皮への匂い刺激に対しては興奮性応答を示し、対側嗅上皮刺激に対しては抑制性応答を示す特徴を持った細胞群が、前嗅核吻外側領域に局在することを見つけた。この応答特性は、左右音源定位機能に関わる聴覚系の外側上オリーブ核細胞の応答特性と似ていた。前嗅核細胞は、左右嗅上皮からの匂い入力の差分を検出し、匂い源の同定に関わると予想される。さらに嗅皮質は解剖学的に細分化されているが、個々の嗅皮質領域は、匂い情報の異なる側面をコードし、機能分化している可能性が示唆される。 2. 新生嗅細胞は嗅覚入力依存的に再生・成熟する。新生嗅細胞の分化・成熟過程に、嗅覚入力がどのような影響を及ぼすのかを明らかにするために、嗅上皮障害後の再生過程を継時的に観察した。障害後14日以降で、鼻閉側の嗅上皮が薄く、鼻閉側の嗅細胞数が開放側と比較して減少していた。さらに、成熟嗅細胞の指標となるOMP陽性細胞数も鼻閉側で減少していた。嗅細胞が嗅覚入力依存的に再生・成熟すると考えられる。 3. 嗅上皮の組織学的な不完全再生は「新生嗅細胞の細胞死」によって引き起こされる。鼻閉側での嗅上皮Caspase3陽性細胞数は、開放側でのそれと比較して有意に増加することを明らかにした。したがって、嗅上皮の組織学的な不完全再生は「新生嗅細胞の細胞死」によって引き起こされ、嗅上皮障害後の再生過程には、嗅覚入力が重要な役割を果たしていると考えられる。今後、非侵襲的かつ効率的に嗅上皮再生を促進させるために嗅覚刺激を用いた新しい治療法の開発が期待できる。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] 嗅覚入力依存的な嗅上皮障害後の再生2013
Author(s)
菊田 周、坂本幸士,近藤健二,金谷佳織,岩村均,鈴川佳吾,平野真希子,西嶌大宜,籠谷領二,森憲作,山岨達也
Organizer
第52回日本鼻科学会総会
Place of Presentation
福井フェニックスプラザ(福井県福井市)
Year and Date
20130926-20130928
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