2013 Fiscal Year Research-status Report
難聴原因遺伝子変異が前庭機能に及ぼす影響に関する研究
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24791766
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
塚田 景大 信州大学, 医学部附属病院, 助教 (90419375)
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Keywords | 遺伝性難聴 / 平衡機能 / 前庭 |
Research Abstract |
平成25年度は遺伝性難聴患者の半規管機能、球形嚢機能検査といった平衡機能検査を実施することで各遺伝子変異による平衡機能障害のメカニズムを検討した。今回は特に先天性難聴の原因遺伝子として最も多いGJB2の平衡機能検査(カロリックテストおよびVEMP)について検討、解析を行った。GJB2遺伝子変異による難聴症例、24例について前庭機能検査について検討した結果、温度眼振検査では2/23例(8.7%)で反応の低下を認め、cVEMPでは正常コントロール70例と比較し有意差をもって振幅値の低下を認め、約80%の症例がcVEMPの振幅の低下を認めた。したがってGJB2遺伝子変異症例では球形嚢機能障害を起こしやすく、半規管機能は正常である傾向を示すことが示唆された。球形脳障害があるのも関わらず、24例の検討ではめまいの自覚がある症例は認めなかった。この要因としては、①先天的に前庭機能が障害されているため、中枢代償が働いた可能性、②球形嚢のみの障害ではめまい症状を自覚しない可能性などが考えられた。また、GJB2遺伝子変異においては難聴の遺伝子型によって難聴の程度(表現型)に傾向性がある(Tsukada et al. 2010)ため、聴力の程度と前庭機能(温度眼振検査およびcVEMP)の相関について検討を行ったが、温度眼振検査の緩徐相速度およびcVEMPの振幅値と聴力の程度に明らかな相関は認めなかった。これは、今回の検討では日本人に多い235delC (高度難聴を示す変異)を持つ遺伝子型が多く、変異の種類に偏りがあったたことが一因と考えられるため、今後V37Iなど軽度難聴となる症例に関して詳細に検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の通り、遺伝子解析を行い変異の明らかとなった症例を対象に前庭機能の測定を行うことができた。特にカロリックテストおよびVEMPの両検査を施行することで、めまい発症のメカニズムに関して詳細に検討を行うことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
各遺伝性難聴症例の前庭機能検査を行い、遺伝性難聴患者の前庭機能に対するデータベースの蓄積を行い、遺伝子間の相違について検討を行い、各遺伝性難聴の前庭の特徴およびめまいのメカニズムについて検証を行う。また現在、半規管機能についてはカロリックテスト、球形嚢についてはcVEMPで機能評価を行っているが、さらに卵形嚢機能を反映すると考えられるoVEMPを導入し、遺伝性難聴患者の各前庭器の機能を明らかにしたいと考える
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