2012 Fiscal Year Research-status Report
頭頸部癌におけるシスプラチン耐性機序と新規治療標的分子の解明
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24791790
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
能美 希 大分大学, 医学部, 助教 (40468020)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 頭頸部癌 / 化学療法 / 薬剤耐性 / 分子標的治療 |
Research Abstract |
シスプラチンは頭頸部癌化学療法のkey drugである.抗癌剤耐性獲得が治療の妨げとなることがあるがその耐性機序は解明されていない。われわれはシスプラチン耐性機序に関わる新たな標的分子を解明するためにシスプラチン耐性株を異なる数種の頭頸部癌細胞株で樹立した。またシスプラチン耐性化に関与する可能性のある分子のひとつとしてLamin A/Cに注目した。本研究では,頭頸部癌においてLamin A/Cがシスプラチン耐性機序に関与するか,また将来的に新たな治療標的分子となりうるか検討を試みた。 まずIMC-3(ヒト上顎洞扁平上皮癌),T3M-1(ヒト口腔扁平上皮癌),SAS(ヒト舌扁平上皮癌)のシスプラチン耐性株と野生株を用い,数種の抗癌剤を用いてMTT assayで薬剤感受性を検討した。いずれの細胞もシスプラチン耐性を獲得しており,耐性株ではLamin A/CはmRNAレベルおよびタンパクレベルで強発現していた。またこれらの細胞株では同様に白金製剤であるカルボプラチンにも耐性を示したが,異なる作用機序をもつ5-FU,ドセタキセル,メトトレキセート,ペプレオマイシンへの感受性は耐性株と野生型とで差はみられなかった。さらに,これらの細胞株にLamin A/C発現ベクターあるいはLamin A/C siRNAを導入し,Lamin A/Cを強発現あるいは発現抑制させると,発現ベクター導入群ではいずれもシスプラチンおよびカルボプラチンの耐性増強が,siRNA導入群ではシスプラチンおよびカルボプラチンの感受性増強がみられた。この結果よりLamin A/C発現量とシスプラチンおよびその他の白金製剤の感受性とに相関があることが示唆された。現在,細胞周期解析をフローサイトメトリーで行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究課題として①頭頸部癌細胞株における抗癌剤感受性の検討および②シスプラチン投与後の細胞周期解析を計画した。①についてはほぼ計画通りに遂行できており,②についても現在解析中である。①から得られた結果より白金製剤の感受性とLamin A/Cの発現とに関連性があることが予測されるが,白金製剤の作用機序は主にDNA合成阻害であり,主にG1期に作用すると考えられている。Lamin A/CはG1期にLAP2αとともにpRb/E2F complexと結合することが知られており,その点を中心に細胞周期解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は以下の内容の実験を計画している。 ①シスプラチンの核内でのDNA架橋形成阻害について検討;細胞周期停止以外の耐性機序にシスプラチンのDNA架橋形成阻害が関連しているのではないかと予測した。この点を解明するためにIMC-3,T3M-1,SASを用いて検討する。核内のDNA中のplatinumの含有率を解析し,核内に取り込まれたシスプラチン量を推測する。また,シスプラチン投与後の細胞の形態学的特徴や細胞内でのplatinumの局在をみるため,走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡,共焦点レーザー顕微鏡で観察する。特に核内でのDNAとplatinumの結合の観察を試みる。野生型と耐性株とで差があるか検討する。上記の実験はLamin A/C発現ベクターやsiRNA導入細胞でも検討を行う。 ②臨床検体でのLamin A/C発現と機能の検討;Lamin A/Cの発現を手術摘出標本や生検組織を用いて免疫組織科学的に検討し,予後やシスプラチン感受性,病期分類など臨床経過について比較することで,in vivoでもLamin A/Cの発現と機能との関連を検証する。 併せて,平成24年度に実験を行っていた細胞周期解析についても継続して研究していく。以上の研究を系統的に遂行し,これまでのデータをあわせて随時国内外の学会等で発表し,また必ず英語論文として国際誌に発表する。可能な限りインパクトファクターの高い雑誌に掲載されることを目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費として,DNA抽出キット, 原子吸光分析機運用代,電子顕微鏡,共焦点レーザー顕微鏡などの試料作成・各種抗体,トランスフェクション試薬,siRNA生成等の消耗品を中心に予算を計上した。また,6月にソウルで開催される第20回世界耳鼻咽喉科会議出席のための旅費,データ解析用のパソコン購入費用にも使用予定としている。
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