2013 Fiscal Year Research-status Report
濾胞ヘルパーT細胞を介したIgE産生のマスタープランとその抑制経路の研究
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24791793
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
関 伸彦 札幌医科大学, 医学部, 助教 (30404693)
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Keywords | 免疫アレルギー疾患 / 濾胞ヘルパー T 細胞 / IgE / クラススイッチ |
Research Abstract |
免疫アレルギー疾患の有病率は増加の一途を辿り,その克服に向けた抜本的な予防法や治療法の確立が切望されている.免疫アレルギー疾患の原因の多くはアレルゲン特異的 IgE であり,現在までに 2 型ヘルパー T 細胞(Th2 細胞)が主としてアレルゲン特異的 IgE の産生に関係し病態形成に与ると考えられている.しかしながら Th2 細胞の関与のみでは十分説明できない場合があり,アレルゲン特異的 IgE の産生機構には未だ不明な点が多く残されている. 本研究では,胸腺や扁桃,末梢血のヒトリンパ球を用いてアレルゲン特異的 IgE 産生過程における濾胞ヘルパー T 細胞の機能的役割を明らかにすることを目的とする.抗原特異的な抗体の産生には濾胞ヘルパー T 細胞が必要で,免疫アレルギー疾患の病態形成にどのように関与しているのか非常に興味が持たれている.濾胞ヘルパー T 細胞はリンパ濾胞胚中心形成を促して抗原特異的な抗体産生を調節するが,濾胞ヘルパー T 細胞の機能はマウスモデルの研究から予想されたものが多く,ヒトでの濾胞ヘルパー T 細胞の機能的特徴はもとより抗原特異的 IgE の産生における意義についても解明されていない.研究成果が臨床的意義に結びつくよう視点を定めて研究を進めることは極めて重要であり,この観点からこれまで我々は臨床検体を直接用いてヒト免疫細胞の研究を行ってきた.本研究では濾胞ヘルパー T 細胞の機能制御が人為的に可能かどうかも検証したいと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
濾胞ヘルパー T 細胞による IgE 産生条件の解明のため,扁桃リンパ球よりリンパ球サブセットを FACS ARIA II を用いてソーティングし,ナイーブ B 細胞(CD19+CD27-CD38-),メモリー B 細胞(CD19+CD27+CD38-),Tfh細胞(CD3+CD4+CXCR5+PD-1+)を選別した.B 細胞サブセット(2.0×105/well)とTfh細胞(2.0×105/well)を AIM-V 無血清培地にて SEB スーパー抗原の存在下で共培養すると 10 時間ごろより芽球化が始まり,細胞培養上清の ELISA 解析により IgM や IgG の産生を確認できた.またこれらの共培養 7 日目の細胞培養上清のサイトカインアレイの解析から得られた IgE 抗体の産生に関与しうる種々のサイトカインの候補を抽出した.現在,これらのサイトカイン(EGF,FLT3-L,G-CSF,IFNα2,MCP-3,IL-1β,IL-3,IL-5,IL-9,IL-12,IL-15)を添加した状態での IgE 産生の変化について観察中である.また胸腺 Th0 と扁桃Tfh細胞のトランスクリプトーム解析の結果,ヒトTfh細胞には CTLA4 の他にTIGIT が高発現していることが分かった.これらはいずれも ITIM モチーフを有する抑制シグナル経路の細胞表面分子である.抗 CTLA4 抗体や抗 TIGIT 抗体の存在下で濾胞ヘルパー T 細胞と B 細胞サブセットの共培養系では,特にメモリー B 細胞との反応系で B 細胞のコロニー形成が顕著になることから,Tfh 細胞の機能的な脱抑制がかかっていると考えられる. さらに末梢血を用いて,最近注目されている Tfh 細胞サブセットについても解析中である.アレルギー性鼻炎,気管支喘息患者の末梢血を FACS ARIA II を使用し解析した所,疾患ごとに Tfh 細胞サブセットの分布に変化を認めた.これはアレルギー疾患における Tfh 細胞サブセットの役割を解明する新たな知見であり,さらなる詳細な検討を要する.
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Strategy for Future Research Activity |
濾胞ヘルパー T 細胞と B 細胞サブセットの共培養系にてTfh細胞の機能ならびに IgE 抗体産生に関与する微小環境のサイトカイン候補を検討しており,まずはこの実験系を進め、さらに有意なサイトカインを絞りこみ,IgE 産生のためのサイトカイン環境の解明に取り組む予定である.加えてアレルギー性鼻炎患者と気管支喘息患者と健常者の末梢血を用いて血液中のTfh細胞の割合を比較検討したところ,アレルギー性鼻炎、気管支喘息患者ではTfh細胞が多い傾向が得られている.さらに最近注目されている Tfh 細胞サブセット(Tfh1, Tfh2, Tfh17)についても,患者群と健常コントロール群において,その分布に変化を認めた.今後さらにアトピー性皮膚炎,食物アレルギー、自己免疫疾患といった免疫アレルギー疾患についても検討したい.このような研究を通じて,免疫アレルギー疾患の根本的な予防や治療法開発に結びつくような結果が得られることを期待したい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は,旅費の支出が予算額より少なかったため. フローサイトメトリーや細胞選別のための細胞表面マーカーを検出する各種抗体,ELISA キット,培養液などの試薬や消耗品の購入に用いる予定である.
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Research Products
(5 results)