2013 Fiscal Year Research-status Report
新しい音伝導ルート(軟骨伝導)を用いた両耳装用補聴器の開発
Project/Area Number |
24791799
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
下倉 良太 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (90455428)
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Keywords | 実験系心理学 / 解析・評価 / 電子デバイス・機器 / 医療・福祉 |
Research Abstract |
本研究は、両耳装用型軟骨伝導補聴器の実用化を目指し、軟骨伝導音による両耳聴効果(方向定位・音声騒音分離)を評価し・試作機に改良を加えることを目的としている。 軟骨伝導補聴器とは耳の軟骨を振動させて音情報を伝える新しい補聴器である。この補聴器は、これまでの気導・骨導とは異なる新しい伝導ルート(軟骨伝導)を利用したものであり、既存補聴器のデメリットを解消しうる画期的な補聴器として期待できる。例えば一般に広く使われている気導補聴器はイヤホンで外耳道を塞ぐため、耳漏のある患者や外耳道閉鎖症の患者は使用できない。それに対して軟骨伝導補聴器は、振動子の形状が外耳道を塞がないリング型であり、軟骨に軽く接触させるだけで振動を伝えることができるので、気導補聴器を使用できない難聴者の補聴に大きく貢献する。 軟骨伝導のもう一つの大きな特徴は、両耳装用に適していることである。一般的な気導補聴器を両耳に装用すると強い耳閉感を利用者に与えてるのに対し、軟骨伝導補聴器は両耳とも開放するので、不快感なく長時間装用できる。この利点を生かし、本研究課題は軟骨伝導より得られる両耳聴効果に焦点を当てている。 両耳聴効果の中で本課題は(1)音の方向感と(2)騒音下語音聴取能を検証している。昨年度は健聴者を対象に心理実験を行い、この両効果が気導呈示とは遜色なく、軟骨伝導呈示でも得られる事を証明した。そこで当該年度(平成25年度)では、軟骨伝導補聴器が日常でも使用できるよう、振動子の改良を行った。昨年度までは圧電型振動子を用いていたが、昇圧回路が必要で大きな電池消耗の原因となっていた。そこで当該年度は電磁型振動子を開発し、電池寿命を大きく延ばすことに成功した。今後は、この電磁型振動子を用いた実験も構築していく。 また、その他の両耳聴効果で(3)閾値の上昇、(4)語音明瞭度の改善についても健聴者を対象に検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
軟骨伝導補聴器の開発の中で最も難しいとされていたのが使用する振動子の開発である。現在の圧電型振動子は空気亜鉛電池3個用いても電池寿命が3時間と短く、実用的とは言いがたかった。しかし電磁型振動子の開発に成功したおかげで、電池寿命は120時間(空気亜鉛電池1個)と飛躍的に伸びた。この大きな課題をクリアしたことにより、次年度以降の実験も計画的に進めることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は開発した電磁型振動子を用いて実験を構築していく予定である。またこれまで健聴者を対象に行ってきた実験を、難聴者ではどうなるのか検証していく予定である。 また前年度、試行錯誤の結果、振動子を耳軟骨に強く押し当てるほど軟骨伝導音が増幅されることが分かった。この特徴は骨導では見られず、軟骨伝導特有のものと思われる。前年度行った騒音下語音聴取能の実験では、振動子を外耳道開口部に添えるだけの使用方法であったが、強く押しつけることによって聴力レベルが向上し、高い騒音下でもより明瞭に語音聴取できる可能性がある。そこで本年度はこの振動子接触圧と語音明瞭度との関係について検証する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度で終わらせるはずの実験で数名の被験者の実験が本年度にもまたがってしまった。 被験者謝金として使用する予定である。
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