2014 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザ菌に対する最小バイオフィルム抑制濃度に基づく新治療戦略の研究
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24791800
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
竹井 慎 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (40347589)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | バイオフィルム / 抗菌薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
急性中耳炎は幼小児期の代表的な細菌感染症であるが、近年難治化・遷延化例が増加している。難治化の要因として、抗菌薬の無秩序な頻用による薬剤耐性化だけでなく、薬剤耐性化によらない難治化の機序、すなわちインフルエンザ菌のバイオフィルム形成が急性中耳炎の難治化に関与する可能性が考えられている。細菌はバイオフィルムを形成することで抗菌薬感受性が低下するが、最小発育阻止濃度(MIC)とは別に抗菌薬の種類によってバイオフィルムに対する感受性が大きく異なる。 特にインフルエンザ菌は肺炎球菌ほど重篤な症状は引き起こさないが、再発性、反復性の中耳炎と関係が深い。 我々はすでに急性中耳炎の難治化にインフルエンザ菌バイオフィルムが関与することを見いだしている。すなわち、当施設で中耳炎患児より採取した無莢膜型インフルエンザ菌70株のバイオフィルム形成能を検討すると、バイオフィルム形成能は株によって大きく異なり、様々なバイオフィルム形成能を持つことが判明した。 今回、急性中耳炎患者の中耳貯留液から得られた無莢膜型インフルエンザ菌12株を用いて抗菌薬を投与し有効性について、従来のMICにくわえてバイオフィルムを形成した細菌に対する抗菌活性を示す最小バイオフィルム抑制濃度を用いて検討した。in vitroでの実験で形成したバイオフィルムに抗菌薬と投与するとある程度の抗菌薬濃度以上でバイオフィルムは破壊させるが投与のタイミングを遅らせてさらにバイオフィルムを成熟させ抗菌薬を投与すると、濃度を高くしてもバイオフィルムは破壊できなかった。このことからバイオフィルムが成熟する前に抗菌薬治療を行う必要があると考えられた。
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