2012 Fiscal Year Research-status Report
新規CD4陽性T細胞サブセットTh9細胞のアレルギー性鼻炎における役割の解明
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24791817
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
佐伯 真弓 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 主席研究員 (00462771)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アレルギー性鼻炎 |
Research Abstract |
本年度は、まず、感作マウスを用いて鼻炎症状の評価系を確立した。具体的には、OVAで感作したマウスにOVAを点鼻投与することにより、抗原によるくしゃみ反応の亢進や鼻腔洗浄液中への好酸球の浸潤が認められる、鼻粘膜特異的なアレルギー性炎症反応の誘発モデルマウスを樹立した。加えて、本モデルを改良し、鼻粘膜過敏性の亢進を評価できる系も確立した。 また、OVA特異的T細胞レセプターを強制的に発現し、遺伝子再構成活性化遺伝子2を欠損しているDO11.10 Rag2-/-マウスの脾臓からCD4+T細胞を採取し、当研究室にてTh2細胞を培養する方法や既報の論文を参考にして、Th9細胞へ分化させる培養条件を検討した。培養上清中のIL-9濃度をELISA法にて測定したところ、IL-9の産生が認められたが、FACS Cantoを用いた細胞内サイトカインの測定では、IL-9産生細胞の測定がうまく行えていない。その為、Th9細胞の培養時間やTGF-β等のサイトカインの添加濃度等の条件を細かくとって検討すると共に、細胞内サイトカインの染色条件や測定方法等の技術の向上を図っている。 IL-9産生細胞の検出はできていないものの、培養上清中でのIL-9産生が認められたことから、分化させたTh9様細胞をマウスに移入した。Th2細胞を移入後に経気道的に抗原を投与することにより、炎症細胞の浸潤等を指標とした気管支喘息様症状を安定して測定できるモデル系が当研究室で確立されているから、本モデル系でTh9様細胞の機能を解析したところ、気管支肺胞洗浄液中への好酸球の浸潤が認められ、本細胞が気管支喘息様の症状を引き起こすことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、アレルギー性鼻炎モデルマウスを作成し、病態の評価法を確立するとともに、Th9細胞の培養法を検討し、IL-9産生細胞をFACS Ariaで精製して、マイクロアレイによる発現遺伝子の網羅的な解析を実施する予定であった。 現在、アレルギー性鼻炎モデルマウスの樹立と解析は計画通り順調に進行している。 一方、Th1細胞やTh2細胞の培養上清と比較すると、分化させたTh9細胞の培養上清中ではIL-9濃度が有意に上昇しているものの、FACS Cantoを用いた細胞内サイトカインの測定でIL-9産生細胞を確認できていない。マイクロアレイ解析の結果の精度を高める上で、純度の高いIL-9産生細胞をソートすることが非常に重要なポイントとなることから、現在、Th9細胞の培養法を細かく検討すると共に、細胞内サイトカインの染色条件や測定方法の技術の向上を図っている。
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Strategy for Future Research Activity |
アレルギー性鼻炎モデルマウスを用いた病態の評価法は計画通り順調に確立された。そこで、今後は研究計画に記載したとおり、当研究室所有の種々のTgマウス等を用いた鼻炎状態の評価を行い、Th9細胞やIL-9の関与を明らかとする予定である。 本年度中にTh9細胞の培養条件を確立し、Th9細胞に分化している細胞をFACS Ariaで精製して、マイクロアレイによる発現遺伝子の網羅的な解析を実施する予定であった。マイクロアレイ解析を行う上で、Th9細胞を高純度にソートすることが非常に重要なポイントとなるが、IL-9産生細胞の測定が難しく、IL9産生細胞の同定が行えていない。現在、サイトカイン濃度や培養日数等を細かく検討し、Th9細胞の培養条件の確立を目指している。一方、分化させたTh9細胞の培養上清中においてはIL-9濃度の上昇が認められていることから、細胞内サイトカインの染色条件等の測定方法に問題がある可能性も考えられる。そこで、細胞内サイトカインの測定方法の改良を行うと共に、各種Th細胞におけるIRF-4やPU.1などの転写因子の発現を確認し、これらの転写因子の発現量を用いたTh9細胞の高純度な精製についても検討を行う。近日中にいずれかの方法でTh9細胞を精製し、マイクロアレイ解析を行う予定である。 また、本細胞を用いた予備検討の結果、喘息モデルにおいて、Th2細胞移入とTh9細胞移入で類似の反応が見られる一方で、異なる反応を示す可能性を示唆する非常に興味深いデータが得られている。そこで今後は、Th2細胞とTh9細胞の移入、抗原暴露により引き起こされる症状を、気管支喘息様症状とアレルギー性鼻炎様症状で比較し、Th9細胞がアレルギーに関してどのような役割を果たしているのか検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定では、本年度中に、Th9細胞に分化している細胞をFACS Ariaを用いて高純度に精製して、マイクロアレイによる発現遺伝子の網羅的な解析を実施する予定であった。しかし、実際に研究を開始すると、IL-9産生細胞の測定が難しく、本年度中にマイクロアレイ解析を行うことは困難であった。マイクロアレイ解析を行う上で、精製するIL-9産生細胞の純度が非常に重要なポイントとなることから、サイトカイン濃度や培養日数等を細かく検討するとともに、細胞内サイトカインの測定方法の改良にも努めている。以上のことから、本年度中にマイクロアレイ解析で使用する予定であった予算を次年度に繰り越したが、近日中にマイクロアレイ解析を行い、繰り越した予算を使用する予定である。加えて、各種Th細胞におけるIRF-4やPU.1などの転写因子の発現を確認し、Th9細胞の精製する方法も追加して検討する予定である。 また、アレルギー性鼻炎モデルの樹立とその解析に関しては順調に進行しており、今後は当初の計画通り、IL-9の中和抗体等を使った検討を進める予定である。また、細胞の遊走に関与するケモカイン受容体等がほとんど明らかとなっていないことから、これらの解析も追加して行う。次年度の研究費はこれらの解析を行う上で必要な試薬、抗体、マウス等の購入に使用する予定である。
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