2012 Fiscal Year Research-status Report
OTOF欠損マウスを用いたAuditoryNeuropathyの障害モデルの構築
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24791819
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
Principal Investigator |
難波 一徳 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (60425684)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換, 対象国:米国,フランス |
Research Abstract |
OTOF遺伝子欠損マウスのホモ遺伝子型では、アダルトマウスの蝸牛神経節の神経細胞が減少することが方研究室で明らかとなっている。このマウスは外有毛細胞は正常であるが聴性脳幹の反応がでないAuditory Neuropathy(AN)のモデルである。申請者は、ANの原因遺伝子であるOTOFの遺伝子欠損マウス(ENSMUSG62372)の聴覚神経の形態解析を行っていたところ、蝸牛神経節において神経細胞が明らかに減少しているという重要な事実を世界に先駆けて発見した。 そこで、このANの発症メカニズムを解明すべく、蝸牛神経節の神経細胞の異常な減少はいつから観察されるか特定するため、新生仔および胎生仔に渡ってのOTOF遺伝子欠損マウスと正常マウスの比較解析を行うことを平成24年度の実施計画とし、実験に着手した。 1週齢以上のOTOF遺伝子欠損マウスは、正常マウスと比べて蝸牛神経節細胞の数が50%以上減少し、それ以降は特に大きな減少は観られないことが解った。しかし、大変興味深い現象として生後1日の蝸牛神経細胞の数は、正常と比較したところ蝸牛神経の細胞数の変化は観られなかった。 OTOF遺伝子欠損マウスでは、新生仔の段階で既に有毛細胞からの化学信号が伝わらないことから、発生段階において何らかの発達阻害が生じたことが考えられた。生後1日から7日の間における有毛細胞からのシグナルが蝸牛神経節の細胞数維持あるいは神経細胞への分化に重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最初の実施計画では、OTOF遺伝子欠損マウスの胎生期、および聴覚神経伝導路が完成する新生仔(P1~P7)の蝸牛神経節の形態解析を行うために、蝸牛神経から聴覚伝導路、聴覚中枢領域においてカウンター染色を行い、13種類見つかっている聴覚神経細胞のうちどの種類の神経が減少したか、また減少が開始する時期を特定することであった。 平成24年度では、上記の期日マウスの解析に加え、生後一週間から生後12カ月まで網羅的に、OTOF遺伝子欠損マウスの蝸牛神経細胞の減少の追跡を行った。正確な統計値を得るために、これらのデータのうち60%は3回の再現実験データを得る事ができた。残り40%は解析中である。13種類見つかっている聴覚神経細胞のうちどの種類の神経が減少したか現在解析中であるが、本実験で明らかになった重要事項として、生後1日のOTOF遺伝子欠損マウスの蝸牛神経細胞の数は、正常と変わらないことが明らかとなった。この発見により次年度の大きな研究方向性へと展開できたことからおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
有毛細胞からの求心性シグナルが行かないことが原因で、蝸牛神経前駆細胞が分化出来なかった可能性。あるいは蝸牛神経前駆細胞の分化が不完全に行われたことが考えられる。この仮説を証明するためには、蝸牛神経前駆細胞のマーカーであるNeuroDの発現パターンを、OTOF遺伝子欠損マウスと正常マウスでそれぞれ比較してみる。これにより、ANは、蝸牛神経前駆細胞の分化異常を原因とする仮説のデータが得られると考えられる。 有毛細胞からの求心性シグナルが行かないことが原因となり、神経活動依存的に重要な働きをもつ脳由来神経栄養因子(BDNF; Brain-derived neurotorophic factor)が減少することにより、神経細胞が淘汰された可能性が高いと考えられる。BDNFは神経活動依存的に神経保護、神経突起伸長そしてシナプス可塑性に重要な働きがある。有毛細胞からの刺激がないことに由来するBDNFの発現の減少が、アポトーシスを引き起こすという仮説をまず証明するため、蝸牛神経節のTUNEL染色を行い、細胞のアポトーシスを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、それぞれの時期の多数のOTOFノックアウトマウスの維持、また、BDNF抗体および、TUNEL試薬に加え、ニューロン特異的マーカーβ3-tubulinと遠心性神経線維マーカー遺伝子のperipherinのそれぞれ抗体、蛍光顕微鏡による可視化を行うための二次抗体を用いてそれぞれOTOF遺伝子欠損マウスと正常マウスの免疫組織染色を行い、神経突起の伸長パターンの比較解析を行うため研究費を有効に使用する。 また、本研究の研究成果は、次年度中に海外の国際学会で発表することを予定している。このため旅費および参加費の各経費が掛かることが予想される。 以上、これらの動物および試薬購入のため、および国際学会での発表のため、有効に研究費を使用するものとする。
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