2013 Fiscal Year Research-status Report
Autophagyによる抗原提示を用いた頭頸部癌ワクチン療法の開発
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24791820
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
坂倉 浩一 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (40400741)
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Keywords | オートファジー / 頭頸部扁平上皮癌 / 腫瘍免疫 / 抗原提示 / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
Autophagyとは飢餓・低酸素など細胞ストレス下で、自己の細胞内蛋白や細胞内小器官を消化・分解することによりエネルギーを調達するプロセスのことである。しかし癌細胞におけるautophagyの役割についてはまだ議論が多く、特に抗腫瘍免疫応答との関係についての報告は少ない。 我々は74例の舌扁平上皮癌を対象に、autophagy関連分子であるLC3(autophagyのマーカー)、Beclin-1(発癌やアポトーシスとも関連)、p62/SQSTM1(ユビキチン-プロテアソーム系とも関係)発現と、腫瘍に浸潤する樹状細胞(CD1a+)、T細胞(CD3+)、NK細胞(CD56+)、さらに抗原提示分子であるHLA分子の発現を、免疫組織化学染色にて評価した。またautophagy関連蛋白の発現と臨床病理因子との関連も解析した。 LC3、Beclin-1、p62/SQSTM1は舌癌症例のそれぞれ36.5%、36.5%、32.4%に発現していた。腫瘍のLC3とp62/SQSTM1発現は、浸潤するT細胞の数と有意に相関していた。さらにp62/SQSTM1はHLA class I発現との間に、またBeclin-1はHLA class II発現との間に有意な相関を示した。その一方でLC3、Beclin-1、p62/SQSTM1発現はリンパ管浸潤や血管浸潤などの腫瘍の悪性度や、患者生存率の低下と相関していた。 これらのことから、autophagyは腫瘍の免疫原性や免疫細胞の動員に関係し、抗腫瘍免疫応答に関与している可能性が示唆された。その一方でautophagyは腫瘍の悪性化にも関与していると考えられた。 これらの研究結果を、2014年4月のAmerican Association for Cancer Research Annual Meeting 2014にて、ポスター発表を行った。現在論文執筆中であり、また頭頸部癌や腫瘍免疫に関する英文論文を3編出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では目的1として「頭頸部癌細胞株におけるautophagy関連分子と抗原提示機構の発現解析と抗原特異的免疫応答の誘導」を挙げた。5種の頭頸部扁平上皮癌細胞株を飢餓状態に置き、autophagyが誘導されることを確認、抗原提示分子や共刺激因子、癌抗原などの発現の変化をflow cytometryやSDS-PAGE/western blotで評価した。その結果癌抗原CSPG4の上昇や悪性化に関与するCD44の発現低下などを認めたが、HLA分子やantigen presenting machinery、B7-H3やPD-L1などの共刺激因子やFasLなどのほとんどの免疫系の因子は、一部の細胞株でわずかな変化を認めたのみで、autophagyの導入による大きな発現量の変化を認めないことが分かった。 次に目的2として「頭頸部癌臨床サンプルにおける抗原提示機能と臨床因子との相関の解明と治療モデルの確立」を挙げた。上記「研究実績の概要」に示した通り、74例の舌癌臨床サンプルの免疫染色を行い、さまざまな有意な所見を得ることができ、こちらは論文化の途上である。
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Strategy for Future Research Activity |
頭頸部扁平上皮癌臨床サンプルの免疫組織化学的において、一定の有意な成果を得て学会発表も行ったが、一方で動物実験の必要性を複数の研究者より示唆された。現在hydroxychloroquine投与によるオートファジー阻害マウスと正常マウスにおいて、免疫細胞の浸潤の比較を計画している。 また今までの結果を英語論文化の途上である。投稿先としてはBritish Journal of Cancerを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
¥32,530と比較的少額の次年度使用額が生じた。これはin vitroでの頭頸部癌細胞株を用いた実験にて、autophagyの導入による抗原提示能に関連する分子の発現量変化が有意に認められず、それ以上先のfunctionalな解析に移ることができなかったことと関係していると思われる。抗原提示能のfunctionalな解析に必要なペプチドなどの費用が浮いた一方で、臨床検体の免疫組織化学的解析では、予想より抗体を多く必要としたため、その差額がこのような額となった。 臨床検体におけるautophagy関連分子の発現と免疫系マーカーの染色結果では、多くの有意なデータを得ることができたため、最終年の3年目である次年度には学会発表の旅費が必要となる。またデータの強化のための動物実験を予定しているため、マウスの購入代金としても使用される予定である。
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Research Products
(7 results)