2012 Fiscal Year Research-status Report
網膜刺激型及び視神経刺激型人工視覚が視覚中枢及び反対眼に及ぼす影響についての検討
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24791853
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西田 健太郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (70624229)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 人工視覚 |
Research Abstract |
本研究は、難治性眼疾患である網膜色素変性に対する網膜刺激型(STS)及び視神経刺激型(AV-DONE)人工視覚による治療が、視覚中枢及び反対眼に及ぼす神経賦活化作用を確認し、これを用いた新しい治療法の可能性を検討するものである。平成24年度は、人工網膜の電気刺激による神経細胞の賦活化を検討するために、長期間にわたり通電できる刺激系の確立、及び、視路のそれぞれの機能評価を行うための観測系の確立を目標とし、ほぼ確立することができた。 有色家兎に、STSの刺激電極を眼球(強膜ポケット内)に埋植し、ケーブルを結膜下から結膜円蓋部を通し、頬部の皮下から頭部に通し、頭部のコネクターに接続した。このコネクターはプラスチック製の保護カバーがついており、必要時に電気刺激が行えるようにした。また、視路の機能評価のために、視覚野での誘発電位を測定するために、視覚野にステンレス製のネジ電極を、また十字縫合に参照電極を埋植し、これも頭部のコネクターに接続し、必要時に脳波を測定できるように設置した。埋植直後から6ヶ月後まで、1カ月ごとにSTSの刺激電極からの電気刺激による脳での誘発電位(EEP)、光による脳での誘発電位(VEP)光による網膜での誘発電位(ERG)の測定も同様に行った。この結果、EEP、VEP、ERGのいずれもの波形も観測期間を通して安定して測定することができ、大きな変動もみられなかった。この結果から、家兎に対する長期間にわたりSTSにより通電できる刺激系、及び、視路のそれぞれの機能評価を行うための観測系を確立することができた。これらの実績に関して、現在論文執筆中である。 さらに、従来から確立された視細胞変性モデルとして使用されているラットにおいても、AV-DONEの刺激電極を用いて、同様の刺激系、観測系が確立できないか検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、難治性眼疾患である網膜色素変性に対する網膜刺激型(STS)及び視神経刺激型(AV-DONE)人工視覚による治療が、視覚中枢及び反対眼に及ぼす神経賦活化作用を確認し、そのメカニズムを解明し、人工視覚を用いた新しい治療法の可能性について検討することである。 人工視覚では、実際に埋植して長期間にわたって電気刺激を与えることができるシステムであり、また対象となる網膜色素変性症が、慢性の進行性疾患であるため、より長期間通電を与えることにより、神経の賦活化作用が期待できると考えられる。実際の人工視覚による治療に即して、なおかつ効果が高いと思われる環境で実験を行うためには、長期間にわたり通電できる刺激系の確立、及び、視路のそれぞれの機能評価を行うための観測系の確立を目標が必須であり、それが確立されたことで、平成24年度の目標はおおむね達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、この観測系を用いて、視細胞変性モデルに対する慢性電気刺激による神経賦活化効果の評価を行っていく。視細胞変性モデルとしては、視細胞変性トランスジェニック家兎やRCSラットなどがあり、当初は、視細胞変性トランスジェニック家兎を用いて、神経の賦活化効果を検討する予定としていた。家兎の場合は、個体が大きいため刺激電極の設置や、観測電極の設置が比較的容易であるものの、中枢系の組織切片を作成するとなると、脳が大きいために、組織切片による脳組織の変化の評価などが煩雑になり、困難であることが予想される。その点では、RCSラットの方が、刺激電極の埋植や観測電極の埋植が困難であるものの、脳の組織切片による評価は家兎よりも容易と考えられる。 これらのメリット、デメリットについて、よく検討したうえで、どの視細胞変性モデルを使用するかを決定する。場合によっては、評価項目によっては、動物の種を変えることも念頭に研究を行い、まず、平成25年度では慢性電気刺激による神経賦活化効果の評価を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)視細胞変性が進行した視細胞変性動物を準備し、6群に分ける。すべての群に①で確立した観測系を設置する。そのうち2群は①で確立したSTSの刺激系を、別の2群はAV-DONEの刺激系を眼球に埋植する。 2)刺激系を埋植した2群のうち、1群のみで通電を行い、刺激条件は、それぞれの臨床試験で使用しているBiphasic pulseのcathodic first、duration500μs、インターパルス500μs、電流値500μA(STS)または200μA(AV-DONE)、周波数20Hz(STS)または50Hz(AV-DONE)を用いる。この場合、通電は週に1回とし、通電時間は1または2時間とする。日本光電社製電気刺激制御装置(SEN-7203)とWPI社製刺激発生装置(A-395R)を組み合わせて使用する。これとは別の刺激方法で、より長時間断続して刺激できる装置も検討している。体動による電磁誘導で、微弱電流が流れるものも考えており、この場合は、動物が活動している間は、通電をしていることになる(被検動物の1日の体動はある程度予測でき、通電した電荷量はある程度予測できる)。このような電気発生装置を検索中であり、適正なものが見つけられれば、上記の刺激条件に加えて、行いたいと考えている。 3)埋植後、定期的にEEP(STSでは、神経節細胞から大脳皮質視覚野までの視路の評価。AV-DONEでは、視神経から大脳皮質視覚野までの視路の評価。)、VEP(視細胞から大脳皮質までの視路の評価)及びERG(網膜細胞の機能評価)を埋植後3~6カ月程度測定する。その後、視神経・外側膝状体・上丘および網膜の組織学的検討を行い、電気刺激による神経賦活化作用を評価する。各群を比較することで、電気刺激による影響を評価する。
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