2012 Fiscal Year Research-status Report
オプチニューリンとその緑内障関連変異体の分子機能解析および網膜血流調節の検討
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24791885
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
Principal Investigator |
峯岸 ゆり子 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 分子細胞生物学研究部, 研究員 (20621832)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 正常眼圧緑内障 / 家族性緑内障 / Optineurin / E50K / 緑内障変異 / 分子細胞生物学 |
Research Abstract |
当研究部で有していたオプリニューリンの緑内障原因変異となるE50K変異体を遺伝子導入したトランスジェニックマウス網膜の詳細な病態解析により、網膜血管の脆弱性について見出した。またE50K変異体タンパクの網膜色素への沈着しており、網膜内で細胞死が誘発されていること、また反応性グリオーシスが広範に認められていることを見出した。た。このことから変異体タンパクの凝集性の可能性について、細胞実験系に移行して検討を行ったところ、E50K変異体では、野生型オプチニューリンと比較して細胞内での凝集性、また生化学的検討からは疎水性が増していることが明らかとなった。野生型オプチニューリン、E50K変異体それぞれに特異的に結合するタンパク分子を同定し、野生型オプチニューリンは細胞内分解系に関連する多量体化分画を持つ一方、E50K変異体ではその量体化分画が減少し、一方でTBK1と呼ばれる分子と強い結合性を持つことが明らかとなった。また、E50K変異体タンパクにおける異常な生化学的疎水性は、TBK1阻害剤処理によって解消されうることについて見出した。 E50K変異体と緑内障の関連が報告された2002年以降、E50K変異とその病態発症・機序については長らく不明なままであったが、本研究によりその一端を明らかにすることができたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究機関内達成目標に上げていた1)~4)のうち、1)細胞外放出に対する野生型OPTN およびOPTN 変異の影響、および、3)野生型OPTN およびOPTN 変異体での網膜血流調節因子細胞外放出についての相互検証に関しては、OPTN野生型と比較して、E50K変異では血流調節に関わる因子の細胞外放出量が減少することを細胞実験系で見出している。また2)野生型OPTN およびOPTN 変異体結合分子の同定・比較検討からの機能変化予測に関しても、野生型OPTNとE50Kに特異的に結合するタンパクの同定を行い、野生型OPTNが多量体化するのに対し、E50K変異体では一部の多量体化が障害され、一方で、TBK1と呼ばれるタンパクと非常に強い結合性を持つことを見出した。またこの際、障害されている多量体化は細胞内分解と関連していること、またE50K変異体は野生型OPTNと比較して疎水性が増しており、細胞内で易凝集性であることを見出した。さらにこの易凝集性はTBK1阻害剤処理により解消されうることについても見出している。4)マウス網膜血流におけるOPTN 変異体の影響に関しては、現段階ではマウス網膜血流量を正確に計測する手法が確立されていないため、実際の流量については未解明であるが、一方でE50Kトランスジェニックマウス網膜では、網膜血管の破綻、および漏出と、周囲における反応性グリオーシスを認めており、これらは網膜におけるE50K変異体タンパクの発現が、網膜血管に負の影響をもたらすことを示唆していると考えている。以上の内容に関し、現在までに論文報告し、受理されていることから、現在までの研究達成度としては当初の計画以上に病態機序の解明が進んでいると評価できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討で当初の予定よりもE50K緑内障発症に寄与すると思われる重要な所見が多く得られたため、これまで病態機序の解明に主体を置いてきた検討から、今期はさらにOptineurin-E50K緑内障原因変異体の、異常生化学的動態(疎水化)の解消方法について治療の可能性を踏まえた研究推進に専心したい。これまでの研究結果を踏まえ、当研究部では既にE50K緑内障患者よりインフォームドコンセントのもと得られた採血検体から疾患特異的iPS細胞を樹立しており、現在はこれらiPS細胞から、E50K緑内障細胞モデル系の確立について、緑内障で障害される網膜細胞種の代表である、視神経節細胞誘導系を用いた検討を行うべく、その手技を習得中である。同時に、汎用培養細胞系においてはE50K変異体の異常生化学的動態の高効率かつ、安全性が高いと思われる解消法について、上記で用いたTBK1阻害剤のほか、TBK1の部分ペプチドの導入や、凝集性を解消する効果を持つ浸透圧調節物質を初め、凝集阻害化合物についての探索も行いたい。また、これらの実験から得られる知見をもとに、実際の治療効果についてin-vivoでの検討を行うため、E50Kノックインマウスの作製を神経科学では特に時間的にも遺伝背景的にも問題視されることが多い戻し交雑の必要がないZFNを用いた作成系によって試みたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
iPS分化誘導系には非常に高額な細胞培養費用が掛かるため、多くの研究費用はこれらの細胞培養添加物代として利用されることが予測される。またノックインマウスの作製に関しても同様に、1トライアルあたり80万円という非常に高額な金額がかかるため、折々の研究の進捗状況や、成果発表費用などとのバランスと照らし合わせながら、順次検討する必要があると考えている。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] Distinct protein complex formation evokes insolubility of OPTN and mislocalization in iPSC-derived neural cells from E50K-POAG patients
Author(s)
Minegishi, Y., Iejima, D., Kobayashi, H., Chi1., ZL., Kawase, K., Yamamoto, T., Seki, T., Yuasa, S., Fukuda, K., Iwata, T
Organizer
ARVO2013 Annual Meeting
Place of Presentation
シアトル、アメリカ
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