2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24791904
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高須 啓之 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (40566022)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 人工血管 / 小口径血管 / 脱細胞化組織 |
Research Abstract |
現在までわれわれの研究グループでは高張塩溶液による組織脱細胞化法を開発し、これを血管に応用することで極めて高い開存率を示す小口径血管の作成に成功した。本脱細胞化血管を実験動物に移植したところ、血管内皮細胞のみならず血管平滑筋細胞が中膜の層を形成することが明らかとなった。また開存は移植後最長14ヶ月の個体でも認められた。この平滑筋層の生理機能をワイヤーミオグラフシステムで検証したところ、移植後12ヶ月では、ニトロプルシドナトリウムに対しては拡張作用を、ノルエピネフリンに対しては収縮作用が認められた。 次に、神経の侵入について検討を行った。移植後12ヶ月の時点での移植血管を採取し、一部はワイヤーミオグラフシステムによる生理機能の評価を、一部はホルマリン固定を行い、免疫組織学的に評価を行った。ワイヤーミオグラフシステムの結果は前述の通りであるが、組織学的評価では、あらたに内皮細胞の層(内膜)に加え、平滑筋の層(中膜)が形成されていた。この中膜は内弾性板よりも内腔側に位置していた。 さらに、この組織標本に対して、抗neurofilament抗体を反応させた所、外膜側に主に軸索の分布を認め、一部、平滑筋内にも軸索の分布を認めた。 以上より、ラットにおいては、脱細胞化血管を移植する事で高い、かつ長期的な開存が認められる事に加え、内皮細胞および平滑筋細胞の定着が認められた。くわえて血管の収縮・拡張作用をもつ化学物質に対してそれぞれ生理的反応を示し、また、血管支配神経の浸潤を認めた。これらを纏めると、われわれが開発した脱細胞化神経は動的なスキャフォールドとしての役割も果たす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脱細胞化血管への神経の浸潤の可能性が示唆された事はおおむね、計画通りである。一方でトレーサー法による神経核の同定には至っておらず、来年度の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
われわれが開発した方法によりラット腹部大動脈の脱細胞化を行う。これを別個体のラットに移植し、3ヶ月の経過の後、①移植部位よりも中枢、②移植部位、③移植部位よりも末梢のそれぞれの外膜に神経トレーサー物質であるfluoro-Rubyを注入する。交感神経節を採取し、逆行性標識されたニューロンの有無、分布、およびその数の評価を行う。対照群として、移植操作を行っていないラットの腹部大動脈外膜にトレーサーを注入する。遠位にはfluoro-Rubyを、近位にはfluoro-Emeraldを注入する。1週間の生存期間をおいた後、交感神経節を採取し、蛍光顕微鏡で観察する。これにより遠位側を支配している交感神経ニューロンは赤に、近位側は緑に標識されることが見込まれるが、遠位に向かう線維が近位を通過している場合は遠位は緑のトレーサーも取り込むため、重ね合わせにより黄色の蛍光を発すると考えられる。脱細胞化血管を移植後、3ヶ月の時点でiと同様にトレーサーの注入/評価を行う。ただし、蛍光は顕微鏡の性質上、2色が望ましい(青色は蛍光としては弱く、軸索の染色には適さない)ため、上記①/②、①/③、②/③の組み合わせでそれぞれ観察を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物の購入/維持におよそ月々50,000円程度を要する。また実験補助員の雇用も引き続き行いたい。抗体やトレーサーといった消耗品の購入の計上を要する。 国際学会へ出席し、今後の報告への準備を行いたい。
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