2012 Fiscal Year Research-status Report
生体内環境を模倣した革新的三次元培養技術に基づく軟骨幹/前駆細胞の培養法の検証
Project/Area Number |
24791911
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
矢吹 雄一郎 横浜市立大学, 附属病院, 指導診療医 (30610357)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | RWV / 自家血清 / 軟骨幹細胞 / 軟骨前駆細胞 |
Research Abstract |
当該年度に手術施行した小耳症症例は8例であった。そのうち7例において同意のもと、残存耳介軟骨と自己血液の供与を受けた。血液からはヘマトクリットを差し引いた量の血清を問題なく生成することが可能であった。術前の採血におけるヘモグロビン値と体重などを参考に採血量を決定したが、採血後および術後に貧血を認めた症例はなかった。 自家血清含有培地とFBS含有培地でそれぞれ軟骨膜由来細胞の拡大培養を行った。各群ともに良好に細胞増殖を得た。MTTアッセイで増殖曲線を作成し、細胞倍加時間を算出したところ、10%自家血清含有培地においては約70時間、10%FBS含有培地においては約115時間であった。各群ともに血清含有濃度が低下するにつれ、細胞倍加時間は延長した。 また、各血清を用いて拡大培養した細胞群を軟骨分化誘導した。培養上清に含まれる可用性グリコサミノグリカンを測定したところ、FBSを用いた群においては軟骨分化誘導で含有蛋白量の上昇を認めた。一方自家血清を用いた群においては分化誘導で含有蛋白量の上昇を認めたが、分化誘導前より基質産生を行なっている結果となった。RT-PCRでアグリカン遺伝子の発現解析を行った。各群ともに、軟骨分化誘導によって遺伝子発現量が2倍に上昇した。 RWVを用いた培養法における組織再構築能の評価として、まずはコントロールとして重症免疫不全マウスにおいて皮下移植実験を行った。HE染色、アルシアンブルー染色、エラスチカワンギーソン染色、サフラニンO染色を行い、両群ともに再構築された組織が弾性軟骨様であることがわかった。 これらの結果は第21回日本形成外科学会基礎学術集会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
われわれは、耳介軟骨・軟骨膜の供与を受けるにあたり、小耳症の手術の際に切除し破棄する残存耳介軟骨を用いている。そのため、小耳症の手術の適齢期である10歳前後の症例から採血を行なっている。 施行した実験において、含有血清濃度の検討を行なっている。そこで、含有濃度を5%以下にすると細胞の増殖効率は極めて低下し、培養期間が長期化するデメリットが生じうることが判明した。そのため、われわれは10%の含有濃度の培地を使用しているが、それにあたり、必要血清量が増加してしまった。その一方で対象が小児であるため、採血量を増やすことは困難であった。そのため、拡大培養に制限を設けなければならず、様々な条件で検証が困難であった。 その一方で、増殖能、分化能に関して自家血清使用群とFBS使用群で比較検討が行われた。自家血清群はFBS使用群より高い増殖能を認めたが、その一方で分解能に違いを認めた。 また、RWVを用いた組織再構築能を評価するにあたって、ポジティブコントロールとしての皮下移植実験は施行できたと考える。全体としては、やや遅れているとおもわれるが、推進性を持って今後の研究を行なっていく。
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Strategy for Future Research Activity |
スピード感を持って研究を推進するためには、各種条件を振り、同様な操作の実験は同時並行で行うことが重要と考える。本研究においては、自家血清の総量を確保すればそれが可能になると考える。われわれが対象としている小耳症の手術は2期的に行われる。つまり、2回目の手術の際にも採血を行い、血清を作成すれば、自家血清の総量を確保できる。2回目の手術は初回から3-6ヶ月後に行われる。そして、本年度の症例においては、2回目の手術の際に追加採血行い、血清を確保している。 また、すでに適正血清濃度は検討している。その結果を踏まえ、血清濃度の条件は固定し、その他の条件を検討していく予定としている。 小耳症の手術は初回のものは夏季に行われる。検体の処理等で繁忙な時期は補助員などを採用し、迅速に行うことで、解析の方にeffortを集中したい。 なお、本学臓器再生医学講座の谷口らに研究協力を得ている。2013年度よりRWVの経験が豊富な植村も客員教授として参学頂いている。諸講師の的確な研究統括補助を受け、効率的に研究を推進していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
11.に記載した通り、2012年度においては使用可能な自家血清量が不十分であった。そのため、予定していた実験計画の一部が十分に思考できず、計上した経費の一部を繰り越す結果となった。 本年度は6例程度の症例を予定している。検体の多くはRWVを用いた三次元培養法を実際に施行し、生体外での組織再構築を解析する。FBS使用群と比較することにより、自家血清の軟骨幹/前駆細胞への効果を観察する。再構築された組織の組織学的解析はもちろん、重量や力学的特性を解析する。また、免疫組織学的な評価を行い、軟骨膜組織の構築とそれにおける幹/前駆細胞の局在を評価したい。 これらの実験結果は、原著論文として国際学会誌に投稿を計画している。 なお、現在われられは本学附属病院内に設置されている細胞調整室(CPC)を利用した新規細胞治療法の開発とその臨床研究を目標としている。軟骨幹/前駆細胞に対する自家血清の有効性やその効果に関する基礎データは、本細胞を臨床研究や臨床応用する際に自家血清を選択するかどうかの大きな判断材料になりうる。 また、これらの研究成果は日本形成外科学会基礎学術集会や国際学会誌への投稿を計画している。前述の実験に関連する消耗品のみならず、研究結果の総合的なデータ整理や、研究成果を報告する各手段への必要経費を計上する計画である。
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Research Products
(1 results)