2013 Fiscal Year Research-status Report
生体内環境を模倣した革新的三次元培養技術に基づく軟骨幹/前駆細胞の培養法の検証
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24791911
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
矢吹 雄一郎 横浜市立大学, 附属病院, 指導診療医 (30610357)
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Keywords | RWV / 自家血清 / 軟骨幹細胞 / 軟骨前駆細胞 |
Research Abstract |
前年度は、自家血清の軟骨幹/前駆細胞への作用を解析した。つまり、自家血清の調製法を確立し、自家血清を用いた軟骨膜由来細胞の培養法を検証した。in vitroにおいて軟骨膜由来細胞は自家血清を用いた培養法で良好に増殖し、その後十分に軟骨分化誘導することが可能であった。In vivoにおいては重症免疫不全マウスへの皮下移植実験を施行し、良好な組織再構築能を確認した。 当該年度においては、①手術を施行した小耳症症例(4名)において自家血清を調整するとともに、切除した余剰軟骨組織から軟骨膜由来細胞を抽出した。そして、その一部の検体において②自家血清とRWVを用いた三次元培養での軟骨幹/前駆細胞の組織再構築能の評価を行った。また、③本学付属病院内セルプロセシングセンター(CPC)の利用を想定したプロトコルの文書化を行った。 ②においては、まず軟骨膜由来細胞におけるRWVを用いた至適培養条件を検証し、添加するサイトカインなどを決定した。その後に、十分に自家血清が得られた症例(n=1)において、自家血清含有培地を調整し、軟骨膜由来細胞を拡大培養した。それらをRWV内へ挿入し8週の期間において三次元培養したところ、組織の再構築を認めた。再構築された組織は、自家血清含有培地使用群とFBS含有培地使用群とを比較検討したところ、後者の方が大きさ、形状ともに安定的であった。組織学的に検証したところ、いずれの群においても軟骨様組織の再構築を認めたが、軟骨組織としては未熟なものであった。 続いて、前述に関する培養法において③本学付属病院内に設置されたCPCとその内部に保有するアイソレーターを用いた臨床研究を想定しプロトコルの文書化を行った。幹細胞を用いた臨床研究においては、安定的かつ安全な培養法が必要となる。そのため安全性の高い手技の文書化と手順の標準化を目的として、工程毎の標準作業手順書を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究協力者の助言、助力のもと軟骨膜由来細胞においてRWVを用いた培養系の至適条件を検証したところ、想定されていたより多くの細胞が必要であることが判明した。つまり、拡大培養に要する期間が長期化し、それに伴い必然的に必要自家血清量が想定よりかなり多量になった。 この問題に対し、採血回数を増やすことで自家血清量を確保するよう対応した。具体的には、われわれが検体の供与を受けている対象患者は小耳症の症例で、そしてその疾患には2期的な手術が必要となる。そのため、2期的な手術を施行する際にも自己血液の採血を行った。しかし、それにもかかわらず、前述の条件を満たす必要血清量を確保可能な症例は1例のみであり、加えて、その対象となる症例の手術延期が重なり、研究施行期間を遅延せざるを得なかった。 その一方で、n=1ではあるものの自家血清とRWVを用いて培養法で得られた再構築組織は、検証群、コントロール群それぞれtriplicateで得られている。部分的ではあるものの、バラつきを含めて再構築組織の定性/定量的解析が可能であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、軟骨幹/前駆細胞において自家血清と三次元培養法を駆使し、大型で成熟した培養再生軟骨を生体外で創出することであった。しかし、n=1ではあるもの、施行した実験系においては想定とは異なる結果であった。そのため、症例数を重ね実験結果のバラつきなどを証明することも重要であると考えるが、それよりは今回の結果の成因を探索することがより重要であると考える。RWVには自家血清含有培地使用群、FBS含有培地使用群ともに同量の細胞数を挿入している。それにも関わらず、結果に差異があったことを考察すると挿入した細胞の特性に差異があった可能性が高い。つまり、自家血清の軟骨膜由来細胞に対する作用を再度詳細に検討することが、本研究の本質であり、今後の研究の推進につながると考える。具体的には、PCRにおいて各種mRNAの発現を解析し、自家血清含有培地使用群とFBS含有培地使用群とを比較検討していきたい。 しかし、RWVを用いた培養期間内における細胞、組織の経時的変化や血清含有サイトカインの定量的評価など、必要な解決課題は山積している。これらの問題点を含めて本研究成果は日本形成外科学会基礎学術集会における報告や国際学会誌への投稿を計画していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前述【現在までの達成度】に記載したが、以下のとおりである。 当該年度においては、研究協力者の助言、助力のもと軟骨膜由来細胞においてRWVを用いた培養系の至適条件を検証した。その結果、想定されていたより多くの培養細胞が必要であることが判明し、それに伴い必然的に必要自家血清量が想定よりかなり多量になった。 その問題に対し、採血回数を増やすことで自家血清量を確保するよう対応した。具体的には、われわれが検体の供与を受けている対象患者は小耳症の症例で、そしてその疾患には2期的な手術が必要となる。そのため、2期的な手術を施行する際にも自己血液の採血を行った。しかし、それにもかかわらず、前述の条件を満たす必要血清量を確保可能な症例は1例のみであり、加えて、その対象となる症例の手術延期が重なり、研究施行期間を遅延せざるを得なかった。 研究施行期間の遅延に伴い、再構築された軟骨様組織の十分な組織学的解析が当該年度において施行できていない。具体的には、特殊染色やI型/II型コラーゲンなどに対する免疫組織学的な評価を行い、高次的な解析を行う。また、【今後の研究の推進方策】に記載した通りであるが、当該年度の研究においては想定されていたものとは異なる結果を得ている。そのため、その成因の詳細な追加検証を施行する。具体的には、自家血清含有培地使用群における各種mRNA発現を定量的に解析していきたい。 また、本研究においては様々な解決課題を残すと予想されるが、それらも含めて学会での報告や場合によっては英文学会誌への報告を計画していく。 次年度使用額はこれらの研究、報告に関する必要経費として計上する計画である。
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