2013 Fiscal Year Research-status Report
発生学的由来による脂肪組織幹細胞の多様性の解明とそれに基づく再生医療応用の探索
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24791913
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
素輪 善弘 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80468264)
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Keywords | 幹細胞 / 脂肪 / 脂肪由来幹細胞 / 神経堤 |
Research Abstract |
脂肪組織間質細胞(Adipose stromal cells: ASCs)には多様な幹細胞や前駆細胞が含まれていると考えられる。またこれらの発生学的由来や細胞特性の差異についてもよくわかっていない。研究代表者らは発生学的由来によるADSCsの多様性の解明を行うことで、効率的かつ安全なASCの再生医療応用法の研究を企図している。われわれは前年度にCre/loxPによる細胞運命追跡法を用いてマウス成体(P0-Cre reporter mouse) から採取したASCsの一部が神経堤に由来し、高い脂肪分化能を示す一方で骨・軟骨には分化しにくいことを明らかにした。また神経やグリア系細胞(シュワン細胞など)に分化しなかった。よってこれらの細胞群は神経堤幹細胞とはまた異なる細胞集団であり、脂肪組織の成長、ターンオーバーに関わっている可能性も考えられた。本年度、異なる神経堤由来マーカーを有するWnt1-Cre/Floxed-reporterマウス用いてこれらの確証をさらに深めるとともに、神経堤由来のADSCについて、分化能力を詳細に検討した。またこれらの細胞群のin vivoにおける局在についても検討した。結果、Wnt1マーカーにおいても神経堤に由来するASCsが確認され、その細胞特性や分化能についてP0-Creに比較して大きな矛盾は生じなかった。またこれらの神経堤由来脂肪前駆細胞(GFP陽性細胞)は脂肪間質内の血管構造に沿って存在し、S100やp75NTR陽性で、血管内皮・壁・周細胞マーカーは陰性であった。脂肪間質の血管周囲に白色脂肪前駆細胞に相当する神経堤由来の特異な細胞集団が存在することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成獣P0-Creと Wnt1-Cre/Floxed-reporterマウスの頭部と体幹部の皮下脂肪よりASCsを採取・培養し、GFP陽性細胞とGFP陰性細胞にFACSにて分離した後、間葉系幹細胞・脂肪前駆細胞マーカー発現及び細胞増殖能、脂肪・骨・軟骨分化能について両者の比較検討を行った。具体的には、神経堤由来ADSCとその他のADSCの脂肪分化能を定性的にはoil red O染色、定量的にはperilipin染色陽性率の比較検討を行う。またpreadipocyte markerやmature adipocyte markerの発現比較を行う。骨・軟骨分化についてはアリザリンredおよびAlcian blue染色で定性・RTPCRで定量比較を行った。さらに、これらのマウス脂肪組織を採取し、これらGFP細胞の局在や特性について組織学的検討を行った。Wnt1マーカーにおいても神経堤に由来するASCsが確認され、その細胞特性や分化能についてP0-Creに比較して大きな矛盾は生じなかった。またこれらの神経堤由来脂肪前駆細胞(GFP陽性細胞)は脂肪間質内の血管構造に沿って存在し、S100やp75NTR陽性で、血管内皮・壁・周細胞マーカーは陰性であった。現在、これらのモデルマウスの成長過程による変化についても検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
生体内局在と脂肪組織形成への寄与を調査するために、それぞれの由来追跡モデルマウスの鼠径部及び頭部皮下脂肪組織より標本を摘出し、GFP陽性細胞の局在、形態、免疫形質について、さらに詳細な組織学的検討を進める。 それぞれの細胞集団のin vivoにおける機能解析として、検討している神経堤由来のADSC細胞群が医療再生応用の観点から実際生体内でどのような特性や機能を保持しているかについて、従来より一般に利用され効果が広く確認されている遊離脂肪移植モデルを用いてin vivoにおける動態及び機能評価を行う。それぞれ由来の異なるGFP陽性細胞群を注入付加した遊離鼠径皮下脂肪組織を頭部皮下に移植し、術後1,2,4,12,24週で移植組織を採取する。それぞれの移植付加細胞群の術後動態を組織学的に追跡するとともに、生着率・脂肪組織新生については組織重量を指標に、脂肪分化・血管新生については免疫組織学的解析を用いて非分離ADSC及びPBSを注入したものを対照群とし比較する。また神経堤由来ADSCがより効率的にグリア系細胞あるいはニューロンに分化できた場合はマウス坐骨神経欠損モデルに移植を行い、生体における移植後の動態及び末梢神経再生への寄与を検討する。われわれは、マウス坐骨神経欠損モデルにおけるADSC移植による末梢神経再生効果についてはすでに検討を加えており、これらのモデル作成や評価法については確立されている。
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