2012 Fiscal Year Research-status Report
微小環境からみた遅発性リンパ節転移巣形成機構の解明
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24791960
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宇佐美 悠 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (80444579)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 口腔扁平上皮癌 / マクロファージ / 癌微小環境 / トランスジェニックマウス / 化学発癌 |
Research Abstract |
本研究は、癌微小環境、すなわち癌細胞と間質細胞による細胞間相互作用の観点から、口腔扁平上皮癌がリンパ節転移巣形成に至る機構を解明することを目的とする。本研究の特色は、化学発癌により得られた初代マウス扁平上皮癌細胞を同種マウスに移植し、抗腫瘍免疫機構が保たれていると推測される生体環境での、リンパ節転移巣形成の過程を観察・解析することであり、移植した癌細胞の同定が容易である必要がある。 そこで、平成24年度は、化学発癌による初代マウス扁平上皮癌細胞の獲得に先立ち、上皮細胞特異的に蛍光タンパクを発現させるため、サイトケラチン14プロモーターの下流にGFPを挿入したサイトケラチン14-GFPトランスジェニックマウス(K14GFPマウス)の作製を行い、作製されたマウス口腔扁平上皮にGFPタンパクが発現していることを確認した。 また、ヒト口腔扁平上皮癌組織を用いた解析では、癌微小環境において腫瘍進展にかかわるとされるマクロファージ(腫瘍関連マクロファージ)が、口腔扁平上皮癌の浸潤先端において、間質組織に多く存在するのみならず、浸潤癌胞巣内に浸潤していることを明らかにした。ヒト口腔扁平上皮癌細胞株を用いた解析では、癌細胞とマクロファージの細胞接着が癌細胞のマトリックスメタロプロテアーゼ産生を活性化していることを明らかにした。 平成24年度の結果より、リンパ節転移巣形成過程においても、癌細胞-マクロファージ間の相互作用による癌細胞の浸潤形質の獲得が関与していると考えられた。今後、K14GFPマウスより得られた初代GFP陽性癌細胞と癌移植巣およびリンパ節転移巣での野生型同種マウスマクロファージとの相互作用を解析する準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では自然発症扁平上皮癌細胞株を用い、GFP蛍光タンパクで標識の後、マウスへの移植実験を行う予定であった。しかしながら、細胞株化された癌細胞を使用することにより、生体での担癌状態とは、抗腫瘍免疫等を含め、大きく異なる生体環境下にて実験が行われてします可能性が考えられた。 そこで、平成24年度は、上皮細胞特異的に蛍光タンパクを発現するよう、サイトケラチン14プロモーターの下流にGFPを挿入したトランスジェニックマウス(K14GFPマウス)の作製を行った。得られたK14GFPマウスでのGFP発現の確認と今後の研究に最適なマウスの選別に時間を要したため、化学発癌実験の実施がやや遅れた。今後、化学発癌実験の実施により、GFP発現癌細胞の初代培養からの移植実験が実施可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は発癌物質である、4-nitroquinoline N-oxide (4NQO)をK14GFPマウスの舌に塗布し、上皮過形成、異形成、扁平上皮癌と連続する病変から組織標本を作製し、連続的に形成される口腔扁平上皮癌の組織学的解析を行い、浸潤癌ではリンパ節転移巣の解析を、特に微小浸潤巣の検出を行う。 次に浸潤癌よりGFPを指標として癌細胞のみを選出し、繰り返し移植による高転移株および低転移株の獲得を行い、得られた両株に関して網羅的遺伝子解析法により、両細胞に特異的な遺伝子発現あるいは発現遺伝子の機能集中を解析する。 リンパ節転移における癌細胞の機能解析に関しては、同種マウスリンパ節内の細胞群と癌細胞を共培養下にて解析し、癌細胞の生存、増殖にかかわる細胞群を抽出する。 マウスモデルより得られた解析結果は、最終的にヒト口腔癌切除検体を用いて、免疫組織学的に解析し、妥当性を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
トランスジェニックマウスの交配、維持および動物実験に消耗品費より20万円、培養細胞の維持等に消耗品費より30万円を使用する。また、網羅的遺伝子解析(外部受託)および本研究において随時使用する試薬・薬品に関しては消耗品費より100万円を使用する予定である。解析後得られた成果をもとに論文投稿を行うため、投稿費、別刷代などに消耗品費より20万円を使用する予定である。 また、本研究において得られた結果は、第72回日本癌学会学術総会(2013年10月横浜)、第102回日本病理学会総会(2013年6月札幌)および、関連する諸学会にて発表予定であり、研究成果発表とともに他の研究者と意見の交換を行うために国内旅費として20万円を充てる。
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Research Products
(3 results)