2013 Fiscal Year Annual Research Report
微小環境からみた遅発性リンパ節転移巣形成機構の解明
Project/Area Number |
24791960
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宇佐美 悠 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (80444579)
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Keywords | 口腔癌 / マクロファージ / 癌微小環境 / 化学発癌 |
Research Abstract |
口腔癌は、前癌病変から浸潤癌へと進行し、リンパ節転移を経て全身に広がる。本研究は、癌細胞と間質細胞による細胞間相互作用の観点から、口腔癌細胞が、遅発性リンパ節転移巣の形成に至る機構を解明することを目的としている。本研究の特色は、化学発癌により得られたマウス癌細胞を用い、ヒト口腔癌に類似した生体環境でリンパ節転移巣形成機構の解明を試みることである。 本研究ではまず、口腔前癌病変から浸潤癌において異常細胞が緑色蛍光タンパク(GFP)を発現する遺伝子改変マウスを作製し、化学発癌を試みたところ、ヒト前癌病変に類似した前癌病変から、浸潤癌にいたるGFP発現病変の獲得が可能となった。 化学発癌モデルにより前癌病変から浸潤癌の獲得が可能となったこと、前癌病変から浸潤癌に至る過程における癌細胞と間質細胞の相互作用に不明な点が多いことから、研究対象を浸潤癌に至る病変へと変更し、癌の浸潤に重要とされる間質細胞であるマクロファージに注目した。 ヒト組織切片を用いてマクロファージの出現を解析したところ、前癌病変から浸潤癌にかけてマクロファージが増加し、病変の進行により、癌細胞とマクロファージの直接接触がみられること、また、浸潤癌における解析では、これらの細胞間接触が癌の浸潤とリンパ節転移に関わることが明らかとなった。また、ヒト癌細胞株を用いた解析で、癌細胞とマクロファージの接触により、浸潤・転移に関与する基質分解酵素が増加することが明らかとなった。 以上の結果より、口腔前癌病変から深い浸潤やリンパ節転移を有する進行癌に至る過程において癌細胞と癌間質細胞であるマクロファージの相互作用が重要な役割を果たしていると考えられ、本研究期間中に作成した遺伝子改変マウス化学発癌モデルにより、これらの現象を詳細に解析することが可能となった。
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