2012 Fiscal Year Research-status Report
味蕾内ネットワーク機構に関与する軸索誘導分子の機能解明
Project/Area Number |
24791966
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
片岡 真司 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (80364149)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 味蕾 / 軸索誘導分子 / 神経ネットワーク |
Research Abstract |
味覚の受容器である味蕾は主に舌上に存在する。唾液と混じった味物質は味蕾細胞を経て味蕾内に分布する神経線維へと味覚情報を伝達する。味蕾細胞は上皮細胞に由来し、物理的な刺激や熱により損傷しやすく10日程度の寿命で死滅して、基底細胞から分化してくる新しい味蕾細胞に置き換わっていく。そのため成熟した味蕾において味蕾細胞―神経間で接続の切り替えが常に行われるが、認知する味覚受容に特に変調がみられない。味覚を伝達する神経が、標的の味蕾細胞に正確に誘導され接続することで適切に味覚情報を伝達すると考えられる。味蕾でどのように神経ネットワーク機構が維持され機能しているのかという基本的な問題は未解明である。このネットワーク機構を明らかにしていく手がかりとしてNetrin-1をはじめとした軸索誘導分子群(Netrin、Semaphorin、Ephrin およびSlit)に着目した。軸索誘導は中枢神経系の発生においてよく研究が行われているが、末梢神経系、さらに発生期でなく成体における研究は少ない。 マウスの発生期(生後5日目)および成体におけるNetrin-1の発現をRT-PCRで調べたところ、その発現が両方の時期において確認できた。次に抗Netrin-1抗体を用いて免疫組織化学で検索した。生後直後の味蕾がまだ発生していない時期においてNetrin-1は舌上皮に特異的な染色像を示さなかったが、味蕾が発生してくる生後5日目では味蕾にNetrin-1の染色像がみられた。成体においても生後5日目と同様の染色像がみられた。Netrin-1受容体に関しては軸索誘引作用を持つとされているDCCが味蕾において発現していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Netrin-1に関してはその受容体であるDCCを含めて味蕾においての発現データがそろいつつあるが、このNetrin-1発現が味蕾での軸索誘導に関与するという機能的な解析がまだ得られていない。発現に関するデータでNetrin1とDCCが、両者ともに味蕾細胞に発現することから、Netrin-1が軸索誘導ではなく、別のNetrin-1の機能として知られているアポトーシスに関与する方向性も検討し、実験をおこなっている。また他の軸索誘導分子群(Semaphorin、Ephrin およびSlit)に関してもRT-PCRで解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
Netrin-1とDCCによるアポトーシス誘導能を検索するために、味蕾に味神経切断によるアポトーシスを生じさせ、TUNEL法およびssDNA抗体をもちいた実験をおこないNetrin-1とDCCとの関与について調べる。他の軸索誘導分子(Semaphorin、Ephrin およびSlit)に関してもRT-PCRで解析をおこなう。ここで発現がみられた軸索誘導分子については、順次、免疫組織化学およびin situ hybridizationをおこない味蕾内での軸索誘導分子の発現データを得ていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Netrin-1をはじめとした軸索誘導分子群の蛍光免疫組織化学を多数行う予定であり、それら抗体を購入するため組織学的研究用試薬が大きな割合を占める。Netrin1以外の軸索誘導分子については最新の知見をもとに、Semaphorin3A、3Fなど上皮組織で発現が報告されている分子を優先して実験を行っていく。味蕾にアポトーシスを強制的におこすための舌咽神経切断術のために実体顕微鏡を購入する予定である。
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