2013 Fiscal Year Research-status Report
味蕾内ネットワーク機構に関与する軸索誘導分子の機能解明
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24791966
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
片岡 真司 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (80364149)
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Keywords | 味蕾 / 軸索誘導分子 / ネトリン1 / in situ hybridization / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
味覚情報伝達の基盤となる味蕾内ネットワーク機構は、常に構成する細胞の置き換え(10日程度でおこる)とそれにともなう味神経への軸索誘導により形成、維持されるが、この分子機構は未解明である。本研究の目的は、味覚情報を適切に味蕾細胞から中枢へ伝達するための味蕾内の情報ネットワーク機構を神経系でよく研究されている軸索誘導分子を手掛かりにしらべるものである。 そのため味蕾内における軸索誘導分子の発現を検索し、その後これら分子が担うと推測される機能を検討する。この軸索誘導分子として脳など神経系でよく研究が進展しているネトリン1の発現分布やその受容体について解析をおこなった。ネトリン1に関しては味蕾発生とともに味蕾細胞に発現することがわかった。ネトリン1の研究は主に神経の発生における研究が行われており、成体についてのものは少ない。味蕾細胞と味神経の切断、接続が頻繁に行われている成体の味蕾でも味蕾細胞に発現をしていることが明らかとなった。味蕾の細胞型では甘味、苦味、うま味の受容体を持つ2型細胞に発現することが二重免疫組織の結果より得られた。神経系おいてネトリン1による軸索誘導はその受容体であるDCCとUNC5Hのそれぞれによる軸索誘引作用、軸索反発作用の制御を受ける。そのためこれら受容体の発現、発現様式についても解析を行った。神経系で一般的にみられる様式であるとDCCやUNC5Hは味蕾内の神経線維に分布していると想定されたが、免疫組織化学で味蕾内への発現はみとめられるものの神経線維に特定されるような所見ではなくさらに詳細に解析する必要性がある。現段階においてもDCCが味蕾細胞に発現する可能性を示唆する所見もみられるため、味蕾内のネトリン1は軸索誘導機能をもつのではなく、消化管の粘膜上皮で報告されているようなアポトーシス機能をもつ可能性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ネトリン1受容体であるDCCおよびUNC5Hの免疫組織的解析でその発現が味蕾のどの領域であるかを特定することが味蕾内での軸索誘導分子であるネトリン1の機能を知るために必要であるが、まだ明確な発現様式を特定できていない。染色像の明瞭化のために組織の固定方法や抗原賦活化を用いての検定に時間がかかっている。 また同じ分野内の教員が退職および他大学への異動するなどで、教育面の引継ぎや担当部分が予定よりも増加し研究時間が十分に確保されていないことも理由の一つである。
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Strategy for Future Research Activity |
ネトリン1の味蕾内での機能としては当初、味蕾内への軸索誘導の面に着目していたが、DCCなど受容体が味蕾細胞に発現するという可能性もでてきた。腸粘膜上皮のようなところでみられるネトリン1の軸索誘導以外の機能であるアポトーシスという機能も想定しTUNEL法やssDNA (single-stranded DNA) 抗体を用いた手法で研究をおこなっていく。またネトリン1以外の軸索誘導分子についても味蕾内での発現を検索していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究課題の中心となる軸索誘導分子の味蕾での発現はRT-PCRやin situ hybridizationを用いた手法では結果が得られつつあるが、発現細胞や発現様式を特定する免疫組織化学の結果が十分にまだ得られていない。各種固定法や抗原賦活化を用いての免疫組織化学の検定に時間がかかっている。また同じ研究室の教員が退職および大学への異動するなどで教育面の引継ぎや担当が予定よりも増加しているため。 引き続き、軸索誘導分子群の抗体や味蕾関連抗体の購入、動物の購入、組織化学関連、分子生物学関連の試薬の購入および学会参加のための旅費、論文作成のための費用を使用用途とする予定である。
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