2013 Fiscal Year Research-status Report
歯原性腫瘍の発生・局所侵襲性獲得メカニズムにおけるerbBおよびAIDの関与
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24791968
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
宮崎 裕司 明海大学, 歯学部, 助教 (40526547)
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Keywords | 歯原性腫瘍 / 局所侵襲 / AID / erbB / ameloblastoma |
Research Abstract |
九州大学のKiyoshimaらが、非歯原性の角化細胞にthymosin beta4(Tb4)を導入することで歯原性上皮様細胞を作り出せることを報告したことを受け(Kiyoshima et al, Stem Cell Res 2014)、正常歯肉上皮前駆細胞(HGEP)にTb4を導入後、cytokeratin 14や19、amelogeninの発現を免疫染色、western blotで確認するとともに、石灰化誘導実験を行い、歯原性上皮様細胞HGEP-Tb4を作成した。この細胞にAID、erbB2、erbB3の発現ベクターを単独あるいは組み合わせて導入し、まずMTTアッセイや顕微鏡下での観察を通して細胞増殖への影響を調べたところ、erbB2単独の強制発現では増殖促進を示すが、AID単独あるいはerbB3とAIDの組み合わせでは増殖抑制作用がもたらされることが示された。続いてスクラッチアッセイ法およびRadius細胞遊走アッセイにて細胞移動への影響を調べたところ、強制発現によりわずかながら細胞移動が抑制されることが示唆された。以上の結果より、AIDやerbBは腫瘍の発生および増殖に主に関わっており、局所侵襲には別の機構が関与している可能性が考えられた。また、HGEP-Tb4にAIDを強制発現させたうえでinterferon-gamma(IFN-g)を作用させるとamelogeninの発現量が亢進する傾向にあることが示され、ameloblastomaの発生にはAID並びに炎症性サイトカイン、特にIFN-gが関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
歯肉上皮前駆細胞HGEPにTb4を導入し、歯原性上皮様細胞を作製したことにより、歯原性腫瘍発生の解明に向けた取り組みが前進したものと考える。また、この細胞を用い、AIDやerbB分子が歯原性上皮の増殖能や移動能に与える影響を探れたことは、本研究の目的達成にむけて非常に重要なポイントである。しかしながら、元が正常細胞であるため、増殖速度、増殖限界という点で制限がかかり、当初予定していた、形質転換(腫瘍化)した細胞を定量化して調べる事、ならびにDNA損傷の有無を調べる事が出来なかった。 一方、AIDとIFN-gの共働によりamelogeninの発現量が亢進することはameloblastomaの発症機序解明に向けた取り組みとしては十分な足掛かりになるものと期待され、これを対象にしたシグナル伝達経路の解明に向けて、今後の研究を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、細胞を購入してHGEP-Tb4細胞を再度構築した後、今年度実行に移せなかった形質転換細胞の定量化、DNA損傷調査を行っていく。次いで、EGF family分子、NRG family分子のペプチドを単独あるいは組み合わせて、かつsiRNAとペプチド共存下での影響を同様に調べていく。 alpha5 beta1 integrinがRhoを介した細胞移動に関与していること(White et al, J Cell Bio 2007; Caswell et al, Dev Cell 2007)、口腔癌細胞の移動に膜貫通型糖タンパク質podoplaninが関与していること(Miyazaki et al, J Cancer Sci Ther 2010)、並びに口腔癌細胞ではEGF刺激によりこの糖タンパク質の発現量が上昇することを申請者らはこれまでに明らかにしている(Miyazaki et al, J Oral Sci 2012)。そこで、erbBに対するsiRNAやリガンドのペプチド添加、あるいはerbB強制発現によるalpha5 beta1 integrinやpodoplaninの発現・活性化をwestern blottingでみるとともに、シグナル伝達分子の活性化を、複数のタンパク質やリン酸化タンパク質のレベルを一度に検出できるProteome Profiler抗体アレイキット等で解析していく。 最後に、本研究により得られた結果と、これまでに癌浸潤で報告されていたerbBおよびAIDに関する知見を比較・検討し、歯原性腫瘍の発生・局所侵襲性獲得メカニズムへのerbBシグナル伝達系並びにAIDの関与をまとめていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画的に物品の購入を行ってきたが、キャンペーンの利用や業者の手数料等によりわずかながら端数が生じ、実験に必要なノートや筆記具の購入も取り急ぎ必要ではなかったため、次年度使用額とした。 EGF family分子、NRG family分子のペプチド(R&D Systems社)を購入してHGEP-Tb4細胞の培養を行うとともに、CytoSelect 96-well Cell Transformation Assay Kit(Cell Biolaabs Inc社)により形質転換した細胞を定量化して腫瘍化状態を解析し、かつDNA Damage Quantification Kit(BioVision社)によりDNAの損傷の有無を調べる。加えて、erbBやAIDのameloblastoma発生時および局所侵襲時のシグナル伝達経路を調べるために、複数のタンパク質やリン酸化タンパク質のレベルを一度に検出できるProteomeProfiler抗体アレイキット(R&D systems社)等で解析していく。
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Research Products
(1 results)