2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24791972
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
井村 幸介 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (10415086)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 骨代謝 / 骨免疫学 / 末梢神経 / 表現型可塑性 |
Research Abstract |
初年度は、頭頚部の骨領域(頭蓋骨や椎骨等)の神経末梢枝の全体的な分布状態を把握し、なお且つ神経線維束から神経終末まで骨組織における神経支配を、特に連続切片を用いて単一神経線維での再構築法を行うための予備実験を行った。現在、初年度の目標とする予備データを得ており、実験手技が確立されつつある。 神経末梢枝の分布状態を把握するために、神経細胞のマーカーであるneuron specific gene product 9.5(PGP9.5)に対する抗体を用いて免疫染色を行い、また次年度以降の計画であるトレーサー実験に関係する、DiIという蛍光物質をもちいた末梢神経の追跡法を計画した。このうち、予備実験として行ったteleostを材料とした実験では、咽頭顎骨内または歯内のPGP9.5陽性の末梢神経の分布が明らかとなり、実験手技の確立に留まらず予想していた以上の知見を得ることができた。このため、得られた研究成果の一部を第118回日本解剖学会総会・全国学術集会(2013年3月29日、香川県高松市)において発表した。発表では、神経線維束が骨内に進入し、神経終末様構造が分布するまでの経路を連続切片での観察によって明らかにしたことを報告し、咽頭顎骨内または歯内に分布する末梢神経が硬組織の代謝に関わる可能性について議論した。さらに咽頭顎骨および歯が、同種個体間で食性によって形態を可塑的に変化させることが報告されており(表現型可塑性)、神経系が骨代謝等にどのように寄与するのかを調べるための、有力なモデルの一つとなる可能性があることも提唱した。 また骨髄内の神経終末の分布を単一神経線維レベルで調べる目的で、マウスを試料としてCGRP、CD31に対する抗体を用いて、神経終末と血管内皮細胞を免疫二重染色法により連続切片上で組織を壊すことなく可視化するべく、フィルム法を導入した方法により現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に設定した計画目標のなかで、最初に達成すべき予備実験も順調に進行している。このことにより、次年度以降の実験計画を無理なく実行することができると予想された。なお、予備実験で得られたデータの一部を学会発表することができたうえに、予想以上のデータも得ることができており、申請時に提出した計画書の一部に記載した、本データの一部を誌上発表するということの目標も達成てきる可能性がある。これらのことから、総じて計画はおおむね順調に進展しているという、達成度の区分を選択することが妥当ではないかという結論に達した。
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Strategy for Future Research Activity |
学会発表を行った研究成果の一部については、誌上発表ができるように次年度も実験を継続する。なお、次年度の計画については、トレーサー実験に先立ち、神経節内のグルタミン酸トランスポーターの各サブタイプごとの発現によって、ニューロンの分布を同定することと、それに対してカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)がどのように分布するのかを免疫二重染色法により調べる。共陽性のものが存在するのか、CGRP単独陽性の細胞群が存在するのか、骨内での末梢神経の分布(グルタミン酸トランスポーターおよびCGRP)も併せて検討する。ある程度の概要がつかめたところで、トレーサー実験を行い、免疫二重染色法と組み合わせてデータを出す。トレーサー実験を試行している間に免疫二重染色法のデータを発表し、計画した年度内に一つはまとまった成果を出し、誌上発表することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度より設備備品が揃い、それを使っての実験系が立ち上がりつつあるので、次年度は主として実験試薬および実験動物などの物品消耗品費に対して、全体の約8割の研究費を充当する予定である。また研究成果を発表する場として、日本解剖学会全国学術集会等への参加と研究成果の誌上発表を予定しており、そのための旅費や投稿料および印刷費に全体の約2割ほどを充当する計画である。 なお次年度使用額65,255円については、平成24年度内に一部予定していた実験に使用する試薬および物品に充てる予定であったが、実験そのものが次年度に延期となったためにこれは次年度に繰り越して、当初予定の実験用試薬および物品に充当する。
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