2012 Fiscal Year Research-status Report
病原真菌カンジダのHsp70タンパク質Sse1pによる抗真菌薬耐性の制御機構
Project/Area Number |
24791976
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
永尾 潤一 福岡歯科大学, 歯学部, 助教 (30509047)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 病原真菌 / Candida albicans / 分子シャペロン / 薬剤耐性 |
Research Abstract |
Candida albicansはヒトの口腔・膣・皮膚・腸管に常在する病原真菌であり、高齢者などの易感染宿主では日和見感染を起こす。臨床で最も使用頻度が高い抗真菌薬フルコナゾールに対する耐性菌の出現が問題になっている。我々は新規Hsp(heat shock protein)70タンパク質Msi3p(別名Sse1p)がフルコナゾール抵抗性に関与することを見出した。本研究ではMsi3pがどのようにフルコナゾール抵抗性を制御するのか分子レベルで解明することを目的とした。 MSI3遺伝子は生育に必須であるため、遺伝子破壊株は構築できない。そこで解析にはMSI3遺伝子をテトラサイクリン応答型プロモーター下に制御した発現制御株(tetMSI3)を用いた。tetMSI3株はドキシサイクリン(DOX:テトラサイクリンアナログ)の添加によりMSI3の発現量を抑制することができる。DOX存在下でフルコナゾールを作用させた結果、tetMSI3株はフルコナゾールに超感受性を示し、また静菌的作用のフルコナゾールの作用が殺菌的になることが明らかになった。フルコナゾールはC. albicansのエルゴステロール合成系をターゲットとするが、菌体内では同時にフルコナゾールによるストレスに対してカルシニューリン経路を活性化し抵抗すると考えられている。カルシニューリン経路とMSI3との関係を、カルシニューリン下流遺伝子(UTR2、PLC3)の発現量を指標に解析した。野生株ではフルコナゾールによりMSI3およびUTR2、PLC3の発現量は増加した。一方MSI3の発現を抑制されたtetMSI3株ではUTR2、PLC3の発現も抑制された。この現象はtetMSI3株のフルコナゾールへの超感受性の一因と考えられ、MSI3はフルコナゾールによるカルシニューリン経路の活性化に関与することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はこれまでに得られた成果を論文化することに時間を取られた。着実に成果は上がっているが、申請時の計画よりはやや遅れていると言える。また実験補助員を確保出来なかったことも原因の一つと考えている。上記を改善することで、今年度は計画以上の成果を上げるように努力したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、C. albicansのフルコナゾール抵抗性機構はカルシニューリン経路だけでなく他にも存在することが示唆される。Msi3pはフルコナゾール抵抗性において、どのような抵抗性機構に関与するのか、どのタンパク質に作用するのか、など不明な点は多い。今後は、Msi3pの標的をDNAレベルおよびタンパク質レベルで網羅的に解析する予定である。① DNAマイクロアレイによりフルコナゾール暴露時にMSI3で制御される遺伝子を探索する。② フルコナゾール暴露時にMsi3pに相互作用するタンパク質を免疫沈降法により網羅的に同定する。また、近年Hsp90がフルコナゾール抵抗性に関与することが報告されている。抵抗性機構におけるMsi3pとHsp90の関係性に関しても解析する予定である。Hsp90は新規抗真菌薬の標的とされているが、ヒトホモログタンパク質との相同性が高く、副作用の危険性がある。一方、本研究の題材であるMsi3pはヒトホモログとの相同性は低い。Msi3pを通した基礎研究によりMsi3pを標的とした抗真菌薬開発に繋げたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の推進方策に記述したようにMsi3pが関与するフルコナゾール耐性機構を遺伝子およびタンパク質レベルで網羅的に解析する。今年度の持ち越し金と次年度の研究費を合わせて、比較的高価であるDNAマイクロアレイや質量分析によるタンパクの同定のための分析委託費に計上する。また、実験を推進するために実験補助員を1名採用するための人件費に計上する予定である。微生物培養培地、RNA抽出試薬、タンパク質の電気泳動用試薬などの消耗品は適宜購入する。
|