2013 Fiscal Year Research-status Report
病原真菌カンジダのHsp70タンパク質Sse1pによる抗真菌薬耐性の制御機構
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24791976
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
永尾 潤一 福岡歯科大学, 歯学部, 助教 (30509047)
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Keywords | 病原真菌 / Candida albicans / 薬剤耐性 / 分子シャペロン |
Research Abstract |
申請者はこれまでのin vitroでの解析から、病原真菌Candida albicansのHsp70(heat shock protein 70)タンパク質であるMsi3p(別名Sse1p)が生育必須遺伝子であり、また臨床で最も使用頻度が高いアゾール系抗真菌薬であるフルコナゾールに対する抵抗性に関与することを見出した。またその分子メカニズムの一端として、Msi3pがフルコナゾール抵抗性に関与するカルシニューリン経路の活性化を抑制することを明らかにした(FEMS Yeast Research, 2012)。本年度は、1. Msi3pの他の抗真菌薬に対する抵抗性への関与の解明、2. Msi3pの抗真菌薬抵抗性をin vivoでも解析するために、C. albicansのカイコ幼虫感染モデルによる評価系の構築を行った。 1. 細胞膜合成阻害を示すフルコナゾールとイトラコナゾールを含むアゾール系の他に、細胞膜傷害を示すポリエン系であるアムホテリシンB、細胞壁合成阻害を示すキャンディン系であるミカファンギンを使用した。薬剤感受性試験を行った結果、MSI3遺伝子発現を抑制した株は、フルコナゾールと同様にイトラコナゾールに対して超感受性を示した。一方、ミカファンギンやアムホテリシンBに対する抵抗性には影響は見られなかった。つまり、Msi3pはアゾール系抗真菌薬特異的に抵抗性に関与することが示された。2. C. albicans感染モデルの簡便かつ迅速な評価系として、カイコ幼虫を用いた感染モデルが構築されている。申請者もカイコ感染モデルを構築し、C. albicansの病原性を評価した(Med. Mycol. J.: 2013)。構築した感染モデルを用い、まずはMSI3遺伝子発現が感染へ及ぼす影響を調べた。MSI3発現の抑制条件下においてもカイコの致死率に影響は見られないという結果が得られており、更なる解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は昨年度までに構築した菌株と研究成果を基に、in vitroでのMsi3pの機能解析を進めることができた。Msi3pは抗真菌薬に中でも細胞膜合成阻害を示すアゾール系抗真菌薬に特異的に抵抗性を示すことが明らかとなったため、今後のMsi3pが標的とする分子の同定など、分子レベルでの解析に有力な情報となった。またin vivoでの機能評価系の構築としてカイコ感染モデルをスタートさせることができた。現在までに顕著な成果は得られていないが、今後、構築した系を用いることで、新規な成果が得られると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、Msi3pはC. albicansのアゾール系抗真菌薬に対する抵抗性に関与し、カルシニューリン経路の抑制が抵抗性の一端を担っていることが明らかとなっている。しかし、Msi3pがどのタンパク質に作用するのか、どのようにして抵抗性に関与するのか、など不明な点は多い。今後は、Msi3pの標的をDNAレベルおよびタンパク質レベルで網羅的に解析する予定である。また、近年、臨床において、C. albicansに続き、C. glabrataによる真菌症が増加傾向にある。C. glabrataの特徴として、フルコナゾールをはじめとするアゾール系抗真菌薬に対する抵抗性が高いことが問題視されている。今後はC. albicansだけでなく、C. glabrataにも対象を広げ、フルコナゾールを含むアゾール系抗真菌薬抵抗性におけるMsi3pの役割を解析する予定である。本研究の題材であるMsi3pは病原性真菌間ホモログでは相同性は高いが、ヒトホモログとの相同性は低い。Msi3pを通した基礎研究によりMsi3pを標的とした特異的な抗真菌薬開発が可能になると考えている。また、in vitroだけでなく、in vivoでの評価も同時に行う。今年度に構築したカイコ感染モデルを用いて、Msi3pの機能評価を進める。In vitroおよびin vivoの両面で研究を進めることで、Msi3pのアゾール系抗真菌薬抵抗性における分子機構とそれを基にした新規抗真菌薬開発に展開させていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残額では翌年度に本当に必要な試薬を購入するには不足であったため、無理して使用せずに、翌年度に請求した助成金と合わせて使用することが適切と判断したため。 今年度の残額と翌年度の申請額を合わせて、必要な抗体や遺伝子工学試薬などを購入しようと考えている。
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