2012 Fiscal Year Research-status Report
神経―骨芽細胞共培養系における細胞間シグナル伝達機構の解明
Project/Area Number |
24791988
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
兒玉 大介 愛知学院大学, 歯学部, 助教 (40549979)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 骨代謝 / 交感神経 / 感覚神経 / 細胞間情報伝達 |
Research Abstract |
本研究は神経―骨芽細胞間のシグナル伝達機構の解明を目的としており、平成24年度の研究計画においては交感神経細胞―骨芽細胞、感覚神経細胞―骨芽細胞の両共培養系の確立および細胞選択的な刺激条件の確立を目指した。 1.「共培養系の確立」 新生仔マウスより交感神経細胞として上頸神経節を、感覚神経細胞として脊髄後根神経節を単離、初代培養し、そこにマウス由来骨芽細胞様細胞であるMC3T3-E1細胞を加えた。細胞濃度、培養日数を調節することで互いの細胞の定着および生育を阻害しない条件を定め、共培養系を確立した。 2.「細胞選択的な刺激方法の確立」 細胞選択的に刺激する方法として大きく分けて2つの方略が考えられる。1つはどちらか一方の細胞種しか反応しない刺激を、培養系全体に与える方法。もう1つは微小ピペットや電極を用いて、標的となる単一細胞にのみ刺激を与える方法である。またこれらの刺激は繰り返し行い、再現性を確認できるものが望ましい。(1)培養系全体への刺激を想定し、交感神経細胞、感覚神経細胞、MC3T3-E1細胞、それぞれの単一培養系を用いて各種薬剤への反応性をCaイメージング法にて検討した。交感神経伝達物質であるノルアドレナリンに対してはMC3T3-E1細胞が強い反応を示したが、交感神経および感覚神経は反応を示さなかった。また発痛物質であるブラジキニンに対してはMC3T3-E1細胞、感覚神経細胞が反応を示したが、交感神経は反応しなかった。これらの薬剤は細胞選択的な刺激方法として用いることが可能であることがわかった。(2)単一細胞への刺激方法として、微小ガラスピペットから空気圧により局所的に水流を作り標的細胞にずり応力を与える方法、また微小電極により電気刺激を与える方法を用いて刺激条件を検討した。両刺激において標的とした細胞のみが反応するような条件を確立することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は神経―骨芽細胞間のシグナル伝達機構の解明を目的としており、平成24年度の研究計画においては交感神経細胞―骨芽細胞、感覚神経細胞―骨芽細胞の両共培養系の確立および細胞選択的な刺激条件の確立を目指した。研究実績の概要において述べたとおり、この2つの目標については概ね達成できたと考えられる。細胞選択的な刺激条件において特に微小ガラスピペットを用いたプレッシャーシステムはピペット内に充填する液を変えることにより、ずり応力の他、様々な刺激に応用できる可能性があるため、引き続き検討を行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までに標本となる神経―骨芽細胞共培養系の確立およびいくつかの刺激条件の確立が完了した。今後はこれらの条件を用いて両細胞間におけるシグナル伝達機構の解明を目的として研究を進める予定である。 1.25年度の研究計画 細胞間シグナルの伝達様式としては、細胞膜の接合部位に形成されるgap junctionを介した伝達、細胞外にシグナル伝達部位を持つ膜タンパク同士の接触による伝達、伝達物質の放出とその受容体への結合を介した伝達(シナプス伝達・傍分泌を含む)、以上の3通りの方法が考えられる。まずはじめに、神経―骨芽細胞共培養系において、一方の細胞に刺激を与え、近傍の細胞へのシグナル伝達時に起こるであろう、第一次の反応(細胞内Ca濃度の変化、膜電流の変化等)を細胞内Caイメージング法およびパッチクランプ法を用いて観測する。両細胞間シグナル伝達を検出することが出来た段階で、これを担う分子および伝達様式などを各種阻害薬やsiRNAを用いたmRNAのノックダウンによって同定する。次にその分子によるシグナル伝達がどのような生理的役割を持つかを、骨代謝関連遺伝子、神経栄養因子、細胞増殖関連因子などの発現量の変化を調べることで明らかにしていく予定である。 2.26年度以降の研究計画 骨芽細胞や感覚神経細胞は機械刺激、電気刺激以外にも酸性刺激、酸化ストレス刺激、低浸透圧刺激、温度刺激等の様々な環境刺激を受容すると考えられている。骨芽細胞、神経細胞のこれらの環境刺激に対する反応や、両細胞間に起こるシグナル伝達についても網羅的に解析することで骨代謝調節における神経―骨芽細胞間の相互情報伝達が持つ生理機能を明らかにしたいと考えている。また神経栄養因子やサイトカイン前処理などにより、病態時に神経―骨芽細胞間シグナル伝達が受ける影響についても検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
機器として、電気刺激の安定化および調節性の向上を狙いとして、アイソレーターの導入を行う(一式50万円未満)。その他、大部分を共培養系に使用する細胞培養皿、神経栄養因子等細胞培養用試薬、Ca蛍光指示薬、ガラスキャピラリ―等の物品費として使用する予定である。
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