2013 Fiscal Year Research-status Report
神経―骨芽細胞共培養系における細胞間シグナル伝達機構の解明
Project/Area Number |
24791988
|
Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
兒玉 大介 愛知学院大学, 歯学部, 助教 (40549979)
|
Keywords | 骨代謝 / 交感神経 / 感覚神経 / 細胞間情報伝達 |
Research Abstract |
平成24年度までの研究により、交感神経細胞-骨芽細胞および感覚神経細胞-骨芽細胞の両共培養系が確立された。また各細胞を選択的に刺激する方法として微小ガラスピペットを用いた電気刺激法、局所水流によるずり応力刺激法や各細胞の薬剤反応性の違いを利用した、ブラジキニンの潅流適用による骨芽細胞選択的な刺激法を確立した。平成25年度においてはこれらを利用して、細胞間の情報伝達について検討を行った。 交感神経細胞-骨芽細胞および感覚神経細胞-骨芽細胞の両共培養系において局所電気刺激による神経選択的な刺激により神経細胞での細胞内Ca2+濃度上昇に続き、隣接する骨芽細胞でも細胞内Ca2+濃度上昇が確認された。骨芽細胞での細胞内Ca2+濃度上昇は交感神経細胞-骨芽細胞共培養系においてはα1-アドレナリン受容体遮断薬により阻害された。一方で感覚神経細胞-骨芽細胞共培養系においてはAMPA型グルタミン酸受容体遮断薬によって阻害された。これらの結果からin vitro共培養系において神経細胞と骨芽細胞が直接的な情報伝達経路を形成すること、その伝達物質として交感神経ではノルアドレナリン、感覚神経ではグルタミン酸が重要な役割を果たすことが示唆された。 一方、ブラジキニンの潅流適用による骨芽細胞選択的な刺激によって骨芽細胞だけではなく交感神経および感覚神経細胞でも細胞内Ca2+濃度上昇が観察された。開口分泌阻害薬で処理した標本においては骨芽細胞の反応は影響を受けず、神経細胞における細胞内Ca2+濃度上昇は見られなくなった。以上のことから骨芽細胞から何らかの伝達物質が放出され、神経細胞への情報伝達を担っている可能性が示唆された。 以上の結果より交感神経細胞-骨芽細胞および感覚神経細胞-骨芽細胞の両細胞間に直接的な情報伝達経路が形成され得ることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度の研究計画では①神経細胞-骨芽細胞間の情報伝達の確認、②情報伝達を担う分子の特定を目的とした。現在までの進捗状況は、交感神経-骨芽細胞および感覚神経-骨芽細胞の両共培養系において、神経細胞に電気刺激を与えた際に起こる神経から骨芽細胞への情報伝達、ブラジキニンの潅流適用による骨芽細胞選択的な刺激を与えた際に起こる骨芽細胞から神経への情報伝達が観察されており①神経細胞-骨芽細胞間の情報伝達の確認については達成されている。また②情報伝達を担う分子の特定については、交感神経から骨芽細胞への情報伝達はノルアドレナリンが、感覚神経から骨芽細胞への情報伝達はグルタミン酸が担っていることが示唆されている。骨芽細胞から神経への情報伝達について分子は特定できていないものの何らかの分子が開口分泌されていることが示唆されており、おおむね目標は達成できたと思われる。 また、24年度、25年度に得られた結果をまとめて、学会発表を合計5件行っており、海外学術雑誌へ投稿中の論文が1件、26年度中にはさらにもう1件の論文投稿を計画している。
|
Strategy for Future Research Activity |
(今後の推進方策) 25年度までの研究によって神経細胞-骨芽細胞共培養系において細胞間の相互情報伝達が確認され、交感神経からはノルアドレナリンの放出を介して、感覚神経からはグルタミン酸の放出を介して情報伝達が行われることが明らかとなった。26年度においては、まずブラジキニン刺激によって見られる骨芽細胞から神経細胞への情報伝達を担う分子を各種阻害薬を用いた薬理学的手法によって特定する。これらの結果を基に学術雑誌への論文投稿を計画している。また当初の計画に従い、神経細胞-骨芽細胞共培養系に対し機械刺激、酸性刺激、酸化ストレス、温度刺激など様々な環境刺激を与えた際の反応についても検討する予定である。 (次年度の研究費の使用計画) 機器備品の購入は予定していない。研究費の大部分を共培養に必要となる培養皿、細胞反応を検出するための蛍光色素、その他各種試薬を購入するための物品費として使用する予定である。
|