2013 Fiscal Year Research-status Report
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24792004
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
喜名 振一郎 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40422422)
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Keywords | 舌癌 |
Research Abstract |
現在癌治療で使用されている放射線やCDDP 等の抗癌剤の多くは活性酸素を利用して癌細胞にアポトーシスを誘導する。また外科手術自体もその後に生じる炎症反応に由来する酸化ストレスが発生する。活性酸素は、アポトーシスを誘導するのみならず後発転移に関与する多くの遺伝子の発現も促す。したがって、活性酸素依存的に後発転移が誘導される分子メカニズムを解明し、その抑制を図ることは喫緊の課題である。舌癌患者には、手術前に抗癌剤治療を受けた患者と手術を最初に行われた集団が存在している。当科を受診した舌癌の患者集団を術前化学療法を受けた群と手術を最初に施行した群とに振り分けて、retrospective に解析した。患者は、術前化学療法を受けた患者58人と手術を最初に施行した群55人に振り分けられた。患者は、腫瘍はcurative に切除した。また術前化学療法は、ブレオマイシンとUFT あるいはS-1 を併用して行った。primary outcome は舌癌由来の癌死とした。術前化学療法は、舌癌の遠隔転移を有意に抑制した(P= 0.0185)。舌癌死は術前化学療法群で3%、切除のみの群で10%となりハザード比は、0.25であった。術前化学療法は、低中分化、および男性舌癌患者の5年累積生存率を有意に改善した(P = 0.0158, P = 0.0173)。術前化学療法は、男性舌癌および、低中分化型舌癌患者に有意な改善をもたらしたものの、女性舌癌、高分化型舌癌においてはなんら改善は観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始、一年目において、研究成果がある程度まとまり、Eur J Pharmacol. 2013 Jan 15;699(1-3):227-32において筆頭筆者で論文がすでに受理されている。現在は、得られた成果を臨床例で合致しているかいなかの段階に伸展しており、研究はおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
術前化学療法において、低中分化型腫瘍においては予後の有意な改善が認められたものの、高分化型腫瘍においては、予後の改善は認められていない。我々は現在、高分化型腫瘍特異的に発現が高くなっている受容体型チロシンキナーゼを見出しており、この受容体の解析を進めることで、高分化型腫瘍に対する術前治療抵抗性の原因を探る予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
臨床サンプルからの遺伝子発現を検討するために、予算を見積もっていた。しかしながら、既存の臨床情報から、患者の予後に大きな影響を与える因子(分化度)を見出し、遺伝子発現等の検討を行わずにある程度の結果が得られている。 これまでに、得られた臨床上の予後因子(分化度、年齢、性別等)を説明しうる分子の解析を分子生物学的研究を通して深めていく
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