2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞内シスプラチン輸送機構の解明と薬剤耐性との相関についての検討
Project/Area Number |
24792007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
松本 忍 九州歯科大学, 歯学部, 特別研修員 (20514996)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | シスプラチン / トランスポーター / 薬剤耐性 |
Research Abstract |
我々はシスプラチン(CDDP)の細胞内および細胞外への輸送機構を解明し、薬剤耐性癌細胞の耐性機構を明らかにすることを目標として、研究を行ってきた。CDDPの輸送機構の一つに銅トランスポーターの関与が示唆されている。我々も銅トランスポーターであるCTR1およびATP7Aに着目して、CDDP耐性との関連を検討してきた。銅トランスポーターの役割を明らかにするために、耐性機序の異なる細胞株A2780(CDDP感受性株)と2780CP(DNA除去修復能亢進によるCDDP耐性株)、およびKB(CDDP感受性株)とKBR/1.2(CDDPの細胞内蓄積量減少によりCDDP耐性を示す)を使用した。これまでに、ATP7AはA2780および2780CP間では発現に差が認められないが、KBに比べてKBR/1.2ではATP7Aの発現が低下していること、CTR1はA2780に比べて2780CPでは低発現しているが、KB、KBR/1.2では差が認められないことを確認した。また、CDDP投与によって、KBR/1.2では、CTR1の発現に変化は認められないが、ATP7Aが高発現することが確認された。今後は銅トランスポーターの発現とCDDPの細胞内蓄積との関連性を詳細に検討する。 また、電子顕微鏡を用いて細胞内のPt分布の探索を行なっている。Ptの局在を特定することは、トランスポーターのCDDP輸送システムやその他の輸送機構の詳細を解明する為の足がかりになると考える。細胞内に取込まれたPtを検出するため、160μMCDDPを数時間投与し、試料を作成した。現在、観察に最適な電顕機器(走査型もしくは透過型)および試料の処理方法を模索しているが、細胞内Ptを検出することは出来ていない。試料の脱水操作によって細胞損傷が起こり、Ptが流出した可能性を否定できない。さらなる検討を行い、電子顕微鏡上でのPt検出を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CDDPはDNA合成阻害により抗腫瘍作用を示す。よって、CDDPの細胞内取り込み・排出を詳細に調べるにはDNAの除去修復と複製後修復とを区別する必要があり、薬剤投与前に細胞増殖を抑制すべきと考える。研究計画で記載し、これまでの研究でも使用していたarginine deficient MEMは入手困難となったため、本実験ではこれに代わってG-MEM with L-glutamine and Phenol Redを用いて検討を行うこととした。これまでの研究成果と比較したところ、ほぼ同様の結果が得られることが確認できたため、引き続き当初計画に沿った検討を行っている。 また、細胞内へのCDDPの流出入およびDNAへの結合を確認するために、計画ではフレームレス原子吸光分光高度計を用いて細胞内Pt、およびDNA結合Ptを検索するとしていたが、これに先立ち、電子顕微鏡を用いて形態学的にPtの局在を調べた。これまでに良好な結果は得られていないが、試料の作成方法にいくつかの問題点が見出されたため、改善に向けて繰り返し実験を行っているところである。以上のように実験計画にいくつかの変更は生じているが、おおむね順調な進展があるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、H24年度においては前述したような細かな変更点があったものの、ほぼ計画に沿って進捗したものと考える。当初計画にはなかった電顕による形態学的側面からのアプローチについては同様の報告をみないため、試料作製、処理方法にもかなりの工夫を要するものと思われる。他の元素を標的にした報告等を渉猟し、最適な状態で電顕像を得られるよう模索する。また、H25年度以降の実験計画についての大きな変更予定は現在の所なく、適宜、実験に精通した協力者の指導を仰ぐ。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に計画していたフレームレス原子吸光分光高度計を用いた観察には、大量の細胞を培養し、薬剤処理して回収する必要があり、これに応じた試薬等の消耗品購入が予定されていた。これを次年度以降の検討課題とし、本年度には少量の培養細胞、薬剤で行える電子顕微鏡でのCDDP細胞内局在の検討等を行った。このため本年度支出額は、申請額に比べ低くなっている。次年度では、この原子吸光分光高度計での検討を当初計画に加えて遂行することとし、当初予定以上の試薬等購入を要することとなった。
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