2012 Fiscal Year Research-status Report
下顎前歯インプラント治療時の偶発症防止への指針作成~切歯枝は本当に無視できるか?
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24792013
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
河合 泰輔 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (30350143)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 歯科放射線診断学 / インプラント |
Research Abstract |
1)解剖献体下顎骨のCBCT撮影と画像分析 試料は解剖献体の下顎骨32体(62側)を選定し、切歯枝の検討に用いた。撮影は本学解剖学処置室内のエックス線室に設置してある歯科用コーンビームCT(CBCT)を用いて、下顎骨の下縁平面を床に平行になるように設置し、FOV:79φ×71mm(voxel size:0.155mm)のモードで撮影を行った。装置付帯のソフトウェアで切歯枝の有無、位置、走行などを検討を行い、CBCT画像で切歯枝の管腔構造が確認できなくなる点(終末点)の位置と走行について計測した。結果としては、観察した62側のうち58側のCBCT画像上で切歯枝が確認できた。確認できた58側の切歯枝のうち、55側は切歯部まで到達していることがCBCT画像上で確認できた。切歯枝が画像上で確認できなくなる終末点で一番多かった部位は側切歯相当部であった。下顎下縁を基準にした場合、ほぼ下顎下縁に平行に走行していることが明らかになった。 2)献体解剖によるCBCT画像の検証 CBCT画像で、特徴的な結果(切歯枝が確認できなかったもの、非常に明瞭に確認できたものなど)を示した下顎骨について、CBCT画像と比較するために献体解剖に取り掛かっている。 3)MRIでの切歯枝の検討(当初計画には無く、研究遂行中に追加した内容) 解剖献体のCBCT画像による検討に加え、CTやCBCTに比べ神経・血管描出に優れたMRIで切歯枝の走行を検討するため、MRIによる切歯枝の検討を行う計画を立案し、MRIの撮像条件に付いて検討をした。なお、MRIは生体で血流情報を得られるため、25年度に、実際に生体でCT(CBCT)画像と比較しながら切歯枝の描出能について検討を開始する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、CBCT撮影と同時進行でパノラマエックス線撮影を行い、両者の比較を行う予定であった。しかしながらパノラマエックス線撮影を行い、画像を検討している中で、前歯部の描出に個体差が大きく(試料が頸椎のない下顎骨だったこと、位置付けの違いなど)、定量評価は困難であると判断し、今回の検討から除外することにした。 CBCT画像の収集、評価についてはスムーズに研究計画が遂行できていると判断したため、さらにCBCT画像による検討に加え、CTやCBCTに比べ神経・血管描出に優れたMRIによる切歯枝の走行を検討する計画を追加した。生体の下顎骨でMRIによる切歯枝の描出を検討を追加で行い、今回の研究課題の成果をより充実させる計画を立案し、準備段階としてMRIの撮像条件について検討をした。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度に引き続き、下顎骨の献体解剖によるCBCT画像の結果との比較、検討を行う。またMRIによる検討についてはインプランと予定患者のCT(CBCT)画像に加え、MRI画像を用いて(学内倫理申請は承認済)MRI画像による切歯枝の描出を検討する。最終的には、今回の献体下顎骨のCBCT画像の分析、献体解剖による立証、MRIによる描出能の検討、これらの結果から臨床へのフィードバックをすることを念頭にした、画像診断指針の作成に取りかかる。 ・CBCT画像で切歯枝はどの程度観察可能であるのか?そして切歯枝はどのように走行(および分岐、吻合)し、どこで終わるのか? ・切歯枝の内容物は何があり、どの位置においても同じもの(脈管・神経)であるのか?埋入位置により、切歯管を損傷した際の考えられる後の障害は何か? ・MRIはCT(CBCT)に代わり、偶発症防止を念頭に入れた画像診断方法となり得るか? これらについて明らかにする。そして、画像により術前計画をする際の実際に、偶発症のリスクを低減および防止するために、今回の検討結果をエビデンスとして、インプラント埋入頻度の多いオトガイ孔間領域に限定した切歯枝の取り扱いに関する術前評価の指針を作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度の交付決定額に対して、残額が生じたのは、献体解剖で骨の切削に使用する為に購入予定であった高性能のエンジン(マイクロモーター)およびその付属品を未購入であることが要因である。今後必要に応じて、早期に購入予定である。 25年度はMRIの描出に関する追加研究の研究打ち合わせ、および成果発表のための旅費が多くを占めると考えられる。物品費としては統計処理ソフト、汎用の画像処理ソフトなどの購入を予定している。 また、消耗品としては献体解剖に使用する、解剖学関連の消耗品。および成果発表に使用する翻訳料、英文校正量、HP作成費用等に使用する予定である。
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