2012 Fiscal Year Research-status Report
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24792017
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
八幡 祥生 昭和大学, 歯学部, 助教 (30549944)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ニッケルチタンファイル / 回転曲げ疲労 / 熱処理 |
Research Abstract |
昨年度において、まずニッケルチタンファイルの使用に際する疲労が、その合金に与える影響について、自作回転曲げ疲労試験機を使用して研究を行った。疲労試験機には、ロードセルを接続し、疲労中の荷重を計測できるようデザインした。その結果、疲労に伴い、合金の曲げ荷重が減少する傾向を示し、加工硬化ではなく、疲労による軟化を示した。さらに、ナノインデンテーション法を用いることで疲労に伴う、合金内部の微小硬度の変化を計測した。まず、ニッケルチタンファイルを回転曲げ疲労試験機に供し、疲労を導入した後、ファイルを半分に切断、ナノインデンテーション法による微小硬度の計測を行った。この結果も上述の実験と同様、硬度と弾性率の減少を呈した。以上のことより、根管形成によりニッケルチタンファイルの変形に要する荷重が減少することで、歯根象牙質への応力の減少、つまりは亀裂の発生が減少する可能性が示唆される。 また、熱処理によりニッケルチタン合金特性の改良を行った、新規ニッケルチタンファイルの機械特性および切削特性の解析も行った。その結果、金属特性を改良することで、低い弾性率および良好な超弾性特性が得られるとともに、特に湾曲根管において既存のニッケルチタンファイルに比較し、根管変位の少ない形成が可能であった。以上のことは、ファイルの柔軟性が向上し、直線化を防ぐことから、根管内壁の応力の減少に寄与するとともに、変位による象牙質の過剰切削による菲薄化を防げることを意味していると考える。象牙質の厚みが確保されることにより、同部位からの亀裂の発生を減少させることが可能となることが推察される。 平成25年度の研究結果より、おもに、ニッケルチタンファイル側の要件ではあるが、柔軟性が向上することにより、象牙質亀裂の発生を減少させる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度においては、おもにニッケルチタンファイルの金属特性に主眼を置いて、その柔軟性の変化を計測してきた。そこから曲げ荷重の現症が起きる状況を明らかとなり、象牙質表面の応力の減少に寄与することが可能と考えられた。本研究目的にもあるように、各種ニッケルチタンファイルが根尖部亀裂の発生に与える影響を探索する本研究において、ニッケルチタンファイルの種類の相違による、柔軟性の相違を同定できたことは、根管形成により発生する象牙質の応力を解析するために、必要不可欠な情報といえる。 一方、研究目的にあるように、ヒト抜去歯における実際の亀裂の確認は未だ行えていないのが現状である。象牙質へのひずみや応力の発生は、亀裂の発生の主因と考えられるが、今後は実際の観察を行っていかなければならない。近年、ヒト抜去歯使用に際しても、厳密は倫理規定を遵守することが必要とされ、実際本研究においても、その承認に時間を要したことは否めない。 平成25年度においては、実際にヒト抜去歯を使用し研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度においては、実際にヒト抜去歯を使用し、各種ニッケルチタンファイルによる根管形成後、切断面の観察を行うことを予定している。まず、平成24年度の研究より、合金特性が異なり、柔軟性の高いニッケルチタンファイルの存在を同定したため、実験に使用するニッケルチタンファイルは本年と同様に、根管形成を行う。その後、昨年より市場に供された回転往復運動によるニッケルチタンファイルと回転運動のみによるものの比較をお子合う。また、実体顕微鏡を使用した断面の観察のみならず、マイクロフォーカスX線CTを使用し、亀裂の内部構造の観察を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の設備備品費としては、マイクロフォーカスX線CT撮影後のデータ解析を行うための専用ソフトの購入を計画している。また、それに伴い、高スペックのパーソナルコンピュータが必要な場合には購入を検討する。他には、根管形成に必要なニッケルチタンファイルや、マイクロフォーカスX線CT撮影時に必要な撮像用冶具がそれぞれ消耗品として必要となる。また、研究結果は英文で専門誌に投稿することを予定しているため、投稿、校正費が必要となる。
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