2012 Fiscal Year Research-status Report
CO2レーザーを応用した歯根象牙質のアパタイトコーティング法の開発に関する研究
Project/Area Number |
24792051
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
成橋 昌剛 愛知学院大学, 歯学部, 助教 (00449430)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | レーザー |
Research Abstract |
象牙質に対する侵襲を少なくし、ナノHAPを効果的に熔着させる波長10.6µmのCO2の至適条件の策定を試み、以下の結果が示された。 FT-IRではPO4のピークは、ナノHAP群、HAP群はL群と比べて高く、またE密度が高いほどそのピークは鮮明に分岐していた。一方、アミドのスペクトルは、ナノHAP群では2W、3Wで消失し、HAP群とL群では3Wで消失していた。一方,超音波洗浄を施すと、ナノHAP群、HAP群ともに熔着したアパタイト粒子は1 Wではほぼ脱落しており、3 Wではいずれも熔着していたが歯質に亀裂や炭化が著明に観察された。しかし2 WではHAP粒子は脱落していたがナノHAP粒子は歯質にほとんど影響を与えずに熔融、熔着していた。また30分超音波洗浄を行ったFT-IRではナノHAPの方がHAPと比し良好な結果が得られた。次に、象牙質の吸収特性を持つとされる波長9.3µmのCO2レーザー(以下9.3群)と、歯科治療で一般的に用いられている波長10.6µm (以下10.6群)のCO2レーザーを、各々同じ出力を複数設定して象牙質に照射したときの性状変化の差異について検討し、以下の結果が示された。 9.3群では、いずれの出力(E密度)であっても中央部に熔融像が形成され、その程度はE密度が高いほうが著しく、一方10.6群では、本実験条件中のE密度が最も高いH群のみに、9.3 L群と同じような熔融像が出現する。9.3群では、いずれのE密度でも結晶性が高くなり、その程度はE密度が高いほど著しく、一方10.6群では、H群のみに9.3 L群と同程度の結晶性変化が出現する。9.3群では、E密度が最も低いL群でもCa溶出量は非照射群に比べて有意に少なく(p<0.01)、耐酸性が向上しているが、10.6群では、H群のみが9.3 L群とほぼ同等の耐酸性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炭酸ガスレーザーをナノHAP塗布象牙質に照射すると、ナノHAPの方がHAPと比べ、低エネルギー照射で効率的に象牙質に熔着していることが明らかとなった。また、ナノHAPがHAPに比し、CO2レーザーのエネルギー吸収効率が高いため,歯質に影響を及ぼすことなく熔融、熔着していることが判明した。これらよりナノHAPをヒト抜去小臼歯歯根面に塗布し、2 WでCO2レーザー照射を行なうと、歯面に亀裂や炭化などの熱影響をあまり及ぼすことなく、アパタイトを比較的強固に熔着させうることができる可能性が判明した。 また、波長9.3µmと10.6µmのCO2レーザーを各々同じ出力と条件で象牙質に照射したところ、照射野の性状変化は、波長9.3µmの場合の方が、より低い出力で生じており、一般的に用いられている波長10.6µmのCO2レーザーに比べ波長9.µmの方が象牙質への吸収がより効率的であり、広範囲におよぶ炭化などの熱的な副作用を避けつつ、耐酸性を向上させるなどのさまざまな象牙質の処理に利用できる可能性が判明した。したがってレーザーの波長の相違による歯質の性状変化の差異を比較することにより、吸収性のより高い波長のレーザーを照射することで、効率良く歯質の改質に利用できる可能性が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
前述した両波長で各々の照射条件にて照射したの試料を蒸留水中で30分間超音波洗浄および歯ブラシ摩耗試験を行い,レーザー照射されたナノHAPが試料面に残留する状態を走査電子顕微鏡にて観察を行う。また熔融後の照射野内および試験後の表面粗さも測定し、比較検討を行う。次いで、これらの試料表面をX線回折装置にて結晶粒子径の測定を行う。また、耐酸性を検討するため2.0M乳酸緩衝溶液pH4.0に浸潰させ、37℃恒温槽中に4時間静置させた試料浸潰後の脱灰溶液中のCaの溶出量を、原子吸光分光光度計を用いて検量法より測定を行う。さらに、ナノHAP塗布後のレーザー照射した試料のコンポジットレジンおよびレジン添加型グラスアイオノマーセメントを接着させた接着強さを測定する。さらに、炭酸ガスレーザーと同様の組織表面吸収型のレーザー(Er:YAGレーザー)などレーザーの波長を変化させ、ナノHAPの変化および、それが象牙質に熔着した後のコンポジットレジンおよびレジン添加型グラスアイオノマーセメントの接着性や審美性に関しても検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
炭酸ガスレーザーにおける周囲機器およびナノHAP粉末はもちろんのこと摩耗試験や耐酸性試験の機器および薬品等に関して器具や機器に研究費を使用する。さらに接着試験に関する機器や器具等にも研究費の使用を検討している。
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Research Products
(1 results)