2012 Fiscal Year Research-status Report
アルギン酸‐硫酸Ca三次元架橋構造をベースとするリン酸Ca徐放型骨再建材料の創製
Project/Area Number |
24792054
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
冨士 岳志 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (20549323)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 歯学 / 骨再生 / リン酸カルシウム / アルギン酸 / 硫酸カルシウム |
Research Abstract |
本研究は、高い骨形成能を有するリン酸Caであるβ-TCPと多糖類のアルギン酸Naを、硫酸Ca由来のCa2+を介して架橋化し、新規骨再生材料を開発することを目的とした。本材料の最大の特色は、動物性由来の材料を一切含まず、安全性、生体親和性が極めて高いことである。また、柔軟な賦形性、生体内吸収性を有し、骨欠損の大きさ、形状に左右されない。申請者は、Ca2+過飽和な硫酸Ca溶液に、β-TCP(0.5wt%)を加え、さらに過去のデータからアルギン酸Na粉末(0.25~1.5wt%)を加えて複合体ゲルを作成し、凍結乾燥後にFTIRおよびXRDで解析を行った。その結果、アルギン酸Na粉末濃度1.0wt付近にβ-TCPが最も効率よく取り込まれるピークを示した。しかし、さらに研究を進めた結果、再現性に乏しく、改めて条件設定の見直しが必要となった。アルギン酸Na溶解時にゲル状の核が初期形成されると、β-TCPの取り込みの効率が悪くなる傾向が認められ、核化には1)湿度、2)アルギン酸溶解速度(回転速度)の関与が考えられた。研究を進めた結果、硫酸Ca溶液に適切な①水流速度と②渦径(容器依存)を与え、アルギン酸を一定量少量ずつ加えることで、核化を防ぐことに成功した。実験室内における湿度の変化は結果に影響がなかった。再現性が向上し、結果は我々のの報告と同様に、アルギン酸Na粉末濃度1.0wt%付近にピークを認めた。申請者はこれまで、複合体作成精製過程における遠心分離の回転速度が、1)細胞の接着や増殖、リン酸カルシウム放出の為にScaffoldとして求められる気孔径や架橋形態、2)骨再建材料として求められる機械的強度、賦型性、形態保持性の双方の要件に影響を及ぼすことも報告している。このことを踏まえ、本条件下にて遠心分離の回転速度を変化させ、より優れた骨再生能を有する材料の開発を進めていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、将来的な臨床応用を見据え、マウスによる動物実験を予定している。動物倫理の観点からも、本材料の生体親和性や細胞毒性に関して、まだまだin vitroレベルでの基礎的データを積み上げる必要がある。また、そのような部分も含め、本材料の生成過程において、高い再現性は必須であり、そのための実験に、多くの時間を費やすことになった結果、進捗状況は当初の予定より遅れてしまっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、本材料製作の再現性の部分において多くの時間を費やした。再現性のある材料の開発が確立されたことで、今後は細胞実験などを通じて、細胞毒性、接着性、生体親和性を、RT-PCR法にて骨基質由来タンパク質のmRNA発現を指標とし、骨形成能を評価する。について評価していく予定である。また、併せて、複合体をSBFに浸漬し、上澄みからβ-TCPに特有なピークを観察することで、本材料のβ-TCP徐放能を評価する。材料学的評価として、本条件下にて遠心分離の回転速度を変化させ、気孔率および気孔径をより優れた骨形成能を有する条件に設定する。これらの基礎的データを積み重ね、安全性が確認されたうえで、本年度中にはマウスによる動物実験を開始する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き、基礎的データの収集のため、材料及び試薬を購入する。また、実験手技等をフィードバックし、再現性を図るため、記録媒体の購入を検討する。材料学的評価において、気孔径や気孔率の評価のための外部委託を行い、また細胞実験のための培養実験用細胞および器具を購入する。年度内のマウスによるin vivoの実験を予定し、マウス60匹およびその飼育費に予算を充てる予定である。また、本研究に関連がある学会発表の調査および本研究成果の発表の旅費を予定している。
|