2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24792055
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 恭恵 東北大学, 大学病院, 医員 (50613064)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 味覚障害 / 咀嚼運動 / 摂食・嚥下 / テクスチャー |
Research Abstract |
味覚障害は、高齢者を中心に年間24万人が罹患すると報じられている。これらの患者からは、「食べ物がおいしくない」という訴えに加えて、「食べ物が飲み込み難い」との訴えが聞かれることがある。これらの愁訴は、なんらかの機序で味覚が食品の送り込みや嚥下に影響している可能性を示唆しており、味覚と摂食の機能的関連の観点から注目に値する。 本研究では、ギムネマ酸が持つ甘味抑制効果により、実験的味覚障害の病態を再現し、味覚障害に伴う「おいしさ」感覚の低減が、食品摂取から嚥下までの一連の摂食動作に及ぼす影響を明らかにする。 本年度は、少数(6名)の被験者で、ギムネマ酸により実験的味覚障害を惹起させた状態とコントロールの状態での摂食動作を比較した。摂食動作の比較には、咬筋と舌骨上筋群の筋電図、下顎運動軌跡、および嚥下音の計測結果を用いた。さらに、嚥下直前の食塊の物性を、2-バイトテクスチャー試験により解析し、実験的味覚障害の有無が咀嚼の進行度に与える影響を検索した。 本年度の研究結果から、実験的味覚障害を惹起した状態では、コントロールと比較して、嚥下直前の咀嚼サイクルの開口量が有意に小さく、食塊の硬さと付着性が有意に小さく、凝集性が有意に大きいことが明らかとなった。これらは、実験的味覚障害を惹起させた状態では、本来嚥下に必要とされる以上に咀嚼が進行していることを示唆している。味覚障害の状態では、何らかの機序で食品を積極的に摂取しようとする働きが阻害されているものと推察された。一方で、嚥下に至るまでの咀嚼回数は、被験者により増加する者と減少する者がおり、有意差は認められなかった。味覚障害は摂食動作に何らかの影響を与えるものの、その影響は被験者によりさまざまであることが伺えたが、今後被験者数を増加させることにより、この影響の違いが明らかになるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、6名の被験者を対象として、咀嚼から嚥下に至るまでの一連の摂食動作を、咬筋および舌骨上筋群の筋電図、下顎運動、嚥下音の同時計測により評価するとともに、嚥下直前の食塊のテクスチャー解析を行い、咀嚼の進行度を評価した。 少数の被験者ながら、嚥下直前の咀嚼サイクルの開口量、食塊の硬さ、付着性、凝集性に関しては、実験的味覚障害を惹起した状態とコントロールの間に有意差が認められた。研究は、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に引き続き、被験食品の摂取から嚥下終了までの所要時間、咀嚼回数、中途嚥下を含む嚥下回数、嚥下直前の咀嚼の進行度について、実験的味覚障害の影響を統計学的に検討する。 平成24年度は、味覚障害が筋活動に及ぼす影響について明らかにすることができなかった。特に舌骨状筋群の筋電図の計測にあったっては、電極の貼付位置等を含めて再検討する。 さらに、咀嚼経路形態への影響の検索には、主成分分析を用いた方法(Y Hattori et al. Masticatory motion is controlled in humans by a limited set of muscle synergies. Tohoku J Exp Med. 2010;220(3):217-22.)を用い、実験的味覚障害により咀嚼経路に変化が生じるか否かを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせて、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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