2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24792055
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 恭恵 東北大学, 大学病院, 助教 (50613064)
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Keywords | 味覚障害 / テクスチャー / 咀嚼 / 嚥下 |
Research Abstract |
味覚障害は、高齢者を中心に年間24万人が罹患すると報じられている。味覚障害患者の中には、「食べ物がおいしくない」という訴えに加えて、「食べ物が飲み込みにくい」と訴える者も少なからず存在する。これは味覚障害が何らかの機序で摂食・嚥下の過程に影響を及ぼす可能性を示唆している。 本研究では、ギムネマ酸の甘味抑制効果を利用して実験的味覚障害を惹起し、試験食品であるチョコレートチップクッキーのおいしさを低減させた状態で、摂食・嚥下動作の計測と、嚥下直前の食塊のテクスチャー計測を行い、味覚障害が摂食・嚥下に与える影響について検討した。 下顎運動軌跡の計測からは、実験的味覚障害を惹起した状態では、嚥下直前の咀嚼サイクルの開口量が正常時と比較して有意に小さいことが示された。また、嚥下直前の食塊を2-バイトテクスチャー試験によって解析した結果、硬さと付着性は有意に小さく、凝集性は有意に大きかった。これらの結果は、ともに、実験的味覚障害を惹起した状態では本来嚥下に必要とされる以上に咀嚼が進行していることを示唆するものであった。 平成25年度は、特に筋電図に関する分析を行った。実験的味覚障害を惹起させた場合と、惹起させない場合で、嚥下時の舌骨上筋群の筋活動に有意差がなかったことから、「飲み込みにくさ」には差がなかったと考えられる。しかしながら、本研究での咀嚼回数以上に咀嚼が進行し唾液と混和された場合、食塊の凝集性はピークを越えて低下し、食塊のまとまりがなくなることにより、「飲みこみにくさ」を感じるようになると推察された。 本研究結果により、味覚障害が嚥下誘発の遅延及び咀嚼の過度の進行を介して、患者に「飲み込みにくさ」を引き起こす可能性が示唆された。味覚障害患者の「飲み込みにくさ」に関しては、味覚障害の治療に加えて、適切な時期に嚥下が誘発されるようなアプローチをすることで改善が期待できると推察された。
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