2012 Fiscal Year Research-status Report
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24792072
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
黒瀬 雅之 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40397162)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ドライシンドローム / ドライアイ / ドライマウス / TRPM8 / TRPチャネル / 温度 / メントール / ラット |
Research Abstract |
三叉神経領域における“乾燥”を愁訴とする疾患である口腔乾燥症・角膜乾燥症・乾燥性鼻炎は、十分に粘膜や上皮細胞を水分によって保護できないことからくる乾燥・不快感・炎症と灼熱痛といった痛みが知られている。これに対する治療法も水分の補充という非常に限定された対症療法が主体である。そこで、新たな強力でありなおかつオルタナティブな治療のオプションとして、外分泌腺の“基礎分泌”に着目し、痛みを伴わず、基礎分泌を支配する神経回路を活性化させられる手法の確立を目的とし、本研究計画を立案した。 口腔乾燥症と角膜乾燥症の症状の類似性や両者を併発する患者が多いことから、基礎分泌に関して非常に類似した神経機構によって管理されているという仮説を立て、基礎分泌の調節を司る神経機構を知るための予備実験として、角膜に化学物質を与えることで一過性の反射性分泌だけでなく、基礎分泌に関連する涙の分泌量が増加することを明らかにし、角膜などに分布する一次感覚神経が基礎分泌の調節に関与していることを示唆してきた。 レーシック手術後に角膜乾燥症が頻発することや、角膜の感受性が低下するということから、申請者は外分泌腺の組織学位的な変性だけでなく、角膜上皮の受容器レベルでの変化が角膜乾燥症を引き起こすことに注目し、抑制された神経回路を活性化させられる手法の確立を最終目的に本研究計画を立案した。手法の確立を行うための前段階として、対象となりうる神経回路とそのターゲットチャネルは明確にすることが出来たので、次のステップとして角膜乾燥症はChannelが活動電位を伝達しない脱感作の状態であると仮説を立て、脱感作を誘発するリン酸化を解除することが角膜乾燥症の改善に繋がると考えた。そこで、まず本研究期間内に、① 人為的にChannelの脱感作を起こす実験系の確立並びに、② Channelの脱感作を誘発する機構の解明を目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は予備実験の段階で角膜の乾燥に選択的に応答する一次求心性神経線維の同定に成功しており、そのノウハウは保有している。本研究計画を実施する上でも、一部の機器などの更新が必要であったものの、大部分は既存のセットアップを用いて遂行することが出来た。実験計画①に該当する“人為的にChannelの脱感作を起こす実験系の確立”に関しては、人工的に涙腺を除去することにより、摘出2週後から有意な涙の分泌量の低下並びに自発性の瞬き数の増加が観られ、またフルオルセインを使った角膜の染色においても、広い範囲で角膜に傷が見られた。以上の結果から、人工的に角膜乾燥症を誘発するモデル動物の製作に関しては一定の成果を得た。さらに、電気生理学的手法により、乾燥に強く関連のある角膜関連の一次感覚神経線維の応答特性を検索した結果、非摘出側と比較して摘出側では該当神経線維の冷刺激に対する応答並びに作動薬とされるメントールに対しての応答が増強されるものの、その効果が早期に脱感作されるという興味深い知見を得ることが出来た。 現在、上述の項目に関して論文投稿中であるが、平成24年度の研究実施報告までに出版に至らなかったことから、”順調に進展している”を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は研究計画の最終年度となるため、① 人為的にChannelの脱感作を起こす実験系の確立並びに、② Channelの脱感作を誘発する機構の解明の両研究計画を平行して行うこととする。人為的に脱感作を誘発する実験系の確立というテーマに関しては、現在までに方向性は見えている。そこで、平成24年度に確立したモデルを用いて、脱感作を誘発すると考えられるプロテインキナーゼCやホスホリパーゼC などの酵素類の脱感作機構誘発に及ぼす関与、またはブラジキニンやプロスタグランジンといった炎症性のサイトカインの関与も同様に作動薬や拮抗薬を用いて、その投与前後で比較検討を行うことで、その影響と関与の程度を知ることを目的とする。 また、① 人為的にChannelの脱感作を起こす実験系の確立に対しても、共同研究を行っているアメリカ・ニューイングランド大学における同モデル動物を用いた炎症性サイトカインの経時的変化を記録した実験において、摘出1-2週経過群においてサイトカイン量の著しい増加を、そして摘出3週以降は一転減少するという知見を得ている。in vitroの研究においては、炎症サイトカインがチャネルの応答様式に影響を及ぼすことが報告されていることから、様々な時期における神経活動様式の変化を観察することで、慢性疾患に移行するドライシンドロームの病態を把握する上で重要な知見になると期待される。よって、平成25年度では、摘出1週群と2週群の両群動物を作成し、同様に一次求心性神経線維の活動を記録することで、その影響の程度を知ることを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度への繰り越しとなる研究費が8万円程度生じた。これは、実験に用いている微小電極を購入することを目的として計画していたが、購入元である米国のFHC社に対する注文が本年度の1月以降集中したことから、3月中旬までの電極の受け取りが困難になったためである。よって、次年度においては、早期に微小電極を購入するために当該研究費を割り当てることとする。
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Research Products
(8 results)