2012 Fiscal Year Research-status Report
睡眠時ブラキシズムモデルマウスの確立とモデルマウスを用いた発症寄与因子の解明
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24792112
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
池田 美菜子 昭和大学, 歯学部, 兼任講師 (90551268)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ブラキシズム / マウス / 睡眠行動 / 脳波 / 筋電図 |
Research Abstract |
睡眠時ブラキシズムは睡眠中の歯ぎしりや噛みしめを伴う不随意な下顎運動と定義され、歯科治療の予後を左右する因子である。我々は今までに睡眠時ブラキシズム発症の寄与因子についてセロトニン2A受容体遺伝子とセロトニントランスポーター遺伝子の多型が関与している可能性を示唆したAbe Y, Baba K, et al. J Sleep Res. 2012)。しかしその発生機序は未だ不明な点が多く、さらに多角的なアプローチにより睡眠時ブラキシズム発生機序の解明を行うには、睡眠時ブラキシズムモデルマウスを確立することが必要である。本研究の目的は、睡眠時ブラキシズムモデルマウスを確立し、遺伝子多型と睡眠時ブラキシズム発生の関連性を明らかにすることである。平成24年度は、睡眠時ブラキシズムモデルマウスの確立を目標とし、マウスにおいて、脳波および眼電図の測定から睡眠覚醒状態の判断を、咬筋筋電図の測定から咀嚼筋活動の判断を行い、睡眠時に咬筋活動が見られたものを睡眠時ブラキシズムモデルマウスとする。マウスはC57BL/6を用いて、脳波、眼電図、頸筋および咬筋の筋電図の合計4チャンネルの生体電位を取得することとした。コネクタやビス電極など、マウスの頭部に取り付ける器具等の調整を試行錯誤した結果、ラットと同様、マウスでも4種類の生体電位を取得することに成功した。今後は、ブラキシズムの誘発に関与する因子の同定や、睡眠障害モデルマウスであるオレキシン遺伝子欠損マウスなどを用いて、睡眠と咬筋筋活動の相互関係を検討することを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、睡眠時ブラキシズムモデルマウスの確立を目標とし、C57BL/6マウスを用いて、脳波、眼電図、頸筋および咬筋の筋電図を取得する方法を検討した。まず、ケタミン、キシラジン混合液を腹腔内注射し麻酔した後、脳波および眼電図記録用ビス電極(脳波2本、眼電図1本)を頭蓋骨に埋入し、頚筋と咬筋には筋電図記録のために双極ワイヤー電極を刺入した。脳波・眼電図記録用ビス電極の連結したワイヤーおよび筋電図のワイヤーはマウス頭頂部に誘導し、頭蓋骨に取り付けたコネクタに接続した。コネクタは歯科用レジンを用いて頭部に固定した。手術後1週間は、回復期間とし、記録用ケージ内で自由行動下にて24時間の生体電位を記録し、同時にビデオ撮影を行った。マウスは体が小さく、生体電位取得用のコネクタを頭部に設置させる必要があり、コネクタやビス電極など、マウスの頭部に取り付ける器具等の調整を試行錯誤した結果、上記の4種類の生体電位を取得することに成功した。さらに、取得したデータから、覚醒期、REM睡眠期、Non-REM睡眠期を判定し、マウスの24時間の睡眠-覚醒サイクルを確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)睡眠時ブラキシズムマウスを確立した後、睡眠時ブラキシズムを誘発させる因子を検討するために、ブラキシズムの判定基準を設定し、C57BL/6マウスをコントロール群と睡眠時ブラキシズム群に分け、脳内の遺伝子発現変化をGeneChipを用いて網羅的解析を行う。 (2) (1)の結果をもとに、発現に変化があった遺伝子に対して、定量的遺伝子発現変化、および免疫組織化学的変化を検討し、それら遺伝子の生理学的意義を模索する。 (3)オレキシンは睡眠と覚醒を制御する神経ペプチドで、オレキシン遺伝子欠損マウスは睡眠障害モデルマウスとして知られている。そこで、オレキシン遺伝子欠損マウスを用いて、睡眠行動異常と咬筋筋活動の相互関係を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)動物実験とその解析:本研究は、in vivoの実験を多く計画しており、C57BL/6マウスや遺伝子改変マウスの購入費が必要である。また、マウスの餌や飼育・管理費、遺伝子型を確認するためのジェノタイピング試薬などの経費を必要とする。 (2)組織解析・細胞解析:マウスの脳組織切片作製費用が必要となる。また、免疫染色のための各種試薬、抗体などが必要である。 (3)遺伝子・タンパク発現解析:研究期間中、細胞や組織からRNAの抽出やRT-PCR・リアルタイムPCRによる遺伝子発現変化の解析に関する遺伝子解析試薬を必要とする。 (4)生体電位取得用電気生理用器具:研究期間中、生体電位取得用の記録電極(ビス電極、ステンレスワイヤー線)、コネクタ、記録用機器を必要とする。 (5)その他の器具・試薬:遠沈管やマイクロチューブ、ピペットチップ、ハサミ・持針器、縫合糸などの解剖道具などの消耗品が必要となる。 (6)旅費・論文に関わる費用:平成25年度は研究最終年度にあたるので、本研究成果を国内外で発表し、発表した内容を国際雑誌に投稿して、論文掲載のための費用が必要である。
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