2012 Fiscal Year Research-status Report
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24792119
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
山田 健太朗 神奈川歯科大学, 歯学部, 研究員 (10550816)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 不正咬合 / 不定愁訴 / ストレス |
Research Abstract |
マウスの臼歯部を咬合挙上することにより、不正咬合モデルマウスを作成した。不正咬合は、即効性に生体の防御機構の一つであるオピオイド神経系(特にダイノルフィン神経系が活性化され、情動の中枢である扁桃体においてその分泌が上昇することを生化学的、形態学的に明らかにした。エンケファリンやエンドルフィンなど、他のオピオイド系でも検証してみたが、ダイノルフィン系程の産生の上昇は確認できなかった。 扁桃体と密接な神経連絡のある海馬において、咬合挙上によるダイノルフィンの動態を検証したところ、形態学的、生化学的に大きな変化はみられなかった。しかし、咬合挙上した群にダイノルフィンの拮抗薬を投与して、海馬機能計測をモリスの水迷路を用いて行動生理学的に検討したところ、ダイノルフィンの拮抗薬であるnor-BNIを投与した群は、咬合挙上のみの群と比較して、咬合挙上付与直後の一週間で学習・記憶能力が低下することが明らかになった。これらの結果は、不正咬合が海馬に与える影響を、扁桃体で生産されるダイノルフィンが間接的に軽減させていることを示唆している。 不正咬合により即効性に引き起こされる脳へのストレス刺激を、ダイノルフィン系のオピオイドが軽減させていることが明らかとなった。このことは口腔環境が原因とされる不定愁訴のメカニズムを解明する上で非常に有用である。これらの結果を論文にまとめ、国際誌に投稿し、受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不定愁訴の原因は複雑で多岐にわたっていると考えられており、その中でも不良補綴物の存在や、根管治療、経年的変化など、口腔環境が原因であると思われるものも多くある。現在までに不正咬合による即効性の刺激に対して、オピオイド系の一つであるダイノルフィンがその防御機構として働いて、海馬や情動の中枢である扁桃体のストレス受容を軽減させていることが分かった。このことは、不定愁訴になりうる初期の口腔環境の変化を生体の防御機構としてオピオイドが軽減させてしまっていることを示しており、口腔内状況の変化が原因となる不定愁訴を解明する上での足がかりとなった。その一方、ダイノルフィン以外のオピオイドに関しては検索したが、不正咬合への関与は明らかになってない。さらなる検討と続ける必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
不正咬合が、扁桃体、海馬を通して生体の行動に与える影響を検索し、オピオイドとの関連を調べる。短期的な行動実験ではなく、長期の不正咬合状態が生体に与える影響を検索し、不定愁訴につながるメカニズムを生化学的、免疫組織化学的、行動生理学的に明らかにする。オピオイド類だけでなくセロトニン、ドーパミンなどの関与もあわせて検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
放射状迷路学習試験、探索的短期記憶試験などの行動生理学的実験のセットアップに必要な消耗品およびマウス、ラットなどの生体。 抗体、ELISAキットなどの消耗品。海外学会に参加予定なのでその旅費。論文投稿料
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