2012 Fiscal Year Research-status Report
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24792133
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
野崎 浩佑 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (00507767)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | チタンインプラント / 表面改質 / オッセオインテグレーション / 電気分極 / 表面電荷 |
Research Abstract |
生体と接する生体材料の表面の形態や性状は生体の反応に影響を及ぼすことが明らかとなってきた.そこで,我々は生体反応をマニピュレートすることを目的としたベクトルマテリアルを作製するために,生体親和性を有するセラミックスを,電気分極を用いて表面改質を行い,培養細胞の増殖・接着・分化に及ぼす影響を検討する実験系を確立してきた.本研究では,生体材料として広く使用されているチタン表面にMAO処理により酸化チタン膜を作製し,さらに電気分極による表面改質を試みた.また,分極した酸化チタン膜上で,培養細胞として骨芽細胞を用い,細胞の挙動を検討したところ,以下の知見を得た. 1,酸化チタン膜を電気分極により表面改質を試みた.熱刺激脱分極電流測定により,表面電荷を計測したところ,蓄積電荷量が確認され,分極処理により酸化チタン膜の表面電荷を制御可能であることが分かった.2,分極した酸化チタン膜は,表面形状と化学組成を変化させることなく,ぬれ性が向上し,骨形成に有利に働く可能性が示唆された.3,分極酸化チタン上での骨芽細胞は未分極チタン上のものと比較して,MTTアッセイによる細胞増殖率を検討したところ,増殖率が有意に向上した.4,分極酸化チタンが骨芽細胞分化に与える影響を検討するために,骨芽細胞の分化マーカーであるアルカリフォスファターゼ染色を行ったところ,分化が促進されていることが分かった.5,分極酸化チタン上では未分極チタン上と比較して,骨芽細胞のインテグリンα5遺伝子の上昇が認められた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は,生体材料として広く使用されているチタン表面にMAO処理により酸化チタン膜を作製し,電気分極により表面改質を試みた.また,その骨芽細胞に与える影響を検討したところ,骨形成に有利に働くことが分かった.また,日本白色家兎を用いたin vivoでの分極インプラントが骨形成に与える影響の評価を開始した.分極インプラントと未分極インプラント(対照群)を大腿骨に埋入後,一定期間経過後に大腿骨を含むインプラントを摘出し,引張試験による引張強さの測定を行い,骨結合に与える影響を検討している.また,マイクロCTによる骨形成量の評価や,骨質評価,組織学的評価を行い,その解析を行っている.分極インプラントの引張強さや骨接触率が増加したことから,分極インプラントは骨形成を亢進することが分かった. また,骨粗鬆症患者を想定した疾患動物モデルの作製を行った.女性ホルモンの低下による骨粗鬆症患者は,現在,増加傾向にあり,骨形成を制御できるベクトルマテリアルは,インプラント治療において有益であると考えられる.そのため,骨粗鬆症モデルにおける分極インプラントの骨形成制御のメカニズムの解明のため,10週齢日本白色家兎の雌に卵巣摘出術(OVX)を行い,一定期間経過したのちに,インプラント埋入を行った.埋入後,一定期間経過後に大腿骨を含むインプラントを摘出し,引張試験による引張強さの測定を行い,骨結合に与える影響を検討する.また,マイクロCTによる骨形成量の評価や,骨質評価,組織学的評価を行い,その解析を行っている. 以上より,実施計画以上の成果が得られていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
近年,歯科領域において歯牙欠損に対する治療法として,審美的・機能的側面からインプラントによる治療が盛んに行われるようになってきた.しかしながら治療に要する期間はインプラントと骨が結合するオッセオインテグレーションの獲得に依存しており,通常インプラント埋入後約6か月の期間を必要とする.オッセオインテグレーションの早期獲得による治療期間の短縮は患者にとって肉体的・精神的・社会的に有益であると考えられる. 申請者のグループでは生体親和性を有するセラミックスを電気分極による表面改質により,生体の反応をマニピュレート可能なベクトルマテリアルの創製を世界に先駆けて行い,報告してきた.申請者のグループは生体材料であるハイドロキシアパタイトを電気分極により表面改質を行い,擬似体液浸漬下でのハイドロキシアパタイト沈着の亢進や,骨形成能の促進,骨芽細胞分化の亢進など良好な結果を得ており,電気分極処理がオッセオインテグレーションの早期獲得に貢献できると考えている.近年,外国の研究者も追随を受けており,英国Bath大学のBowen、Turnerのグループや米国Wahington state大学のBoseのグループが分極ハイドロキシアパタイトの生体に与える影響を検討し,その有用性を報告している. しかしながら,近年インプラント材料として非常に多く用いられているチタンに対して、電気分極による表面改質を施し生体に及ぼす検討を行った報告は、現在のところ申請者のグループのみであり,早急に分極チタンインプラントが生体に及ぼす影響とそのメカニズムを解明し、臨床応用への基盤研究を世界に先駆けて行うことが必要であると考える.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
生体内に埋入されたインプラント表面では,埋入直後には近傍で炎症反応が生じ,同時に無機イオンやタンパク,糖類などの血液成分の吸着が始まる.その後,吸着物の介在によって細胞がインプラントに接近し,細胞の接着,増殖,石灰化が順次進行していくと考えられているが,多種多様な細胞が混在する生体組織では,細胞外マトリックスや細胞のパラクライン的作用が骨芽細胞の分化・誘導に与える影響を無視することはできないため,in vitroでの単一細胞による結果を基に,in vivoでの検討を追加することは必須であると考える.本研究では,in vivoにおいて電気分極による表面改質を行ったチタンインプラント周囲の骨形成を制御するメカニズムを解明するために,本年度の結果を基に骨形成に関わるシグナリングカスケードの解析を行う. 電気分極による表面改質を行ったチタンインプラントの骨形成能を検討するために.電気分極による表面改質を行ったチタンインプラントを10週齢日本白色家兎大腿骨内側上顆に埋入し,4,6,12週間後に引張り試験による引張強さを計測し,電気分極による表面改質が骨結合に与える影響を検討する. in vitroで得られた結果を基に,骨形成を制御する遺伝子,タンパクを調べる.チタンインプラント埋入後,4,6,12週間後にチタンインプラントごと骨を摘出し,樹脂切片およびパラフィン切片を作製する.インプラント周囲の石灰化度の違いを観察するためにあらかじめビラヌエバ骨染色を行い,類骨と石灰化骨を識別し,定量評価を行う.また遺伝子,タンパクの発現を検討するためにIn situ hybridizationおよび免疫染色を行い,in vitroで得られた結果を基に発現を評価する.
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Research Products
(7 results)