2012 Fiscal Year Research-status Report
低出力レーザーの作用機序に関する基礎的研究ーフリーラジカル制御による検討ー
Project/Area Number |
24792150
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Ohu University |
Principal Investigator |
茂呂 祐利子 奥羽大学, 歯学部, 助教 (90433549)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 低出力レーザー / 一酸化窒素 / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
本研究の目的は、低出力レーザー照射がフリーラジカル制御機構に与える影響について検討し、レーザー治療におけるエビデンスを得ることである。本研究においては臨床応用を念頭に低出力レーザーの抗炎症作用に及ぼす影響についてフリーラジカル制御機構に焦点を当て検討を行う予定であり、本年度は、対照実験である低出力レーザーで治癒促進を目的として照射する場合を想定した実験を行った。 初年度である平成24年度は、第一に、血管内皮細胞の培養条件の検討、第二にレーザーの照射条件の検討、第三にレーザー照射後の一酸化窒素(NO)の動態について検討を行った。 その結果、血管内皮細胞の基本的な培養条件を確定した。また、レーザーの照射条件は、血管内皮細胞で0.26J/cm2~2.6 J/ cm2において増加傾向を示し、0.26J/ cm2を治癒促進を目的として照射する場合の至適条件とした。レーザー照射後の細胞増殖率について検討した結果、至適条件での照射により、血管内皮細胞は照射48、72時間後に非照射群と比較し、細胞の増殖は促進した。最後に、レーザー照射後の一酸化窒素(NO)の動態について検討を行った。レーザー照射後の一酸化窒素合成酵素(NOS)の発現について免疫組織染色により検討したところ、血管内皮細胞においてはNOS-1,NOS-3が微量であるが発現し、NOS-2は発現していないことが明らかとなった。この結果を踏まえ、レーザー照射後における培地中の一酸化窒素(NO)の定量について現在検討中である。 本年度の研究内容は、細胞増殖が促進することにより治癒が促進するという考えのもと、低出力レーザー照射においてどの照射量で細胞促進効果が表れるのかの確認、細胞増殖が促進された時、フリーラジカル制御機構が働くかどうかについて確認したものであり、研究の土台となるべき基本的条件の確立という点において重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、細胞培養条件の検討、低出力レーザーの照射条件の検討、低出力レーザー照射後ならびにLPS添加後の活性酸素種(ROS)、活性酸素消去酵素の(SOD)検討を行う予定だった。この計画を一部変更し、本年度は細胞培養条件の検討、低出力レーザーの照射条件の検討、平成25年度実施予定であった低出力レーザー照射後の一酸化窒素(NO)の動態について現在検討中である。 現在までに細胞培養条件の検討は終了しており、「治癒促進」を目的としたレーザーの照射条件は確定している。具体的な細胞増殖促進の結果も明らかになった。 低出力レーザー照射後の一酸化窒素(NO)の動態については、培地中に含まれる一酸化窒素濃度を測定した結果、キットで測定できる限界値以下であった。免疫染色の結果から一酸化窒素の合成はなされていると推測される。現在、測定のための条件設定を試行錯誤中である。 計画の一部変更に伴い、実験計画にやや遅れは出ているものの、フリーラジカル定量の条件が確立すればその後の測定は比較的早く進むと推測される。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の変更点として、対照研究(コントロール)と抗炎症作用におよぼす影響(LPS添加)について、それぞれ測定対象となるタンパクの発現を検討する予定だったが、実験により測定対象となるタンパクごとにコントロールとLPS添加それぞれの発現状態を同時に検討する方が効率が良いと考えた。従って、今後は各タンパクごとにコントロールとLPS添加の結果をまとめることとした。 研究を遂行する上での課題として、第一点は、現在「治癒促進」を目的としたレーザーの照射条件は確定しているものの、この照射条件をLPS添加した「炎症時」を想定した条件にあてはめることができるかどうかが今後の検討課題である。これについては培地に添加するLPS濃度と細胞増殖率を指標として照射量を決定する予定である。第二点として、レーザー照射後の培地中に含まれる一酸化窒素の定量についてであるが、細胞増殖時におけるフリーラジカルの動態については調書にも記載した通り、測定対象が気体のため実験の条件設定が難しい。現在、測定のための条件設定を細胞播種数、測定時間等を変えて検討中である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験計画の一部変更により、平成24年度分の研究費と合わせて平成25年度の研究を行う。具体的には平成25年度は、平成24年度に引き続き、一酸化窒素の動態の検討ならびに活性酸素種の検出を行う。 研究費の内訳としては、細胞培養における消耗品、タンパク測定用のキット、免疫染色に使用する抗体、試薬等である。
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