2014 Fiscal Year Research-status Report
低出力レーザーの作用機序に関する基礎的研究ーフリーラジカル制御による検討ー
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24792150
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Research Institution | Ohu University |
Principal Investigator |
茂呂 祐利子 奥羽大学, 歯学部, 助教 (90433549)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 血管内皮細胞 / 低出力レーザー / 活性酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は低出力レーザー照射がフリーラジカル制御に与える影響について検討し、レーザー治療におけるエビデンスを得ることである。 本年度は「活性酸素」の動態をテーマに検索を行った。活性酸素合成酵素(Nox-1、Nox-2、Nox-4)、活性酸素消去酵素(Mn-SOD)、一酸化窒素(NO)と活性酸素(O2-)の反応により生成されるperoxynitriteについて形態的に検索を行った。 免疫染色の結果、低出力レーザー照射後のNox-1の発現は非照射群と比較し、レーザー照射群ではコントロール群、LPS投与群ともに発現が増強していた。Nox-2では、非照射群と比較し、レーザー照射群ではコントロール群、LPS投与群ともに発現が増強していた。一方、Nox-4についてはレーザー照射群ではコントロール群、LPS投与群ともに変化は認められなかった。これらのことから低出力レーザー照射後の血管内皮細胞において活性酸素合成に関与するのはNox-1、Nox-2であることが明らかとなった。またこれらの活性酸素合成に対して消去酵素の動態についても検索した結果、Mn-SODはレーザー照射群では若干発現量は増加傾向にあるもののコントロール群、LPS投与群ともに有意差は認められなかった。同様に反応物質であるperoxynitriteについてもレーザー照射群では若干発現量は減少傾向にあるもののコントロール群、LPS投与群ともに有意差は認められなかった。この点については生化学的に検索後、再検討を行う予定である。 本研究により低出力レーザー照射がフリーラジカル制御に与える影響のうち活性酸素に関わる酵素の動態と反応により生成される炎症物質peroxynitriteの動態についての解明がなされた。昨年度の結果と合わせて低出力レーザー照射がフリーラジカル制御に与える影響についての形態学的な検索について明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度、一昨年度までにおいて、実験の条件設定ならびに低出力レーザー照射後の血管内皮細胞における一酸化窒素合成酵素 (NOS-1、NOS-2、NOS-3)の動態については明らかになっている。 本年度は、低出力レーザー照射後の血管内皮細胞における活性酸素合成酵素の動態(Nox-1、Nox-2、Nox-4)と活性酸素消去酵素(Mn-SOD)、peroxynitriteの動態について免疫染色法にて検索を行った。本年度は新たな試みとして、コンピューターソフトウェア(Adobe photoshop Elements 10)により、細胞の発色状態を「輝度」を指標にして定量的に検索した。従来、免疫染色結果の判定は研究者の主観で判定することが多かったが、この方法によりより確実な判定ができると考えた。また、微量の発現についても判定でき、今後の生化学的検索の参考にできると考える。 本年度と昨年度までのデータとあわせ形態的な側面からは本研究課題について目標としていた一定の成果が得られた。このことからおおむね順調に進展していると考えられる。しかし、当初予想していた結果と実験結果が異なる部分もあり、より確実な結果について考察する上で生化学的なデータが必要である。 次年度は生化学的手法で研究を行う予定である。また、本年度はレーザー照射機の故障があり約3カ月実験できない状態が続いた。そのため予定の学会で発表することができなかった。本年度は学会発表を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、生化学的な検索と実験結果の検討ならびに結果のとりまとめを行う。 第一に活性酸素消去酵素(Mn-SOD)、peroxynitriteについてELISA法にて生化学的に検索を行う予定である。このうちMn-SODについては形態学的な検索結果から発現量が微量であることが確認されているため定量できない可能性がある。その場合にはウエスタンブロッティング法やRT-PCR法での検索も検討する予定である。 第二に、今まで得られたデータについての検討を行い、再実験が必要であれば行う。形態学的実験結果、ならびに生化学的実験結果について整合性がとれているかを検討し、とれていない場合は再実験ならびに論文を参考にしながら最終的な結果の考察を行う。 第三に、最終年度であるので結果のとりまとめを行い、学会発表する予定である。
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Causes of Carryover |
初年度計画の予定では、形態的実験と生化学的実験を同時並行で進める予定だった。しかし、次年度以降、生化学実験にかかる費用が高額なことから先に形態学的実験を先行させ、その結果を参考にした方が効率が良いと考え、使用計画を変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は新しく生化学的実験を立ち上げる。そのため、新たに実験器具や試薬を購入する必要がある。また、ELISAキットが高額(1個¥270,000)なため、予備実験、失敗を考慮し予算を多めに確保した。さらに微量のタンパク発現しかしないものに関してはELISA法以外の実験をする必要があるかもしれないので、そのための資金が必要である。また、再実験の必要があれば行う予定である。 主な研究費の内訳は、細胞培養における消耗品、タンパク測定用キット、サンプル調整のための機器、試薬等の消耗品等である。さらに最終年度であるので結果報告のために必要な印刷費・通信費についても算出する。
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