2012 Fiscal Year Research-status Report
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24792172
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
桑島 精一 秋田大学, 医学部, 助教 (40569448)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | がん / CpG / MDSC |
Research Abstract |
【内容】C57BL/6 由来マウス悪性黒色腫株B16F10を培養にて増殖させた。マウスにB16F10を移植し悪性腫瘍モデルマウスを作成した。1e4の細胞をマウスに投与すると4週までに全個体が死亡した。次に、抗腫瘍効果が期待されるCpG ODN1555をマウスに投与すると、血中にIL-6、IFN-γ、p40、TNF-αが生産されることをELISAで確認した。同時に2~3倍程度の脾腫もみられた。骨髄細胞においては、CpGによるBrdUの取り込みが観察され、とくにS期への移行が多くみられた。B16F10投与の1週後にCpGを投与すると、4~6週程度の生存延長がみられた。一部のマウスでは腫瘍が消失して死亡しなかった。そこで、B16F10の成長や転移を促進させるとされているMDSC(Myeloid-Derived Suppressor Cell)をフローサイトメトリーにて観察した。コントロール群ではMDSCが血中に4%程度であったが、B16F10群では8-10%、B16F10+CpG群では1%以下であった。以上から、MDSCの数とB16F10による生存予後には相関関係がみられた。 【意義】転移能が非常に高く予後不良とされている悪性黒色腫に対して、CpG投与で抗腫瘍効果が確かめられたことは、今後の悪性腫瘍治療発展において重要である。 【重要性】抗腫瘍効果がみられたことだけでなく、サイトカインの生産がみられることでサイトカインストームが懸念されるが、これまでの実験ではマウスの寿命を短くしていることはなかった。悪性腫瘍の治療において、明らかな副作用がみられないことは非常に重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
C57BL/6 由来マウス悪性黒色腫株B16F10を培養にて増殖させた。マウスにB16F10を移植し悪性腫瘍モデルマウスを作成した。1e4の細胞をマウスに投与すると4週までに全個体が死亡した。次に、抗腫瘍効果が期待されるCpG ODN1555をマウスに投与すると、血中にIL-6、IFN-γ、p40、TNF-αが生産されることをELISAで確認した。同時に2~3倍程度の脾腫もみられた。骨髄細胞においては、CpGによるBrdUの取り込みが観察され、とくにS期への移行が多くみられた。B16F10投与の1週後にCpGを投与すると、4~6週程度の生存延長がみられた。半数のマウスでは腫瘍が消失し、死亡しなかった。そこで、B16F10の成長や転移を促進させるとされているMDSC(Myeloid-Derived Suppressor Cell)をフローサイトメトリーにて観察した。コントロール群ではMDSCが血中に4%程度であったが、B16F10群では8-10%、B16F10+CpG群では1%以下であった。以上から、MDSCの数とB16F10による生存予後には相関関係がみられた。CpG投与で脾腫がみられることと抗腫瘍効果がみられることから、以下の仮説を考えた。「腫瘍細胞に直接作用し細胞の分裂を促進する。すなわち、分裂能の大きい腫瘍は生体の細胞より寿命が短くなる。」これについて、CFSEでラベリングしたB16F10培養系にCpGを添加し、分裂の様子をフローサイトメトリーで観察したが、非添加群と差がなく、CpGはB16に作用していないことが分かった。 以上から、悪性黒色腫の寛解には至っていないが、抗腫瘍効果が再現性を持って確かめられたことは大きな進展であったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
CpGによる抗腫瘍効果をもたらす因子が、生体内の細胞なのかあるいは液性の因子なのかを培養系で確かめる。すなわち、蛍光色素(CFSE)でラベリングしたB16F10とCpGで感作された生体内の末梢血細胞や脾細胞あるいは骨髄細胞を共培養する。CFSEの漸減がみられた場合には、生体側の細胞の活性化指標分子あるいは生産されるサイトカインなどの液性因子を確認する。この実験系で腫瘍の成長抑制(分裂の減少)がみられた場合には、アポトーシスが誘導されているかを確認し、抗腫瘍効果の増強を検討する。その存在は確認していないため予想ではあるが、分裂能の低い腫瘍幹細胞に対するアポトーシス誘導を見出したい。あるいは、腫瘍の成長抑制がみられない場合には、異種間移植(BALB/cおよびBALB/c nu/nuへB16F10を移植する)実験を行う。この実験系では野生型ではB16F10が拒絶され、nu/nuでは生着することをすでに確認しているので、腫瘍拒絶という観点から抗腫瘍効果の新しい知見が得られるものと考えている。これらの同種マウスの違いはT細胞の存在の有無であるために、T細胞が腫瘍の生着あるいは拒絶に何らかの働きをしていることが示唆される。腫瘍殺傷能を有するCTLの研究が古くから進められているが、この実験系では短日中に拒絶がみられることから、腫瘍抗原に特異的な反応であることは考えにくい。すでに、先行論文では移植実験において制御性T細胞が大きな役割を果たしていることが知られていることから、異種腫瘍に対する制御性T細胞の機能解析を中心に進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「薬用冷蔵ショーケースMPR-162DCN ¥230,000」「試薬類 ¥250,000」「抗体¥300,000」「実験動物 ¥200,000」「プラスチック製品 ¥40,000」「成果発表旅費 ¥200,000」「計算機使用料 ¥20,000」「印刷費 ¥20,000」「複写費 ¥20,000」「通信費 ¥20,000」 合計¥1,300,000 平成24年度は概ね計画通りに実験を遂行することができたが、残額\2153で購入可能なものがなく平成25年度に繰り越すことになった。
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